海南省が世界的リテール観光ハブに 白書が示す若年層と免税の力
中国の海南省が、観光と免税ショッピングを軸に「世界的なリテール観光ハブ」へと進化しつつあります。先日閉幕した第5回中国国際消費品博覧会(CICPE)に合わせて公表された白書が、その姿をデータで示しました。
白書が描く「旅行小売」の最前線
今回発表された『2025 Hainan Travel Retail White Paper』は、KPMG ChinaとThe Moodie Davitt Reportが共同でまとめたものです。CICPEの一部として開催された第5回グローバル消費イノベーション&免税・トラベルリテール交流イベントで公開されました。
白書は、海南省が国内外の消費を引きつける重要な拠点になりつつあると指摘します。観光の拡大、制度面での改革、そして免税を中心とする小売の成長が、海南のポジションを押し上げていると分析しています。
第5回CICPE自体も、中国で今年最初の大型国際展示会であり、消費財に特化した唯一の国家レベルのイベントとして位置づけられました。会場には70を超える国と地域から、1,700社以上、4,100以上のブランドが集まり、海南の国際的な存在感を象徴する場となりました。
観光と免税ショッピングがつくる新しい消費モデル
白書によれば、海南省の観光収入は近年、着実な伸びを続けています。その背景には、従来型の小売から、新しい消費モデルへのシフトと免税ショッピングの拡大があります。
免税店の拡充や、旅行と買い物を組み合わせたサービスの充実が、観光客の滞在時間と支出を押し上げています。白書は、こうした取り組みが海南を旅行小売の先進的な舞台にしていると評価しています。
さらに海南省は、2024年初め以降、国際的な旅行者の受け入れを強化するために複数の措置を導入しました。高品質な観光市場として世界と競い合うことを目指し、サービスの高度化を進めているとしています。
カギは90・00年代生まれ 若年層が消費を主導
白書が示す最も特徴的な点の一つは、海南の旅行小売市場で若年層が圧倒的な存在感を持っていることです。2024年の第1〜第3四半期には、1990年代と2000年代生まれの旅行者が、海南を訪れた観光客の5割以上を占めました。
この世代はデジタルに慣れ、トレンドに敏感で、多様なショッピング体験を重視します。白書は、彼らの嗜好と購買力が、海南の小売のあり方を再定義していると指摘しています。
若い旅行者が求めるもの
若年層の旅行者が特に関心を持っているのは、次のような商品や体験だとされています。
- 化粧品やスキンケアなどのビューティー関連商品
- バッグや時計などのラグジュアリーブランド
- スマートフォンやガジェットなどのデジタル機器
- 多様な体験を伴うショッピングやエンターテインメント
海南省は、新しい観光スタイルの導入にも投資しており、こうした若い旅行者を惹きつけることで、今後の成長の道筋を描いていると白書は分析しています。
自由貿易港の制度改革と国際化戦略
政府レベルでは、海南自由貿易港の枠組みのもとで、ビジネス環境を改善し、公正な競争を促すための制度改革が進められています。
市場面では、観光産業のさらなる対外開放や、拡大する世界の旅行市場の流れをとらえることで、海南の国際的な認知度を高めようとしています。
白書は、海南が「国内の高い消費力を持つ旅行者を惹きつける拠点」であると同時に、「海外からの消費を取り込む窓口」としての二重の役割を担っていると強調します。こうした役割が、世界的な観光・小売の結節点としての地位を固めつつあるとしています。
今後についても、海南のトラベルリテール市場はさらに発展が見込まれ、世界の旅行小売の重要なハブになると期待されていると白書は展望しています。
数字で読む海南の観光ポテンシャル
白書は、2024年の実績からも海南の存在感を裏付けています。海南省は2024年、観光客の延べ訪問数が9,721万件に達し、前年比8%増と過去最高を記録しました。
観光収入は2,040億元(約283億ドル)を超え、前年比12.5%増と、人数の伸びを上回るペースで拡大しました。1人当たりの消費額も着実に増加しているとされています。
同じ期間に海南を訪れた海外からの旅行者は111万人と、前年比115.6%増と大きく伸びました。入境客の急増は、海南が国際市場での競争力を高めていることを示すものといえます。
日本の読者が注目すべきポイント
日本の読者にとって、今回の白書が示す海南の動きは、単なる海外の観光ニュースにとどまりません。地域経済を観光と小売でどう活性化するかという問いに対する、一つのケーススタディとして読むことができます。
特に参考になりそうな点として、次のような視点が挙げられます。
- データに基づき、どの世代が主要な顧客なのかを明確にし、そのニーズに合わせて商品や体験を設計していること
- 免税や制度改革など、政策面のイノベーションと民間のサービス開発を組み合わせていること
- 観光とショッピングを一体化し、「モノ消費」と「コト消費」を同時に高めていること
- 国際展示会を通じて、世界のブランドや企業を継続的に呼び込み、地域のイメージを発信していること
観光地や地方都市が差別化を模索するなか、海南省の取り組みは、アジアの一つのモデルケースとして今後も注目を集めそうです。日本の自治体や企業にとっても、若い旅行者をどう呼び込み、体験価値をどう設計するかを考えるうえで、ヒントの多い事例といえるでしょう。
海南省の旅行小売市場は、制度と市場、そして消費者行動が複雑に絡み合いながら進化を続けています。今回の白書は、その変化を俯瞰するための重要な材料となりそうです。
Reference(s):
White paper shows Hainan's evolution into global retail tourism hub
cgtn.com








