トランプ関税と世界の海運:マースクCEOが語る中国投資と貿易の行方 video poster
トランプ大統領による一方的な関税引き上げが続く中、世界の海運・物流はどのような影響を受けているのでしょうか。番組Biztalkのインタビューに応じた世界的海運大手マースクのビンセント・クレクCEOは、米国の関税政策が世界経済と国際物流にもたらすリスク、中国本土への投資への見方、サプライチェーンのレジリエンス(しなやかな強さ)、そして国際貿易の今後について語りました。
トランプ大統領の関税が海運にもたらす揺らぎ
今回の国際ニュースの焦点は、トランプ大統領の一方的な関税引き上げ政策です。この政策は他国からの対抗措置を呼び込み、関税の応酬という形で世界の貿易環境を不安定にしています。その影響を最前線で受けているのが、貨物を運ぶ海運と物流の現場です。
関税が大きく動くと、海運ビジネスには次のような変化が生じます。
- 貿易量そのものが減少し、船舶の稼働率に影響が出る
- 企業が仕入れ先や生産拠点を急に変えることで、航路や物流ネットワークの組み替えが必要になる
- 将来のルールが読みにくくなり、長期的な投資判断が難しくなる
クレクCEOは、こうした不確実性が積み重なることで、世界の海運・物流だけでなく、世界経済全体にマイナスの影響が及ぶことに懸念を示しています。
マースクCEOが見る世界経済と物流
コスト上昇と予見可能性の低下
関税は企業にとって実質的なコスト増です。海運会社そのものが関税を払うわけではありませんが、顧客である荷主企業が影響を受けることで、輸送量や契約期間、価格条件が変わってきます。
インタビューでは、クレクCEOが、企業が長期の生産計画や投資計画を立てにくくなっている現状を指摘しました。予見可能性の低下は、物流の現場にも混乱をもたらし、効率性や安定性を損ないかねません。
世界経済への波及を懸念
さらにクレクCEOは、米国の関税引き上げが世界経済の成長を押し下げるリスクについても懸念を表明しています。海運業は世界の貿易量と密接に連動するため、貿易の減速はそのまま海運需要の減速につながります。
関税によるコスト増が世界各地の消費者価格に転嫁されれば、消費マインドも冷え込みやすくなり、結果として世界経済全体の勢いが弱まる可能性があります。
それでも中国本土への投資に自信
一方で、クレクCEOは中国本土への投資については自信を示しています。インタビューでは、中国本土が依然として世界の生産・消費の重要な拠点であり、国際サプライチェーンの中核に位置しているという認識が示されました。
その背景として、次のような点が挙げられます。
- 長年にわたり整備されてきた港湾や物流インフラの充実
- 製造業の集積と、広範なサプライヤーネットワーク
- 世界市場に向けた輸出だけでなく、国内市場の拡大による需要の多様化
関税をめぐる不確実性が高まるなかでも、中国本土を軸としたサプライチェーンは依然として強い競争力を持つ、という視点が示された形です。
レジリエンスあるサプライチェーンとは
インタビューのもう一つの柱が、経済とサプライチェーンのレジリエンスです。レジリエンスとは、ショックを受けても壊れずに、柔軟に形を変えながら機能を維持する力のことです。
企業が取りうる三つの対応
クレクCEOは、今後の国際物流では次のような取り組みが重要になるとの見方を示しています。
- 生産拠点や調達先を複数地域に分散し、特定地域への依存度を下げる
- デジタル技術を活用して、貨物の動きをリアルタイムで把握し、急な変化に素早く対応する
- 海運、陸運、倉庫などを一体で設計し、迂回ルートを含めた柔軟なネットワークを整える
こうした取り組みは一朝一夕には進みませんが、関税や地政学的リスクが高まる時代において、企業が生き残るための条件になりつつあります。
国際貿易のこれからと私たちの暮らし
クレクCEOは、国際貿易の今後のトレンドとして、世界全体のつながりが完全に途切れるのではなく、形を変えながら続いていくという見方も示しています。地域ごとの結びつきが強まる一方で、海運やデジタル技術がそれらをつなぐ役割を果たし続けるというイメージです。
2025年末のいま、日本に暮らす私たちにとっても、これは無関係な話ではありません。スマートフォン、服、食料品など、日々の生活に関わる多くの商品が国際物流に支えられています。トランプ大統領の関税政策や各国の対抗措置が、価格や品揃え、企業の投資判断を通じて、じわじわと私たちの生活にも影響していく可能性があります。
関税や国際物流のニュースは、一見むずかしく感じられるかもしれません。しかし、その裏側には、どの国とどのように関わり、どの地域で何をつくり、どこへ運ぶのかという、私たちの暮らしの土台につながる選択があります。マースクCEOの視点を手がかりに、これからの国際ニュースをどのような目で追うか、一度立ち止まって考えてみるタイミングと言えそうです。
Reference(s):
cgtn.com








