米国の新たな関税に国際機関が懸念表明 広がる保護主義リスク
米国が2025年4月に導入した新たな輸入関税「相互関税」をめぐり、国連や欧州中央銀行(ECB)、中国などの国際機関・政府が相次いで懸念を表明しました。保護主義の流れが強まる中、世界経済にどのような影響が及ぶのかが、いまも重要な論点となっています。
米国が導入した「相互関税」と自動車への高関税
2025年4月上旬、ドナルド・トランプ米大統領は大統領令に署名し、いわゆる「相互関税」を導入しました。すべての輸入品に対して原則10%の「最低基準関税」を課し、一部の貿易相手国についてはそれより高い税率を適用するという内容です。
同時期に、自動車輸入に対する25%の関税も発動されました。これにより、米国市場を重要な輸出先とする各国の自動車メーカーや、そのサプライチェーン(部品供給網)にも影響が広がるとの見方が出ています。
国連「経済保護主義の高まり」に懸念
米国の新たな関税措置について、国際連合(国連)の報道官は「経済保護主義の高まり」と「世界経済への影響」への懸念を表明しました。自由貿易を前提としてきた国際経済の枠組みが揺らぎかねないという問題意識です。
国連としては、各国が対立を深めるのではなく、対話と協調を通じて貿易問題を解決することが望ましいという立場をにじませています。
欧州中央銀行ラガルド総裁「世界全体にマイナスの影響」
欧州中央銀行(ECB)のクリスティーヌ・ラガルド総裁も、米国の関税政策に対して強い懸念を示しました。ラガルド総裁は、米国の一連の関税措置が世界経済の不確実性を高め、最終的には世界全体にマイナスの影響を及ぼすと指摘しています。
関税は、輸入品の価格を押し上げることで貿易量を減らし、企業の投資判断を難しくします。特に欧州は輸出依存度が高く、貿易の停滞は企業収益や雇用、さらには金融市場にも波及しかねません。ECBの懸念は、単に欧州だけでなく、世界経済の安定そのものに向けられたものと言えます。
中国は断固反対「勝者なき関税戦争」
中国も、米国の「相互関税」に対して明確に反対の立場を示しています。中国は、自国の権利と利益を守るため、断固として対抗措置をとる方針を表明しました。
中国外交部(外務省)の郭家坤報道官は定例記者会見で、中国はこれまでも一貫して「貿易戦争、関税戦争に勝者はおらず、保護主義に活路はない」と繰り返し強調してきたと述べました。相互に関税を引き上げ合う展開は、企業や消費者に負担を押し付けるだけで、最終的には世界経済全体を傷つけるという見方です。
世界経済のどこにリスクがあるのか
今回の米国の関税強化について、国際機関や各国政府が懸念するポイントはどこにあるのでしょうか。主な論点を整理します。
- 貿易コストの上昇と供給網の混乱
関税は、輸入品の価格に上乗せされる「追加コスト」です。企業は価格に転嫁するか、自ら利益を削るかの選択を迫られます。結果として、貿易量の減少や、調達先の変更によるサプライチェーンの混乱が起きやすくなります。 - 物価と金利への圧力
関税による価格上昇は、インフレ(物価上昇)圧力につながる可能性があります。各国の中央銀行にとっては、物価安定と景気下支えのバランスを取ることが難しくなり、金融政策の運営が一段と複雑になります。 - 多国間ルールへの影響
世界貿易機関(WTO)を中心とする多国間の貿易ルールは、各国が一方的な措置を控え、ルールに基づいて紛争を解決することを前提にしています。一国が大規模な関税引き上げを続ければ、「ルールより力が優先されるのではないか」という不信感が広がるおそれがあります。
日本とアジア経済への含意
今回の米国の関税措置は、日本やアジアの経済にも間接的な影響を与えうるテーマです。多くの企業が、米国向けの製品や部品をアジアで生産し、グローバルな供給網を通じて米国市場に輸出しています。
例えば、自動車や電子機器などの分野では、ある国で部品を生産し、別の国で組み立て、最終製品を米国に輸出するケースが一般的です。米国が関税を引き上げれば、こうしたビジネスモデル全体の採算が変わり、生産拠点の見直しや価格戦略の再考を迫られる可能性があります。
また、日本を含むアジア各国は、輸出に依存する比率が比較的高い経済構造を持っています。世界的に保護主義が強まり、貿易量が縮小すれば、企業収益や雇用、ひいては個人消費にも影響し得ます。
これから何に注目すべきか
2025年4月の関税導入から時間が経過した今も、世界経済の不透明感は完全には払拭されていません。今後、読者として押さえておきたいポイントは次のような点です。
- 米国内の議論の行方
関税政策は、米国内でも賛否が分かれるテーマです。産業界や消費者への影響をめぐる議論が、今後の政策修正につながる可能性があります。 - 主要国・地域の対応
欧州や中国など、主要な貿易相手国がどのような対抗措置や対話の枠組みを打ち出すかは、国際経済の安定に直結します。 - 企業のサプライチェーン戦略
企業が生産拠点や調達先をどのように再構築していくのかは、中長期的な産業構造の変化につながります。
保護主義と自由貿易のせめぎ合いは、一見すると遠い世界の話に思えるかもしれません。しかし、関税によるコスト上昇や不確実性は、最終的には私たちが購入する製品の価格や、働く企業の業績にも影響してきます。国際ニュースを追いながら、自分の日常や将来のキャリアとも結び付けて考えてみることが、これからの時代を生きるうえで重要になっていきそうです。
Reference(s):
cgtn.com








