「500%関税でも違いなし」中国の著名教授が見る中国経済の底力 video poster
一部の国・地域で中国製品への高関税が議論されるなか、「500%関税でも実質的な違いはない」と語る専門家がいます。中国の著名政治学者であり政策研究者の鄭永年(Zheng Yongnian)氏は、ここ8年にわたる貿易摩擦を経て中国経済のレジリエンス(回復力・耐性)はむしろ強まったと指摘しました。
現在、香港中文大学(深圳校区)公共政策学院の院長を務める鄭氏は、中国国際メディアCGTNのインタビューで、60%から500%へといった極端な関税引き上げは「数字ほどの実質的な差は生まれない」との見方を示しました。この発言は、高関税競争が続く国際経済の行方を考える上で、示唆に富むものです。
500%と60%、「数字は違っても実質は同じ」
鄭氏によれば、60%と500%という関税率の違いは、見た目には大きくても、実際の経済効果という点では「ほとんど差がない」といえます。一定以上まで関税が引き上げられると、輸入品の価格は急騰し、貿易そのものが成り立ちにくくなるためです。
一般に、高関税が導入されると次のような状況が生まれます。
- 輸入品の価格が大幅に上昇し、現地市場で競争力を失う
- 輸入側は、他の供給国や代替品を探すようになる
- 輸出側は、その市場への依存度を下げ、新たな市場や内需へ重心を移す
この段階まで関税が上がると、60%か500%かという数字の違いよりも、「貿易をほぼ止める水準に達しているかどうか」の方が重要になります。鄭氏の指摘は、高関税が経済合理性よりも政治的なメッセージとして機能している側面があることを示唆しているとも読めます。
8年の貿易摩擦で固まった中国経済の「底力」
鄭氏が強調したもう一つのポイントは、「ここ8年ほど続く貿易摩擦を経て、中国経済のレジリエンスが固まってきた」という点です。度重なる関税措置や摩擦は、中国企業と中国経済にとって試練であると同時に、構造調整を促すきっかけにもなりました。
こうした環境の中で、中国経済は次のような形で対応力を高めてきたと見ることができます。
- 外需一辺倒から、内需と外需のバランスを重視する方向へのシフト
- サプライチェーン(供給網)の多元化や、生産拠点の高度化
- 研究開発やイノベーションへの投資強化を通じた付加価値の向上
鄭氏の「レジリエンスが固まった」という表現には、単に一時的なショックから立ち直るだけでなく、外部環境の変化を前提にした新しい成長パターンを模索する段階に入った、という含意があると考えられます。
経済における「レジリエンス」とは
レジリエンスとは、本来は「しなやかな強さ」「弾力性」を意味する言葉です。経済の文脈では、外部からのショックを受けても、
- 急激な崩壊を避ける耐久性
- 時間をかけて元の水準、あるいはそれ以上の水準に戻る回復力
- ショックをきっかけに、より持続可能な形へ構造を変える適応力
といった要素を含んだ概念として使われます。鄭氏の評価は、中国経済がこの「耐久・回復・適応」の三つの側面を、この数年で強めてきたという認識に基づいているといえるでしょう。
高関税時代の国際貿易と日本への示唆
極端な関税引き上げが相次ぐなかで、「60%と500%に実質的な差はない」という見方は、世界経済をどう見るべきかについていくつかの示唆を与えます。日本やアジアの企業、投資家にとっても無関係ではありません。
関税で変わるのは「流れ」より「地図」か
短期的には、高関税によって特定の国・地域間の貿易額は減少するかもしれません。しかし、鄭氏の指摘を踏まえると、次のような動きも想定されます。
- 貿易の「量」よりも、どの国・地域と結びつくかという「組み合わせ」が変わる
- 特定の市場に依存しないビジネスモデルを志向する企業が増える
- 新興市場や地域経済圏の重要性が相対的に高まる
つまり、高関税は世界全体の貿易の流れを完全に止めるのではなく、その「経路」を組み替える圧力として働く可能性があります。
日本企業が意識したい視点
こうした変化のなかで、日本企業や日本の読者が押さえておきたいポイントとして、次のような視点が挙げられます。
- 短期的な関税リスクだけでなく、中長期の構造変化を見据えた市場選択
- 特定の国・地域への依存度を可視化し、多元的なサプライチェーンを検討すること
- 対立ではなく協調の余地を探り、複数の経済圏と安定的な関係を築く戦略
中国経済のレジリエンスに注目することは、単に一つの大きな市場をどう見るかという話にとどまりません。高関税時代の国際貿易の中で、どのようにリスクを管理し、新しい成長の機会を見いだしていくかという、より広い問いにつながっています。
「数字」に惑わされない視点を持つ
500%という極端な数字は、見出しとしては強いインパクトがあります。しかし、鄭永年氏の「60%と500%では実質的に大きな違いはない」という指摘は、「数字の大きさ」と「現実の経済効果」は必ずしも一致しないことを思い出させます。
ここ8年で試された中国経済のレジリエンスは、高関税をめぐる議論の行方を見極めるうえで、一つの重要な参照点になりそうです。数字のインパクトだけに振り回されず、その背後で進む経済の構造変化に目を向けることが、これからの国際ニュースを読み解く鍵になっていくのではないでしょうか。
Reference(s):
500% tariffs will make no substantive difference: Renowned professor
cgtn.com








