トランプ関税に欧州が反発 世界経済への打撃と「貿易戦争」リスク
トランプ米大統領が打ち出した欧州向けの大幅な関税をめぐり、EUと欧州各国が強く反発しました。世界経済への打撃と「貿易戦争」へのエスカレーションをどう防ぐのかが、大きな焦点になっています。
2025年春、米欧の関税対立が一気に激化
2025年春、トランプ米大統領は欧州連合(EU)からの輸入品に一律20%の関税を課す方針を打ち出しました。これはすでに導入されていた欧州からの鉄鋼・アルミ、さらに自動車や自動車部品への追加関税に続くもので、各国に「貿易戦争」への懸念が広がりました。
EUの執行機関トップであるウルズラ・フォンデアライエン欧州委員長は、この措置を「世界経済への大きな打撃」と表現し、ブリュッセルが対抗措置の準備を進めていることを明らかにしました。
EU委員長「混乱の中に秩序が見えない」
フォンデアライエン氏は当時、訪問先のウズベキスタンで記者団に対し、「この選択を深く遺憾に思う」と述べました。
すべての米国の貿易相手国が次々と標的になる中で、「生じつつある複雑さと混乱の中に、いかなる秩序も見えない」と、今回の一連の措置に強い懸念を示しました。
一方で、まだ交渉による解決の余地は残されているとし、「懸念を交渉によって解決することは、まだ遅くない」と冷静な対応を呼びかけました。EUは、圧力には屈しない姿勢と、対話の窓口を開き続ける姿勢を同時にアピールした形です。
主要国の反応:対話志向と「報復辞さず」が交錯
ドイツ:交渉を模索しつつ「明確で断固とした対応」
ドイツは、まずは「交渉による解決」を優先する立場を示しました。ハーベック経済相は、協議によって出口を探りつつも、話し合いが決裂した場合には「均衡が取れた、明確で決然とした対応」を取る用意があると発言しました。
フランス:オンラインサービスへの対抗も視野
フランスのマクロン大統領は、関税の影響を受ける産業界の代表者らと面会し、影響を精査しました。政府報道官のソフィー・プリマス氏は、EUは「貿易戦争の準備はできている」と述べ、必要であれば米国のオンラインサービス分野を標的とした対抗措置も検討する考えを示しました。
英国:EU離脱後も波及、「冷静さと実利」を強調
すでにEUを離脱している英国も例外ではありません。トランプ大統領は英国に対して10%の関税を課す方針を示し、貿易環境の不透明感が増しました。
スターマー英首相は企業関係者を前に、「米国大統領は自国の利益のために行動した。私は英国の利益のために行動する」と強調。トランプ政権との貿易交渉を続け、「英国にとって最善の条件を勝ち取る」と表明しました。そのうえで、「貿易戦争に勝者はいない」として、実利を重視した冷静な対応を約束しました。
イタリア・スイス・ポーランド:それぞれの危機感
イタリアのメローニ首相は、新たな関税を「誤った決定」と批判し、米欧の対立が長引けば「西側が弱まり、他のグローバルな主体を利する」と、より広い地政学的リスクに言及しました。タヤーニ外相は、EUのセフコビチ通商担当と協議し、「対話に基づく現実的な対応」を探る考えを示しました。
31%の関税措置の対象となったスイスのケラー=ズッター大統領も、政府として早急に対応策を検討すると表明し、国際法と自由貿易の原則は「今もなお基盤である」と強調しました。
ポーランドのトゥスク首相は、米国との友情は「真の意味での互恵的な関係」であるべきだと述べ、「本当に互いに釣り合う関税」が必要になりうると示唆しました。
産業界「関税は誰も勝者にしない」
欧州の産業界からも懸念の声が相次ぎました。欧州各国の業界団体は、今回のトランプ政権の決定について、「各国にとっても、消費者にとっても逆効果だ」と指摘しました。
ドイツ自動車工業会は、追加関税は「敗者しか生まない」と強調し、EUに対しては「必要な強さをもって対応しつつ、交渉の意思を示し続けるべきだ」と訴えました。
ドイツ化学工業連盟も、EUに対し「冷静さを保つ」よう求め、「エスカレーションの螺旋が強まれば、被害はさらに拡大するだけだ」と警鐘を鳴らしました。
欧州域内では、米国向け輸出が細る一方で、他地域からの安価な製品が流入し、市場を圧迫するのではないかという懸念も強まっています。
米国財務長官は「報復するな」と牽制
一方、米国側も強気の姿勢を崩していません。ベッセント財務長官はテレビ番組で他国に向けて、「報復はするな。ただ受け止めてほしい。もし報復すれば、さらなるエスカレーションが起こるだろう」と発言しました。
これは、各国が対抗措置に踏み切れば、米国が追加の制裁で応じる用意があることを示すものであり、関税の応酬が長期化するリスクを改めて浮き彫りにしました。
私たちが押さえておきたい3つのポイント
今回の米欧の関税対立は、日本を含む世界経済にも波及しうるテーマです。ニュースを追ううえで押さえておきたいポイントは次の3つです。
- 1.関税は自国経済にも跳ね返る
関税は相手国への圧力であると同時に、自国の企業や消費者のコスト増にもつながります。長引けばインフレや投資減速のリスクも高まります。 - 2.「報復の連鎖」が市場の不安を増幅
一方的な関税に対して相手国が報復し、その報復に再報復が重なる「スパイラル」は、貿易だけでなく為替や株式市場にも不安を広げやすい構図です。 - 3.EUは「強さ」と「対話」を同時に演出
EUや欧州各国は、必要なら対抗措置を取るという姿勢を鮮明にしつつ、交渉の窓を閉ざさないことで、米国との関係悪化を最小限に抑えようとしています。
エスカレーションを止められるか
今年1月のトランプ政権復帰以降、米国は関税を通じて自国産業の保護を前面に掲げてきました。一方で、欧州側は「誰も得をしない貿易戦争」を避けつつ、自らの経済とルールをどう守るかという難しいかじ取りを迫られています。
今後も、米欧がどこまで対話のチャンネルを維持できるか、EUの対抗措置がどのように設計されるのか、そして他の国や地域がこの対立をどう受け止めるのかが、世界経済の行方を左右する重要なポイントになりそうです。
日々のニュースの一つひとつを追いながら、その背後にある「力とルールのせめぎ合い」を意識して見ていくことが、これからの国際ニュースを読み解くうえで欠かせません。
Reference(s):
Europe hits out at Trump tariffs, warns it will hurt the world economy
cgtn.com








