上海で世界最大24,000TEU級LNGコンテナ船CMA CGM SEINE引き渡し
2025年4月15日、上海・長興島にある滬東中華造船の造船基地で、世界最大級となる24,000TEU級のLNG二元燃料コンテナ船「CMA CGM SEINE(セーヌ)」が命名・引き渡しされました。
環境負荷を抑えた巨大コンテナ船の登場は、極東〜欧州を結ぶ国際物流と海運業界の脱炭素化にとって大きな一歩であり、日本語で国際ニュースを追う読者にとっても、エネルギー転換とサプライチェーンを考える上で注目すべき出来事です。
世界最大級24,000TEUコンテナ船のスケール
今回引き渡された「CMA CGM SEINE」は、フランスの海運大手CMA CGM向けに建造された最新鋭のコンテナ船です。極東〜欧州航路に投入する計画のもと、4月18日からの運航開始を見据えて設計されています。
船体の主な仕様は次のとおりです。
- 全長:399メートル
- 幅:61.3メートル
- 深さ:33.5メートル
- 満載喫水:14.5メートル
- 最大積載重量:約22万トン
コンテナは最大23,876個(20フィートコンテナ換算、TEU)を積載でき、そのうち2,200個は冷凍・冷蔵貨物向けの「リーファー」と呼ばれるコンテナに対応します。積み上げた高さは約25階建てビルに匹敵し、世界の海を行き交う「動く巨大倉庫」といえるスケールです。
なおTEUとは、長さ20フィート(約6メートル)のコンテナ1個分を1単位とする、コンテナ船の積載量を表す国際的な指標です。
LNG二元燃料という「グリーンハート」
「CMA CGM SEINE」の最大の特徴は、従来の重油に加えてLNG(液化天然ガス)も燃料として使えるLNG二元燃料システムです。船の「グリーンハート(緑の心臓)」とも呼ばれるこの仕組みが、環境性能を大きく引き上げています。
船内には容量18,600立方メートルのMARK III膜式燃料タンクが搭載されており、1回の航海で約2万海里をLNGで推進できるとされています。これは、長距離の国際ルートを途中で燃料補給することなく走り切れる規模です。
LNGを主燃料とすることで、同クラスの従来型コンテナ船と比べて次のような排出削減効果が見込まれます。
- 二酸化炭素(CO2):約20%削減
- 窒素酸化物(NOx):最大85%削減
- 粒子状物質(PM)および硫黄酸化物(SOx):99%削減
国際的な環境規制が厳しくなるなか、よりクリーンな燃料を使う大型コンテナ船は、海運各社にとって重要な選択肢になりつつあります。
前世代船からの5つの進化ポイント
滬東中華造船は2020年、CMA CGM向けに23,000TEU級のLNG二元燃料コンテナ船をすでに引き渡しています。「CMA CGM SEINE」はその設計をベースにしつつ、次の5つのポイントで進化しました。
- 積載能力の拡大
前世代船と比べて、標準コンテナ764個分の追加積載が可能になりました。より多くの貨物を一度に運べることで、1コンテナあたりの燃料消費や排出量の削減にもつながります。 - 燃料・ガス消費の最適化
エンジン出力を維持しながら、燃料とガスの消費量を抑える設計が採用されています。長距離航海での運航コストと環境負荷を同時に下げる狙いがあります。 - SOLAS最新基準への対応
貨物倉内への浸水をいち早く検知する高度な警報システムが導入され、国際条約SOLAS(海上人命安全条約)の最新要件に適合しています。 - 防災・消火設備の強化
船上には移動可能な放水銃や、より広い範囲をカバーできる放水設備が追加されました。万が一の火災時に、乗組員の安全と貨物の保護を高める役割を果たします。 - 居住性と静粛性の向上
乗組員の生活空間では、防音性能の強化などが行われました。長期航海が前提となる大型コンテナ船にとって、働く環境の改善は重要なテーマです。
中国造船とCMA CGMの協力関係
滬東中華造船はこれまでに、CMA CGM向けに合計17隻のコンテナ船を引き渡しており、そのうち12隻がLNG二元燃料船です。「CMA CGM SEINE」はその最新モデルにあたり、年内にはさらに大型・超大型コンテナ船3隻を引き渡す計画も示されています。
今回の成功は、中国造船集団が「環境対応」「高効率」「高度な技術」を兼ね備えた船舶の開発を進めるうえで、一つの節目と位置づけられています。グローバルな海運会社と造船企業が連携することで、脱炭素と物流効率化の両立を目指す動きが加速していることがうかがえます。
私たちの生活・ビジネスとどう関わるか
巨大なコンテナ船のニュースは、いまの生活からは遠い話に思えるかもしれません。しかし、日常的に使っている衣料品や家電、食品の多くは、コンテナ船に載せられて海を渡ってきています。大型で環境負荷の少ないコンテナ船の登場は、そんな見えないところで私たちの消費生活を支えています。
とくに極東〜欧州航路は、アジアと欧州を結ぶ国際物流の大動脈です。1隻あたりの積載量が増え、燃費性能が高まることで、企業のサプライチェーン(供給網)のCO2排出量を抑えたいというニーズにも応えやすくなります。
一方で、LNGは従来燃料よりも環境負荷が低いとされるものの、海運業界では水素やアンモニアなど次世代燃料の可能性も含め、どのエネルギーを主軸にするのか議論が続いています。「CMA CGM SEINE」のようなLNG二元燃料船は、そうしたエネルギー転換の「移行期」を象徴する存在ともいえます。
2025年12月を迎えた今後、どの燃料や船型が新たな標準になっていくのか。今回のような国際ニュースを手がかりに、海の向こうで進む技術革新と、それが自分たちの暮らしにどうつながるのかを考えてみるきっかけになりそうです。
Reference(s):
World's Largest 24,000 TEU LNG Dual-Fuel Container Ship Delivered in Shanghai
thepaper.cn








