中国の即時免税が全国拡大 外国人観光客の買い物はどう変わる?
米国との関税をめぐる緊張が続くなか、中国が海外観光客向けの「即時税還付(即時免税)」制度を全国に広げています。外国人観光客は、出国時ではなく買い物のその場で税金の払い戻しを受けられるようになり、インバウンド消費のてこ入れ策として注目されています。
その場でお金が戻る「即時免税」とは
これまで多くの国で、外国人観光客の免税は「出国時の空港で申請し、後日口座に返金」という形が一般的でした。中国の新しい即時免税は、指定された店舗での買い物直後に、税金分の払い戻しをその場で受けられる点が特徴です。
海外からの観光客が指定店で買い物をすると、その場で税還付カウンターに進み、免税手続きを行います。従来のように、空港で長い列に並んで書類を提出する必要が減るため、買い物や観光に使える時間が増えると期待されています。
新ルールの仕組み:クレジットカード事前承認と税関チェック
中国の国家税務総局(STA)が4月8日に導入した新ルールでは、指定店舗での手続きが大きく簡素化されました。
- 観光客は指定店で買い物をしたあと、店内またはモール内の税還付カウンターで申請
- クレジットカードの「事前承認(プレオーソリゼーション)」を行い、その場で税還付額が確定
- 観光客は即時に還付を受け取り、カードには同額が仮押さえされる形になる
- 中国出国時に税関が本人と商品を確認し、問題がなければ事前承認が解除されて手続き完了
この仕組みにより、税務当局と還付機関は不正を防ぎつつ、観光客にとってはスピーディーな払い戻しを実現しています。
湖南省での利用条件:滞在日数と出国ルートに注意
中央部の湖南省で即時免税を利用する場合には、いくつかの条件があります。外国人観光客は、中国に連続して183日を超えて滞在していないことが必要とされています。
さらに、湖南省で免税対象の買い物をした場合、17日以内に長沙または張家界の空港から出国する必要があります。滞在が長期に及ぶビジネス出張などの場合は、この日数条件を意識して買い物や出国日程を組むことが重要になりそうです。
一人の観光客が同じ免税店で同じ日に購入できる免税対象商品の金額は、500元(約58ドル)から5万元の範囲とされています。高額品をまとめて購入する場合でも、制度の対象に含まれる設計になっています。
パスポート提示だけでOKのモールも
一部の大型ショッピングモールでは、手続きはさらに簡単になっています。観光客は申請用紙に細かく記入する必要はなく、パスポートを提示するだけで手続きが完了します。
システムが自動的にその日の買い物データを読み取り、税還付額を計算し、観光客は内容を確認して署名するだけで済みます。デジタル化された仕組みによって、言語の壁や書類作成のストレスを減らす狙いがあります。
浙江省の事例:5分で終わる手続きと観光客の声
東部の浙江省だけでも、現在120を超える免税対応店舗があるとされています。世界各地からのビジネス客や観光客が訪れる義烏市の店舗では、制度のメリットがすでに実感されているようです。
トルコから出張で頻繁に訪れるというマルクさんは、中国メディアグループ(CMG)の取材に対し、店頭で付加価値税(VAT)11パーセント分の還付を即時に受け取れるようになったと話しました。
別の観光客イリナさんは、自身の還付手続きが約5分で完了したことに驚いたといいます。「返金は直接自分の口座に振り込まれます。本当に早いです。体験としてとても良いと思いました」とCMGに語りました。
数字で見る効果:2024年に大きな伸び
国家税務総局のデータによると、2024年には、海外観光客による免税申請の数、免税対象商品の売上高、税還付総額のいずれもが前年から大きく伸びました。
- 免税を申請した海外観光客の数:2.3倍
- 免税対象商品の売上高:1.2倍
- 税還付の総額:1.3倍
インバウンド消費をめぐる競争が各国で強まるなか、中国が即時免税の全国展開によって、より多くの観光客の消費を取り込もうとしている様子がうかがえます。
税務当局の今後の方針とインバウンド戦略
国家税務総局は、今後も政策の説明やガイダンスを強化し、システム機能の継続的なアップグレードや手続きの最適化を進める方針を示しています。また、海外からの観光客が中国本土で積極的に消費できるよう支援していくとしています。
米国との間で関税をめぐる緊張が続くなか、貿易ではなく観光と消費を通じて外貨獲得と国内需要の拡大を図る動きは、今後も続きそうです。
日本の旅行者・企業にとっての意味
日本から中国本土を訪れる旅行者にとっては、即時免税によって、ブランド品や日用品を含む買い物のハードルが下がる可能性があります。空港で時間を取られることなく、その場で還付を受けられるため、短期出張や週末旅行でも活用しやすい制度といえます。
一方で、小売や観光に関わる日本企業にとっては、中国がインバウンド政策を強化していることを踏まえ、自社のサービスや店舗運営にどのような工夫が必要かを考えるヒントにもなります。観光客にとって「手続きが簡単で、すぐに得を実感できる仕組み」が、これからの国際観光競争力の一つの鍵になりつつあることを、このニュースは示しています。
Reference(s):
cgtn.com







