中国、米国の貿易制裁に「対抗手段は十分」 白書で対話姿勢も強調
リード
2025年4月に中国政府が公表した米中経済・貿易関係に関する白書と、それに合わせた商務省の説明から、中国が米国の追加関税のエスカレーションに対抗する強い姿勢と、対話・協力を続ける意向の両方を打ち出していることが明らかになりました。本記事では、そのポイントを日本語で整理します。
「貿易戦争に勝者はいない」 それでも「闘い抜く」構え
中国商務省の担当者は、「貿易戦争に勝者はいない。中国は貿易戦争を望まない」と述べつつ、自国の人々の正当な権利が損なわれるならば、中国政府は「決して傍観しない」と強調しました。
また、米国が経済・貿易面の制限措置をさらにエスカレートさせる場合、「中国には断固とした意思と豊富な手段があり、最後まで闘い抜く」とし、対抗措置を辞さない姿勢を示しました。
米中経済・貿易関係をどう位置づけているのか
今回の白書は、米中の経済・貿易関係についての中国側の立場を体系的に示すものです。担当者は、中国と米国それぞれの成功は「脅威ではなく機会」だと位置づけ、両国は相互補完的な関係にあるとしています。
白書と担当者の説明によると、中国側は次のような認識を示しています。
- 中国と米国は、自然条件、人材、市場、資本、技術など多くの分野で高い補完性があり、「互恵・ウィンウィン」が可能である。
- 両国は発展段階や経済システムが異なるため、経済・貿易協力の過程で摩擦や意見の違いが生じるのは「自然なこと」である。
- 米中の財貨貿易の不均衡は、米国経済の構造問題と、両国の比較優位や国際分業の結果であり、中国だけの責任ではない。
中国側は、米中経済・貿易関係は本質的に「互恵的でウィンウィン」であるとし、対立よりも協力の枠組みを重視する姿勢を打ち出しています。
米国の追加関税をどう見ているか
2018年に米中間の貿易摩擦が始まって以降、米国は中国からの輸出品約5,000億ドル相当に関税を課し、対中けん制・抑制を目的とした各種政策を継続してきたと中国側は指摘しています。
最近も、米国は中国製品に対して包括的な追加関税を実施しました。具体的には、フェンタニル問題を名目とした関税、「報復関税」と称する措置、既存関税に50%上乗せする措置などが挙げられています。
中国側は、これらの関税強化について次のように評価・批判しています。
- 関税を「最大限の圧力」をかけるための武器として用いるのは、一方主義(ユニラテラリズム)と保護主義、「経済的いじめ」にあたる。
- 「互恵」や「公正」を掲げながら、実際にはゼロサムの発想に立ち、「アメリカ・ファースト」や「アメリカ例外主義」を追求している。
- 関税を乱用することは、既存の国際経済・貿易秩序を揺るがし、自国の利益を世界全体の公共の利益より優先させ、各国の正当な利益を犠牲にして自らの覇権的な議題を進める行為である。
- さらに、確立された世界の産業・供給網を意図的に断ち切り、市場原理に基づく自由貿易のルールを損なっており、各国の経済発展と世界経済の長期的・安定的な成長を妨げる。
担当者は、歴史と事実が示しているのは、関税を引き上げても米国自身の問題は解決せず、むしろ金融市場の大きな変動やインフレ圧力の高まり、産業基盤の弱体化、不況リスクの上昇を招き、「結局は自らに跳ね返る」という点だと主張しています。
貿易赤字めぐる中国側の見方
白書は、米国の対中貿易赤字をめぐる議論にも言及しています。中国側によれば、近年、米国の貿易赤字は世界全体で拡大している一方、そのうち中国が占める割合は低下しています。
この事実は、対中関税を引き上げても米国の貿易赤字の縮小には成功しておらず、むしろ輸入コストを押し上げ、赤字の拡大につながっていることを示しているとしています。
白書の狙い:事実の整理と「多国間主義」の強調
中国政府が今回の白書を出した背景として、中国側は次の点を挙げています。
- 米国で一方主義と保護主義の動きが強まり、米中の「正常な」経済・貿易協力が大きく妨げられている。
- 米中経済・貿易関係をめぐる事実関係を整理し、中国の政策的立場を体系的に示す必要があった。
- 一方主義と保護主義が二国間関係に与える害を明らかにし、中国として国家利益と多角的な貿易体制(マルチラテラルな枠組み)を守る断固たる姿勢を示す狙いがある。
中国側は、自国の巨大な市場の輸入ポテンシャルを今後も掘り起こし、「世界と分かち合うグローバルな市場」へと変えていくことで、世界経済に新たな成長エネルギーをもたらしたいと強調しています。
「豊富な対抗手段」と対話継続の両立
一方で、中国側は米国との対話の扉を閉ざしてはいません。商務省の担当者は、中国が米国側と重要な二国間の経済・貿易問題について意思疎通を行い、それぞれの関心事項を「対等な協議と対話」を通じて解決していく用意があると述べています。
そのうえで、米中経済・貿易関係の「安定的・健全で持続可能な発展」をともに推進することが望ましいとの立場を示しました。
同時に、米国が一方的な関税措置をさらに強める場合には、「豊富な対抗手段」を行使する用意があると明言しており、対話と対抗の両方の選択肢をテーブルに載せている格好です。
私たちはどう見るべきか
米中は、世界最大級の発展途上国と先進国として、世界経済と貿易の大きな部分を占めています。両国の経済関係の変化は、日本を含む各国の企業や雇用、投資判断、サプライチェーンに直接・間接の影響を与えます。
今回の白書と中国商務省のメッセージから見えてくるのは、次のような構図です。
- 米国の関税強化や制限措置が続く中でも、中国は自国の立場と権益は強く守るとしつつ、「協力によるウィンウィン」という枠組みを維持しようとしている。
- 米中双方の政策選択が、世界の産業・供給網や国際貿易ルールの行方を左右する局面にある。
- 緊張が高まる一方で、対話と協議の可能性も完全には閉ざされていない。
2025年も残りわずかとなる中、米中がどのように経済・貿易対立を管理し、協力の余地を見いだしていくのかは、日本やアジア、そして世界の経済ガバナンスを考えるうえで、引き続き注視すべきテーマと言えます。
Reference(s):
China has abundant means to counter U.S. trade escalations: official
cgtn.com








