中国の貿易博覧会に世界企業が殺到 保護主義下でも存在感
保護主義や地政学リスクが強まるなか、中国の大型貿易展示会に世界の大手企業と海外バイヤーが過去最多規模で参加し、中国市場と中国製品の「底力」が改めて浮き彫りになっています。
保護主義の逆風下でも埋まるブース
2025年は、世界貿易の不透明感が一段と増した年でもあります。関税の引き上げや地政学的な緊張が続く一方で、中国本土では国際的な貿易展示会に人と企業が集まり続けています。この動きは、中国経済をめぐる国際ニュースのなかでも見逃せないポイントです。
南部の海南省で開催された第5回中国国際消費品博覧会(CICPE)には、フォーチュン・グローバル500に名を連ねる企業や業界のリーディングカンパニーが65社参加し、過去最多を更新しました。消費財分野のグローバル企業が一堂に会し、中国市場向けだけでなく、世界の消費トレンドを見据えた最新製品やサービスを紹介しました。
同じく南部の広州で開かれた中国輸出入商品交易会(広州交易会、カントン・フェア)も活況です。開幕初日には6万4,530人の海外バイヤーが来場し、前年同期比8.9%増と、初日として過去最多を記録しました。米国のウォルマートやターゲット、フランスのカルフール、英国のテスコやキングフィッシャー、ドイツのメトロなど、世界的な小売大手もこぞって姿を見せています。
北京外国語大学の牛華勇教授は、こうした展示会の成功について「貿易と協力は依然として世界の発展をけん引する原動力であり、グローバル化の恩恵を受けるのはすべての国だ」と指摘します。
広州交易会:代わりが見つからない中国製品
世界的なサプライチェーンの混乱が続くなかでも、中国製品の魅力は根強いようです。広州交易会に参加した多くの海外バイヤーは、中国製品を「魅力的で、他に代えがたい存在」と評価しています。
フランスに本社を置く小売企業ディノバは、取引先の多くを広州交易会で見つけてきました。同社のソニア・ベン・ベーゼ総支配人は、中国を自社のグローバル調達戦略の中核に据えていると語ります。各国を回って代替調達先も探したものの、「自社の商品カテゴリーにおいて、中国ほど産業として成熟した地域は見つからなかった」といいます。
米国からの出展者であるクリス・アーサン氏も、関税の影響はあるものの「中国のグローバルサプライチェーンにおける役割は依然として重要で、広く尊重されている」と評価しています。
海南のCICPE:世界のブランドが中国の消費市場を狙う
中国製品が「買われている」だけでなく、中国市場そのものも世界のブランドにとって重要性を増しています。海南省で開催された今年の中国国際消費品博覧会には、世界各地の有力ブランドが積極的に出展しました。
2025年の博覧会では、英国が「主賓国」として参加しました。ファッション、ビューティー、生活雑貨、ヘルスケア、ジュエリーなどの分野から53ブランドが出展し、英国パビリオンの展示面積は1,300平方メートル超と、前年の約2倍に拡大しました。
英国ビジネス・通商省のダグラス・アレクサンダー国務大臣(商務担当)は、中国経済について、デジタル技術、ライフサイエンス、グリーンエネルギーといった分野で「近年、目覚ましい革新と成長を遂げている」と強調。英国として、中国との経済関係をさらに深めていく姿勢を示しました。
ラグジュアリーブランドも次々参入
今回の博覧会には、世界のラグジュアリーブランドも相次いで参加しました。リシュモン傘下の高級時計リテールブランド「タイムヴァレー」は独立した出展者として初参加。LVMHやケリング・グループのブランドも顔を揃え、中国の高級消費市場の成長に期待を寄せています。
高級旅行小売を手がけるDFS Chinaのナンシー・リウ社長は、「中国のラグジュアリー消費者は、多くの海外市場と比べてはるかに若い世代が中心であり、それが大きなビジネスチャンスになっている」と話します。同社は、台頭する新しい消費者層の期待に応えるため、サービスや体験を細かくカスタマイズしているといいます。
海南自由貿易港と外資企業の長期戦略
海南省では、自由貿易港の整備が国家プロジェクトとして進められており、今回の博覧会もその「ショーケース」の役割を担いました。シーメンス・エナジーの世界上級副社長である姚振国氏は、海南自由貿易港の発展が「新たな開放の機会を切り開いている」と評価します。
世界的な貿易の不確実性やサプライチェーンの分断が指摘されるなかでも、中国の市場規模、伸び続ける消費需要、各種の支援政策への期待から、海外からの投資家の楽観的な見方は大きく崩れていないといいます。
同社は、エネルギー分野での産業チェーン全体にわたる協力を強化し、イノベーションを促進するとともに、海南自由貿易港の国際的でグリーンかつ法に基づく発展を支援していく考えです。姚氏はまた、中国の改革開放の勢いを現場で強く感じていると述べ、その認識は多くの出展企業にも共有されています。
彼らは、世界経済が減速し、保護主義が広がるなかで、中国が掲げる「高水準の対外開放」が安定と予見可能性をもたらし、世界経済に自信を与えていると見ています。
データが示す中国貿易の底堅さ
展示会場のにぎわいは、統計にも表れています。中国税関総署のデータによると、2025年第1四半期の貨物貿易(人民元建て)は前年同期比1.3%増となり、外部環境の逆風のなかでも安定した成長と強いレジリエンス(回復力)を示しました。
米国による中国製品への追加関税は、中国の貿易や経済に短期的な圧力をかけるとみられていますが、中国国家統計局の盛来運副局長は、こうした措置によっても中国経済の長期的なプラス成長の趨勢は変わらないとの見方を示しています。
国家発展改革委員会直属のマクロ経済研究院の専門家である張燕生氏も、広州と海南での展示会を踏まえ、「世界的な保護主義の高まりのなかでも、中国の対外貿易の強さと粘り強さははっきりと見て取れる」とコメント。「海外のビジネスパーソンが引き続き中国でビジネスチャンスを探していることが、その証拠だ」と述べました。
張氏はさらに、「中国は人口も経済規模も大きく、開放のスケールも巨大だ」と指摘。反グローバル化の空気が強まるいまだからこそ、「高いレベルの開放路線を堅持し、経済のグローバル化や貿易・投資の自由化を推進していく」との姿勢を強調しました。
日本やアジアの読者への示唆:グローバル化は終わったのか
では、この一連の動きは、日本を含むアジアの企業や投資家にどのような示唆を与えるのでしょうか。いくつかのポイントに整理してみます。
- サプライチェーン再編と「中国プラスα」:各国で「脱中国」や供給網の多元化が議論される一方で、多くの企業にとって中国本土は依然として調達と生産の中核であり続けています。どこまでリスク分散しつつ、中国との関係を維持・強化するかが問われています。
- 巨大な消費市場としての中国:若い世代の富裕層を含む中国の消費者は、ラグジュアリーからグリーンエネルギー関連まで、新たな需要を生み出しています。日本企業にとっても、単なる「輸出市場」ではなく、現地で共創するパートナーとしてどう向き合うかが鍵になりそうです。
- ルールと制度の競争:海南自由貿易港のような取り組みは、貿易や投資のルール作りの場としても注目されています。保護主義と開放のせめぎ合いのなかで、どの制度にコミットし、どの市場で勝負するのかが戦略上の重要な判断になります。
2025年の中国の貿易展示会は、「グローバル化は本当に終わったのか」という問いに対し、少なくとも一つの答えを示しています。逆風のなかでも、モノと人とアイデアの流れは続き、その中心の一つとして中国市場が位置づけられていることを、今回の国際ニュースは物語っています。
Reference(s):
China's trade exhibitions see strong participation of global firms
cgtn.com








