世界貿易が減速 貿易摩擦で2025年の成長予測を下方修正
世界貿易が減速する兆しが強まっています。世界貿易機関(WTO)と国連貿易開発会議(UNCTAD)の最新報告書は、貿易摩擦と政策の不透明感が2025年の世界経済の成長予測を押し下げていると警告しました。
このニュースのポイント
- WTOは、2025年の世界の財貿易量が0.2%減少に転じると予測
- 米国の「相互関税」の再導入などが続けば、減少率は1.5%まで拡大するリスク
- UNCTADは2025年の世界成長率見通しを2.3%に下方修正
- 投資や雇用の判断が先送りされ、特に脆弱な国々への影響が懸念
- 一方で、南南貿易と中国の発展が、途上国にとって一定の支えとなっていると指摘
WTO:世界の財貿易がマイナス成長に
WTOの「世界貿易見通しと統計」報告書によると、現在の関税水準が続いた場合、2025年の世界の財貿易量は前年に比べて0.2%減少すると見込まれています。これは、より低い関税を前提とした従来の予測と比べて、およそ3ポイントの下方修正にあたります。
WTOは、米国が再導入した「相互関税」と、それに伴う貿易政策の不確実性が、世界の貿易を一段と冷やす恐れがあると指摘します。こうした緊張が続いた場合、2025年の世界の財貿易は1.5%減少するシナリオも示されました。
地域ごとの明暗
最新の試算では、地域ごとに影響の度合いが大きく異なります。WTOは、2025年に北米の輸出が12.6%と「特に急激な」減少になる一方、アジアと欧州では比較的穏やかな動きにとどまるとしています。
アジアでは、輸出・輸入ともに1.6%の伸びが見込まれています。欧州も、輸出が1.0%、輸入が1.9%の増加と予測されており、世界全体が減速する中でも、アジアと欧州が一定の底支え役を果たす構図が浮かび上がります。
一方で、WTOのエコノミストたちは、こうした数字があくまで現時点の政策前提に基づくものであり、今後の関税や貿易措置の動き次第で、大きく振れる可能性があるとみています。
UNCTAD:世界成長率は2.3%に減速
UNCTADが公表した「Trade and Development Foresights 2025」報告書は、世界経済が景気後退に近い軌道にあると分析しています。貿易摩擦の激化と政策の不透明感が重なり、2025年の世界の成長率は2.3%にとどまると予測しました。
報告書によると、貿易政策に対する不確実性は歴史的な高水準に達しており、その結果として企業は投資判断を先送りし、雇用の拡大にも慎重になっているといいます。特に、財政余力や外貨準備の小さい脆弱な国々では、景気減速が生活や雇用に直接響きやすく、影響が深刻になりやすいと懸念しています。
南南貿易と中国の存在感
UNCTADは同時に、南南貿易の拡大が世界経済にとって重要な「緩衝材」になっているとも指摘します。南南貿易とは、アジア、アフリカ、中南米などの開発途上国・新興国同士の貿易を指し、現在では世界の貿易全体のおよそ3分の1を占めるまでに成長しています。
報告書は、中国の発展が南南貿易の着実な拡大を後押ししてきたと評価し、今後も南南経済統合の可能性が多くの途上国に新たな機会をもたらしうると述べています。先進国との貿易が停滞する局面でも、南南貿易のネットワークが広がることで、需要の新たな受け皿になりうるという見立てです。
日本とビジネスへの含意
こうした世界貿易と成長予測の変化は、日本やアジアの企業・個人にとっても無関係ではありません。輸出産業だけでなく、海外市場を前提にしたサービス産業やスタートアップにとって、貿易環境はビジネスモデルそのものに関わる前提条件だからです。
- サプライチェーン(供給網)の見直し:特定の国・地域への依存度を下げ、多様な市場と結びつく戦略が重要になります。
- 投資と雇用のタイミング:世界的に投資判断が慎重になる中で、日本企業もリスクと機会の見極めが求められます。
- 南南貿易の動向に注目:アジアやアフリカ、中南米との新たな連携は、日本企業にとっても成長の余地になりえます。
読者への問いかけ
貿易摩擦や関税引き上げのニュースは、一見すると遠い世界の話に見えます。しかし、成長予測の下方修正や投資の停滞は、最終的には雇用や賃金、物価といった私たちの暮らしにもつながります。世界貿易の数字の変化を、「自分の仕事や将来とどう関係するのか」という視点で眺めてみることが、これからの不透明な時代を考える一つの手がかりになりそうです。
Reference(s):
Global trade, growth forecasts downgraded amid rising trade tensions
cgtn.com








