シンガポール首相「自由貿易の時代は終わった」米国新関税の衝撃
シンガポールのローレンス・ウォン首相が、自身のSNSで「自由貿易とルールに基づくグローバル化の時代は終わった」と発言しました。背景には、トランプ米大統領が全ての輸入品に一律10%の最低関税を課す新たな措置を導入し、世界の貿易秩序が揺らいでいることがあります。本記事では、この発言が国際ニュースとして持つ意味と、世界経済への影響を整理します。
米国が導入した10%「最低関税」とは
国際ニュースとして注目されているのが、米国がすべての輸入品に10%の「最低ベースライン関税」を課したことです。シンガポールからの輸入も含め、特定の相手国にはさらに高い関税が適用されます。
この新関税は、トランプ大統領による幅広い関税政策の一環であり、世界各国との間で貿易戦争を引き起こしています。世界の金融市場は下落基調に陥り、この流れが収まる気配はほとんど見られていません。
- すべての輸入品に一律10%の最低関税
- 一部の相手国にはそれ以上の高関税
- 世界的な貿易戦争と市場の不安定化を招いている
ウォン首相「自由貿易の時代は終わった」
こうした動きを受けて、ウォン首相は動画メッセージで次のように警鐘を鳴らしました。
「ルールに基づくグローバル化と自由貿易の時代は終わった。これからは、より恣意的で、保護主義的で、危険な新しい段階に入る」
ウォン首相は、米国が自ら作り上げた国際秩序を放棄しつつあると指摘し、国ごとに関税をかける「相互主義」的なアプローチは、世界貿易機関(WTO)の枠組みを全面的に否定するものだと警戒しています。
小さく開かれた経済へのリスク
シンガポールのような小規模で開放的な経済は、自由貿易と多国間ルールに強く依存しています。そのため、今回の関税は直接の影響が限定的だとしても、中長期的なリスクは大きいとウォン首相は見ています。
- 貿易ルールが国ごとの力関係で決まるようになる
- サプライチェーン(供給網)が分断され、コストが上昇
- 投資家や企業の不確実性が増し、長期投資が手控えられる
ルールに基づく国際秩序が揺らぐなかで、シンガポールのような国は自らの発言力を確保しにくくなり、経済安全保障のリスクも高まります。
WTO体制への挑戦
ウォン首相が特に懸念しているのが、WTO体制への影響です。WTOは、加盟国が共通のルールを守ることで貿易摩擦を抑え、紛争を解決する仕組みです。
しかし、米国が国ごとに関税をかける方式をとれば、共通ルールよりも二国間の駆け引きが優先されます。これは、多国間で築き上げてきた枠組みからの大きな転換であり、ウォン首相は「地殻変動」とも言える変化だと受け止めています。
関税で雇用は戻るのか 自動化が突きつける現実
トランプ政権は、新たな関税が財政赤字の削減や製造業の国内回帰につながると主張しています。しかし、専門家の見方はより慎重です。
米中関係の対話を推進する団体「米中関係全米委員会」のスティーブン・オーリンズ会長は、中国メディアのインタビューで、関税による雇用効果について次のように述べています。
「関税によって確かに一部の雇用は生まれるだろうが、その数は決して大きくない」
その背景には、製造業におけるロボットや自動化の急速な進展があります。オーリンズ氏は、フットボール場ほどの広さの工場を視察した際、働いていた人は10人ほどで、あとは生産ラインの最後にロボットが並んでいたと説明しました。つまり、工場が国内に戻っても、それほど多くの人手を必要としない現実があるのです。
これからの国際経済をどう見るか
今回のシンガポール首相の発言は、日本を含むアジアの輸出依存経済にとっても他人事ではありません。国際ニュースとしてのポイントを整理すると、次のようになります。
- 米国が一律10%関税を導入し、世界貿易のルール構造が揺らいでいる
- 小国や開放経済ほど、ルール崩壊の影響を強く受けやすい
- 関税強化は必ずしも大規模な雇用回復につながらず、自動化との複合問題になっている
今後、各国は次のような問いに向き合わざるを得ません。
- WTOに代わる、あるいは補完する新たな国際ルールをどう作るのか
- 保護主義が広がるなかで、自国の成長戦略と社会の安定をどう両立させるのか
- 自動化とデジタル化が進む世界で、人々にどのような仕事と教育を提供するのか
ウォン首相の「自由貿易の時代は終わった」という言葉は、悲観的な宣告であると同時に、新しいルールづくりを迫る問いかけでもあります。貿易やテクノロジーの変化が加速する2025年の今、私たち一人ひとりも、この変化の意味を自分ごととして考えるタイミングに来ているのかもしれません。
Reference(s):
Singaporean PM says 'free trade is over' after Trump's tariffs
cgtn.com








