米トランプ政権の関税強化で企業マインド悪化 景気後退懸念が拡大
米トランプ政権が強硬な関税政策を再び前面に打ち出し、米国企業の景況感と世界の投資家心理が大きく揺れています。米国経済の景気後退懸念が強まり、日本を含む世界経済への波及が注目されています。
トランプ政権の「関税ファースト」戦略とは
今回の動きの中心にあるのは、トランプ政権の関税を軸とした通商戦略です。政権は追加関税の検討・発動を相次いで打ち出しており、トランプ氏は「時には薬を飲まなければならない」と述べ、短期的な痛みを伴っても関税強化を進める姿勢を示しています。
しかし、こうした関税ファーストの戦略に対し、米国内のビジネスリーダーからは、長期的な経済へのダメージを懸念する声が急速に高まっています。
ビル・アックマン氏が「経済の核戦争」と警告
トランプ氏の強い支持者として知られるヘッジファンド運用者、ビル・アックマン氏も今回ばかりは危機感を隠していません。アックマン氏はソーシャルメディアXへの投稿で、政権の関税方針を「経済の核戦争」と表現しました。
同氏は、相次ぐ関税の脅しや発動によって、米国が「安定した経済パートナー」であるとの国際的な信頼が損なわれ、それを修復するには数十年かかるおそれがあると指摘しました。そのうえで、新たな関税措置を90日間凍結するモラトリアム(猶予期間)を設け、交渉と緊張緩和の時間を確保すべきだと提案しています。
ブラックロックCEOラリー・フィンク氏も悲観的な見方
世界最大級の資産運用会社ブラックロックの最高経営責任者(CEO)、ラリー・フィンク氏も、足元の状況に強い警戒感を示しています。米紙ニューヨーク・ポストによると、フィンク氏はニューヨーク経済クラブでの講演で、最近話をした多くの企業トップが「米経済はすでに景気後退局面にある」と感じていると述べました。
その要因として同氏は、激化する通商摩擦と関税政策を挙げています。さらに、貿易をめぐる緊張がこのまま続けば、株式市場が追加で20%下落する可能性があると警告し、市場の先行きに対する不透明感を強調しました。
S&P500が10%超急落 市場が織り込む「貿易戦争」リスク
金融市場もこうした懸念に敏感に反応しています。米国の代表的な株価指数であるS&P500種株価指数は、最新の関税発表を受けて10.5%下落し、約5兆ドルに相当する時価総額が吹き飛んだとされています。
投資家の間では「本格的な世界的貿易戦争」に発展しかねないとの見方が広がっており、リスク資産からの逃避やボラティリティ(価格変動)の高まりが続けば、実体経済にまで悪影響が波及する可能性があります。
中堅企業の7割超が投資を先送り 企業マインド悪化が鮮明に
企業の足元の心理を示すデータも、関税をめぐる不安の高まりを裏づけています。コンサルティング会社CBIZとホフストラ大学が実施した調査では、米国の中堅企業CEOの多くが関税の影響を強く懸念していることが分かりました。
- 53.2%のCEOが、関税の財務的な影響について「深く懸念している」と回答
- 72.3%が、投資判断を「先送りしている」と回答
調査からは、政権の関税政策を背景に、企業が長期投資に慎重になり、手元資金を守ろうとしている姿が浮かび上がります。設備投資の減少は、雇用や賃金、研究開発など実体経済のさまざまな分野に連鎖的な影響を与えかねません。
なぜ日本と世界にとって重要なのか
米国は世界最大級の消費市場であり、国際金融システムの中核でもあります。その米国で、関税をめぐる不確実性が高まり、企業の投資が慎重になれば、世界の貿易と投資の流れが鈍くなるリスクがあります。
日本企業にとっても、米国向け輸出や現地子会社の業績、さらには為替や株価を通じた影響は無視できません。特に、米国経済の減速や株価の大幅調整が現実味を帯びれば、日本を含むアジア市場にもマインド悪化が波及しやすくなります。
こうした状況の中で重要なのは、短期的な市場の動きに振り回されるのではなく、通商政策の方向性と企業投資のトレンドを冷静に見極めることです。関税政策の行方は、2025年末以降の世界経済のシナリオを左右する大きな変数の一つになっています。
これから注視したい4つのポイント
- トランプ政権が、アックマン氏が提案するような90日間の新たな関税凍結など、緊張緩和のシグナルを出すかどうか
- 中堅企業だけでなく、大企業・グローバル企業の設備投資や雇用計画に、関税不安がどこまで影響していくか
- ラリー・フィンク氏が指摘する「追加20%下落」のリスクを、市場がどのように織り込みにいくか
- 日本企業の決算や景況感調査に、米国の関税政策と景気後退懸念の影響がいつ、どの程度表れてくるか
米国の関税政策は、単なる米国内の政治テーマにとどまらず、世界の企業行動と市場を通じて、私たちの日常の雇用や物価にも影響し得るテーマです。今後数カ月、政策の出方と企業・市場の反応をセットで追いながら、自分なりの視点で世界経済の行方を考えていくことが重要になっています。
Reference(s):
cgtn.com








