米国の追加関税はWTO違反?「一方的ないじめ」と中国が批判
米国政府が貿易相手国に対して一方的に追加関税を課す動きを強めるなか、中国はこれを世界貿易機関(WTO)ルールに反する「一方的ないじめ」だと強く批判しています。本記事では、この米国関税措置がなぜWTOの原則と衝突すると指摘されているのかを整理します。
米国の「一方的関税」強化と中国の反応
最近、米国政府は貿易相手国に対して、交渉カードとして関税を上げ下げする「取引的」なアプローチを強めています。特定の国や分野に一方的に高い関税を課すやり方は、保護主義色が濃く、「一方的ないじめ」に等しいとの批判が出ています。
2025年4月13日、中国商務省の報道官は、米国が一部製品をいわゆる「対抗関税」の対象から外したことについてコメントしました。報道官は、これは米国が誤った一方的関税政策を是正する「小さな一歩」にすぎないと評価しつつも、根本的な問題解消には程遠いとの見方を示しました。
WTOが定める基本原則とどこが食い違うのか
中国側は、米国の追加関税がWTOの中核的な義務と基本原則に反していると指摘しています。具体的には次のような点です。
- 関税譲許の約束(加盟時に約束した上限税率を守る義務)に反している
- 特定の国だけに不利な税率を適用しないという最恵国待遇の原則に反している
WTOには例外規定もありますが、違反的な貿易制限措置が正当化されるのは、厳しい条件を満たす場合に限られます。判例の蓄積から整理すると、少なくとも次の二つの条件が必要とされています。
- 掲げる目的が正当であること(例:公衆の健康や公序良俗を守るなど)
- その目的を達成するための手段が適切であり、必要最小限であること
米国301条関税を巡るWTO紛争「DS543」の示唆
米国の通商法301条に基づく追加関税を巡っては、WTO紛争処理制度の下で「DS543」と呼ばれる事案が審理されました。このパネル報告は、現在の議論を考えるうえで重要な判断を示しています。
パネルは、米国が「公序良俗(パブリックモラル)」の保護を理由に例外規定の適用を主張するのであれば、301条関税は、米国の公序良俗に真に関わる懸念を生じさせる商品と密接に関連していなければならないと判断しました。例えば、米国の知的財産権を侵害しているとされる特定の製品などです。
この判断は、米国が主張した「経済的圧力」を理由とする正当化を、実質的に退けるものとなりました。単に相手国に譲歩を迫るために広範な関税をかけることは、WTOの枠組みの下では正当な目的とは認められない、というメッセージでもあります。
「経済的圧力」とルールに基づく貿易体制
関税や関税引き上げの脅しを使って、知的財産権問題以外の政策目的を達成しようとするやり方は、WTO体制の下では正当性を欠くと指摘されています。もし「経済的圧力」を広く認めてしまえば、各国が自国の要求を通すために関税を乱用し、多国間ルールは形骸化しかねません。
中国側が米国の関税措置を「一方的ないじめ」と批判する背景には、こうしたルール軽視が連鎖すれば、国際貿易全体の予見可能性が失われるという危機感があります。
国際貿易と日本・アジアへの含意
米国の一方的な関税措置が続けば、世界の貿易構造やサプライチェーンはさらに不安定になります。中国や米国の市場に深く関わる日本企業やアジアの企業にとっても、次のようなリスクが高まります。
- 特定の国や製品への関税引き上げで、コスト構造が突然変わる
- 輸出先の振り替えやサプライチェーン再編を余儀なくされる
- 不確実性の高まりが、長期投資や雇用判断を難しくする
同時に、ルールに基づく多国間体制を維持・強化しようとする動きも重要になります。WTOの原則に沿った形での紛争解決や、透明性の高い通商政策が求められています。
読者が押さえておきたい3つのポイント
- 米国の追加関税は、WTOが定める関税譲許や最恵国待遇の原則と深刻に衝突していると指摘されている
- WTOの例外が認められるには、目的の正当性と手段の適切性という厳格な条件があり、「経済的圧力」はその根拠になりにくい
- 一方的な関税は短期的な交渉カードにはなっても、中長期的には国際貿易秩序と企業活動の安定性を損なうリスクが大きい
米国と中国の通商摩擦は、今後も国際ニュースの大きなテーマであり続けます。関税やWTOといったキーワードの背景にあるルールと論理を押さえておくことが、ニュースを自分ごととして読み解く第一歩になりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








