米国がトランプ新10%関税を発動 世界貿易と市場に走る衝撃
米国がトランプ政権の新たな一律10%関税の徴収を開始し、今週には一部の主要貿易相手国に対して最大50%の追加関税が発動される見通しです。戦後続いてきた国際貿易の枠組みを大きく揺さぶる動きで、世界の市場と各国政府に緊張が走っています。
米国が一方的な10%「ベースライン関税」を開始
米国の税関当局は、トランプ大統領が決定した全世界向けの一方的な10%関税の徴収を、米東部時間の土曜日午前0時1分から開始しました。対象は多くの国からの輸入品で、米国の港湾、空港、保税倉庫で新たな関税が適用されています。
この10%の「ベースライン関税」は、第二次世界大戦後に築かれてきた「各国が合意した関税率に基づいて相互に貿易する」という仕組みを、米国が事実上拒否したものと位置づけられています。
通商弁護士で、トランプ政権一期目で大統領の通商顧問も務めたケリー・アン・ショー氏は、この措置について「私たちの人生で最大の通商措置だ」と語り、「地球上のあらゆる国との貿易のあり方が、大きく転換する」と指摘しました。
米税関・国境警備局の通達によると、この10%関税には猶予措置があります。土曜日午前0時1分より前に積み込まれるか米国向けに輸送中の貨物であれば、一定の期限までに米国に到着すれば新関税の適用を免れることができます。
最大50%まで 今週発動予定の「相互」関税
トランプ大統領は、10%のベースライン関税に加え、貿易相手国ごとに設定する「相互」関税(レシプロカル関税)も発表しています。これは11%から最大50%までの幅で、米東部時間の水曜日午前0時1分に発動される予定です。
主な対象と税率は次のとおりとされています。
- 欧州連合(EU)からの輸入品:20%
- 中国からの輸入品:34%(既存分と合わせると中国への新たな関税は合計54%に)
- 日本からの輸入品:24%
- イスラエルからの輸入品:17%
- ベトナムからの輸入品:46%
さらに、昨年は米国とのモノの貿易で赤字(米国側から見れば黒字)だったにもかかわらず、オーストラリア、英国、ブラジル、コロンビア、アルゼンチン、サウジアラビアなども10%関税の対象となりました。米政権は「これらの国々は、政策がより公平であれば、米国との取引でさらに黒字を拡大していただろう」と主張しています。
一方で、医薬品やウラン、半導体など約1,000品目は新関税の適用除外とされましたが、政権はこれらの一部にも追加関税を検討しているとされています。
市場の反応:株式から商品まで急落
トランプ大統領が関税措置を発表したのは水曜日でしたが、その後の世界の金融市場は大きく揺れました。S&P500指数採用企業の時価総額は、金曜日の取引終了までの2日間で5兆ドルが吹き飛び、過去最大の下落幅となりました。
景気後退への懸念が強まるなか、原油やその他の資源価格も下落し、投資家は安全資産とされる国債に資金を移しています。関税をめぐる動きが、実体経済だけでなく市場心理にも影を落としている形です。
各国の対応と懸念
中国:追加関税とレアアース輸出規制で対抗
中国は土曜日、「市場がトランプ関税を拒否した」と述べ、米国の措置に対抗する姿勢を鮮明にしました。具体的には、すべての米国製品に34%の追加関税を課すほか、一部のレアアース(希土類)鉱物の輸出制限など、一連の対抗措置を発表しています。
レアアースは、ハイテク製品や電気自動車などに不可欠な素材であり、その供給制限は世界のサプライチェーンに波及する可能性があります。
欧州:結束を呼びかけるマクロン氏
フランスのマクロン大統領は、X(旧ツイッター)への投稿で「貿易戦争は誰の利益にもならない。市民と企業を守るため、団結して断固とした対応を取らなければならない」と述べました。欧州として、対抗措置と米国との対話の両面で対応する必要性をにじませています。
英国:通商協定で「嵐よけ」を模索
英国のスターマー首相は、英紙テレグラフへの寄稿で「産業政策を活用して、英国企業を嵐から守る」と強調。米国との間で、新関税の適用除外を含む通商協定の締結をめざす考えを示しました。
日本・アジア:難しいかじ取り
日本は24%という高い関税の対象となる見通しで、石破茂首相はトランプ大統領との電話会談を模索しています。自動車や機械など、米国向け輸出への依存度が高い産業への影響が懸念されるため、日本としても難しい対応を迫られます。
ベトナムも46%という非常に高い関税の対象です。ベトナム当局は、トランプ大統領の発表を受けて、米国との合意を模索する考えを示しています。
イスラエルのネタニヤフ首相は、17%の関税をめぐる協議のため、ワシントンを訪問してトランプ大統領と会談する予定です。
一方、イタリアのジョルジェッティ経済相は、ミラノ近郊で開かれたビジネスフォーラムで、米国への報復関税に慎重な姿勢を示し、「報復合戦はかえって自国経済を傷つけかねない」と警鐘を鳴らしました。
戦後の貿易秩序からの大きな転換点
今回の一連の関税措置は、世界貿易機関(WTO)を軸とした戦後の貿易秩序からの転換点として、国際社会に受け止められています。これまで多くの国と地域は、相互に合意した関税率やルールに従い、「予見可能性」を前提に貿易を行ってきました。
トランプ政権が打ち出したのは、それとは逆に、米国側が一方的に関税を引き上げ、個別交渉を通じて引き下げを求めるというアプローチです。ショー氏が「地殻変動に近い変化」と表現したのは、ルールに基づく多国間の仕組みから、力関係に基づく二国間交渉へと軸足が移る可能性を示しているからだといえます。
各国は今後、米国との交渉で関税の引き下げや除外を目指しつつ、同時に自国産業をどう守るかという難しいジレンマに直面することになります。
企業と私たちの生活に何が起きるのか
関税が引き上げられると、輸入企業のコストは上昇し、最終的には消費者価格に転嫁される可能性が高まります。短期的には、在庫や為替レートなどで影響が見えにくい場合もありますが、中長期的には物価や企業収益に影響が出るとみられます。
とくに、米国市場への依存度が高い企業にとっては、次のような対応が課題になりそうです。
- 調達先や生産拠点の分散など、サプライチェーンの見直し
- 価格転嫁が難しい場合のコスト削減や製品戦略の再検討
- 米国以外の市場開拓や、地域別のビジネスモデルの再設計
日本を含むアジアの企業にとっても、米国向けの直接輸出だけでなく、第三国を経由した貿易やグローバル生産網への影響を見極めることが重要になります。
これからの注目ポイント
今回の関税強化は、始まりにすぎない可能性があります。今後、国際ニュースとして注視すべきポイントを整理すると、次のようになります。
- 水曜日に予定される「相互」関税の正式発動と、その具体的な運用
- 各国が打ち出す対抗措置や、米国との二国間交渉の行方
- 株式・為替・商品市場への影響が、実体経済や雇用にどう波及するか
- 企業の投資計画やサプライチェーン再編がどこまで進むか
- 多国間の貿易ルール(WTOなど)の枠組みが、どのように機能し続けるのか
貿易摩擦が本格的な「貿易戦争」に発展するかどうかは、これから数週間から数カ月の各国の動きにかかっています。日本の読者にとっても、為替や株価だけでなく、自身の働く企業や産業への影響を意識しながらニュースをフォローすることが、これまで以上に重要になりそうです。
Reference(s):
U.S. starts collecting Trump's 10% tariff, upending global trade
cgtn.com








