米財務長官ベッセント氏、相互関税巡り辞任検討か
ベッセント財務長官が辞任検討と報道
2025年12月上旬の報道によると、米国のスコット・ベッセント財務長官が、トランプ大統領による相互関税方針の発表を受けて、政権からの離脱を検討していると伝えられました。大規模な関税が世界経済や金融市場に与える影響が懸念されるなか、財務政策の中枢にいる人物が動く可能性は、小さくないニュースです。
本記事では、米誌ザ・ニュー・リパブリックや米テレビ局MSNBCの報道内容をもとに、この人事観測が意味するものと、相互関税をめぐるアメリカ国内の緊張を整理します。
何が報じられているのか
ザ・ニュー・リパブリックは直近の土曜日、スコット・ベッセント財務長官がトランプ政権からの離脱を視野に入れていると伝えました。背景には、大統領が打ち出した相互関税方針があり、その経済的な影響をめぐる懸念が高まっています。
MSNBCの朝の番組「モーニング・ジョー」では、コメンテーターのステファニー・ルール氏が、ヘッジファンド出身のベッセント氏が政権内で次第に孤立し、自らの信頼性を守るために退任の道を探っている可能性があると指摘しました。報道によれば、同氏は将来的に連邦準備制度理事会(FRB)でのポストを目指しているとの見方も出ています。
トランプ政権の相互関税とは
今回の対立の中心にあるのが、トランプ大統領が発表した相互関税構想です。報道によると、この方針には、外国から米国に入るほぼすべての輸入品に対して、少なくとも一律10%の関税を課すという案が含まれています。
ベッセント氏は、このような関税強化が世界的な貿易摩擦を一段と激化させると警告してきました。特に、各国が報復措置として独自に関税を引き上げれば、企業活動や金融市場に連鎖的な悪影響が出ると懸念しているとされています。
その一方で、同氏は他国に対し、米国の関税強化に対抗して報復関税を発動しないよう呼びかけました。しかし、国内世論の圧力にさらされる各国の指導者にとって、米国の強硬な通商政策に無反応でいることは現実的ではないとの指摘も出ています。
市場の反応:ダウとナスダックが2020年以来の急落
相互関税方針の発表を受けて、米株式市場は敏感に反応しました。ダウ工業株30種平均とナスダック総合指数は、いずれも2020年以来となる大幅な下落を記録し、市場参加者の不安を映し出しました。
投資家が特に警戒しているのは、次のような点です。
- 企業の輸入コスト上昇による利益圧迫
- 世界的な報復関税の応酬による貿易量の減少
- 不確実性の高まりによる投資マインドの冷え込み
ルール氏は、金融市場の動きを理解しているベッセント氏だからこそ、足元の株価急落が、トランプ政権の通商政策によるダメージを端的に示していると受け止めている可能性が高いと見ています。
ベッセント氏のジレンマと信頼性
興味深いのは、ベッセント氏自身がこれまで、関税の悪影響をやや軽く見ていたとされる点です。報道によると、同氏はかつて、関税は単なる価格調整にすぎず、本格的なインフレ(物価上昇圧力)にはつながらないと主張していました。
しかし、今回の相互関税方針とそれに続く市場の急落を受けて、関税の負担が実際には企業や消費者に重くのしかかっている現実を、ベッセント氏自身もより強く意識せざるをえなくなっているとみられます。政権内で政策の方向性に異議を唱えながら留まり続ければ、自らの市場関係者としての信頼性が損なわれるというジレンマがある、というのが今回の報道のトーンです。
関税は誰に負担を強いるのか
専門家や市場関係者の多くは、関税の負担を最終的に背負うのは輸出国ではなく、輸入する側の企業や消費者だと指摘しています。今回も、ルール氏を含む複数の論者が、関税強化は特に経済的に弱い立場にあるアメリカの人々を直撃すると警鐘を鳴らしています。
安価な輸入品は、日用品から衣料品、家電に至るまで、生活コストを抑えるために欠かせない存在になっています。関税によってこうした商品の価格が上昇すれば、
- 低所得層の家計への負担増
- 輸入品に依存する中小企業のコスト増
- 小売業者による値上げや販売縮小
といった形で、経済的に脆弱な人々にしわ寄せが集中しやすくなります。
トランプ政権の通商政策は、対外的には強硬姿勢を示すものとして支持を集める一方で、そのコストの多くが国内の弱い立場の人々に回ってしまうのではないか、という点が改めて焦点になっています。
今後の焦点:辞任なら何が変わるのか
もしベッセント氏が実際に辞任に踏み切れば、それはトランプ政権内で通商政策と経済運営をめぐる溝が深まっているシグナルと受け止められる可能性があります。財務長官という要職が空席になれば、市場は後任人事の方向性や、財政・通商政策の一貫性を厳しく見極めようとするでしょう。
さらに、報道にあるように、同氏が将来的にFRBポストを視野に入れているとすれば、金融政策の独立性や市場との対話にどう影響するのかという点も関心を集めそうです。金融・通商・財政が複雑に絡み合うなかで、各ポジションに誰が就くかは、市場心理に直接響きます。
一方で、ベッセント氏が呼びかける報復関税の自制がどこまで現実的かは不透明です。トランプ政権の相互関税方針が続く限り、各国の指導者は国内の政治的圧力を受けながら対応を迫られます。関税の応酬がエスカレートするのか、それともどこかで妥協点が見いだされるのかは、今後の国際経済を占ううえで重要なポイントです。
米国の財務長官人事と相互関税をめぐる動きは、日本を含む世界の投資家や企業にとっても無視できないテーマです。短期的な株価の動きだけでなく、誰がどのような論理で関税と経済政策を設計しようとしているのかという視点から、今後のニュースを追っていく必要がありそうです。
Reference(s):
U.S. treasury secretary mulls exit following tariff backlash: media
cgtn.com








