米中関税戦争が再燃:中国が「最後まで戦う」と崩さない理由
米国が対中関税を急激に引き上げ、中国も対抗措置で応じる中、中国がなぜ「貿易・関税戦争は望まないが、来るなら恐れない」という姿勢を崩さないのか。その背景を、中国の白書や公表された数字から整理します。
数日のうちに激化した米中関税争い
今年4月初めの数日間で、米中の関税をめぐる対立は一気にエスカレートしました。米国は2月に対中関税を10%、3月に20%へと引き上げた後、4月2日に中国からの輸入品に34%の「報復的関税」を課しました。
これに対し、中国は4月4日に米国からの輸入品に同水準の関税をかけて対抗しました。この中国側の措置を受け、トランプ米大統領は中国からの輸入品に追加で50%の関税を上乗せし、対中関税は合計104%に達しました。
中国もすぐに応酬し、米国産品への関税を34%から84%へ引き上げたほか、米国の12の組織に輸出管理措置を適用し、6社を「信頼できないエンティティ・リスト」に追加しました。一方、トランプ大統領は中国以外の国・地域に対する関税については90日間の猶予を設けつつ、中国からの輸入品に対する関税を125%まで引き上げました。
中国外務省は「中国は貿易・関税戦争を望まないが、貿易・関税戦争が起これば恐れない」と述べ、強い姿勢を示しています。
中国が示す「全体像で見る」米中経済関係
こうした緊張が高まる中、中国は白書を公表し、米中の経済関係は単にモノの貿易収支だけで判断すべきではないと主張しました。モノの貿易に加え、サービス貿易や双方企業の現地売上まで含めた「全体像」で関係を評価すべきだという立場です。
白書や米商務省のデータによると、米国の財貿易赤字に占める中国の割合は、2018年の47.5%から2024年の24.6%まで6年連続で低下しています。一方で、米国はサービス貿易で大きな黒字を享受しています。
- 2001年から2023年にかけて、米中間のサービス貿易額は89億5,000万ドルから668億6,000万ドルへと約6倍に増加。
- 2023年だけで、米国は中国とのサービス貿易で265億7,000万ドルの黒字。
- 2022年には、米国企業の中国での売上高が4,905億2,000万ドルだったのに対し、中国企業の米国での売上高は786億4,000万ドルにとどまりました。
中国社会科学院の研究者・高凌雲氏は、中国は経済関係を「全体として」捉えるのに対し、米国は自国に不利に見える一部の側面だけを取り上げて誇張し、利益をもたらしている側面を無視しがちだと指摘します。
同氏はまた、米国が緊張をエスカレートさせ続けるなら、中国にはサービス貿易分野なども含めて対抗措置を取るための十分な手段があると述べています。ただし、それらの措置は国内への影響を最小限に抑えるよう慎重に設計されるだろうとしています。
米国の内政課題と対中圧力:中国側の見方
中国側は、今回の関税戦略を、米国が自国の経済課題の責任を外部に転嫁するための手段とみています。
2020年1月に署名された「第1段階」貿易合意では、相互尊重と対話による紛争解決がうたわれました。しかしその後も、米国は中国側の見方ではこの合意に反するさまざまな制限措置を相次いで導入してきました。
たとえば2022年10月、米国は半導体や関連製造装置の対中輸出を広範囲に制限しました。その結果、2022年には中国による米国産半導体および半導体製造装置の輸入が、それぞれ23%、17.9%減少しました。
航空分野では、ボーイング737MAX型機の2度の墜落事故を受けた運航停止や生産調整の影響で、ボーイング機の対中引き渡しが大きく落ち込み、米中間の航空機取引にも打撃となりました。
さらに、中国側によれば、価格や性能、安全性などの面から、中国市場での競争力を失った米国製品も多く、企業が市場原理に基づいてそれらの輸入を控えるケースも増えています。
中国租税学会の張連起副会長は、米国は中国企業を抑圧することで、中国の革新力と発展を封じ込めようとしていると分析します。「これは極端な圧力の一形態であり、米国は先端製造業での競争力で中国を抑え、追随者の役割にとどめようとしている」と述べています。
対話と相互尊重を掲げる中国の一貫した立場
こうした中でも、中国の基本的な立場は一貫しているといいます。すなわち、貿易摩擦は対話と協議を通じて、対等と相互利益の原則に基づき解決すべきだという考え方です。
白書では、米国が中国企業を繰り返し抑圧し、関税を引き上げているにもかかわらず、中国は一方的に第1段階合意から離脱したり、不可抗力条項を発動したりしていないと強調しています。これらは合意上認められている選択肢であるにもかかわらず、中国はそれを用いず、より大きな米中関係と双方の企業や人々の利益を優先してきたと説明しています。
中国は米国に対し、一方的な追加関税をすべて撤回し、中国企業への抑圧や経済的な威圧をやめるよう繰り返し求めています。ジュネーブで開かれた世界貿易機関(WTO)の物品理事会でも、中国は米国の「報復的関税」措置に深刻な懸念を表明し、これらの措置は貿易不均衡の是正に役立たないばかりか、世界の貿易秩序を損なうおそれがあると警告しました。
中国は「貿易戦争に勝者はいない」と繰り返し指摘し、すべての国と地域に対し、多国間の協調によって解決策を模索するよう呼びかけています。中国商務省と外務省も、中国は貿易戦争を望まないが、極端な圧力や威嚇の下での交渉には応じないと強調しています。
同時に、中国は、米国がさらなるエスカレーションに踏み切るなら、中国も立場を守り、断固として対応するとしています。
エスカレートする関税の先に何が見えるか
今回の米中関税争いは、単なる「関税の上げ下げ」にとどまらず、先端技術や製造業、サービス産業をめぐる長期的な主導権争いという側面も持っています。中国は、自国の開放拡大やWTOルールに沿った関税引き下げの実績を示しつつ、対話と相互尊重を求める姿勢を打ち出しています。
一方で、関税がここまで高水準に達すれば、企業はサプライチェーンや投資計画、価格設定の見直しを迫られます。とくに米中双方の市場に深く関わる企業にとって、政策リスクの管理はこれまで以上に重要になっていくでしょう。
私たちにとって大事なのは、どちらか一方の主張をそのまま受け入れることではなく、モノ・サービス・投資の全体像を踏まえて、米中関係の変化が自分たちの仕事や生活にどうつながるのかを考えることです。中国が示す「全体像で見る」という視点は、国際ニュースを読み解くうえでも参考になるかもしれません。
Reference(s):
'Fight to the end,' why China won't back down from U.S. tariff hikes
cgtn.com








