カリフォルニア州がトランプ関税を提訴 州経済を守る狙いとは video poster
カリフォルニア州がトランプ政権の関税引き上げをめぐり、米連邦政府を相手取って提訴しました。農業から港湾、EC事業者まで州経済全体に影響が広がる中、なぜ今、州が前面に立って関税と争うのか。その背景とポイントを整理します。
カリフォルニア州が連邦政府を提訴 何が起きたのか
今週木曜日、カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は記者会見で、州として米連邦政府の関税政策を提訴したと発表しました。訴えでは、トランプ政権が関税を違法に利用し、カリフォルニア経済を意図的に混乱させていると主張し、関税措置を無効と認定し、その執行を禁止するよう裁判所に求めています。
米国の州が連邦政府の関税措置そのものを法廷で直接争うのは初めてとされ、2025年12月現在、全米の貿易政策と連邦制のあり方をめぐる議論に新たな火種となっています。
なぜカリフォルニアが先頭に立つのか
カリフォルニア州が先陣を切った背景には、同州が米国最大の輸入州であり、対外貿易への依存度がきわめて高いという事情があります。公式統計によると、2023年の州内総生産(GDP)は約3.9兆ドルに達し、2024年の輸出入総額は6,750億ドル近くに上りました。
主な貿易相手は中国、メキシコ、カナダなどで、とくに中国向け輸出は州全体の貿易に占める割合が大きいとされています。このため、トランプ政権による関税引き上げや、それに対する各国・地域の対抗措置は、カリフォルニアの産業や雇用に直撃しやすい構造です。
ニューサム知事は「カリフォルニアは農業と製造業で全米をリードしており、最も打撃を受けるのは現場で働く労働者と家族、そして農家だ」と述べ、関税強化を「トランプ税の引き上げ」として批判しました。
アーモンド産業:世界シェア8割の危機
関税の影響が最も深刻だと指摘されているのが、カリフォルニアのアーモンド産業です。同州は世界のアーモンド需要の80%以上を供給する一大産地で、生産量の4分の3以上を輸出に依存しています。
カリフォルニアのアーモンド農家は、中国メディアのChina Media Group(CMG)に対し、関税がかかれば製品コストが上昇し、その多くを買い手に転嫁せざるをえないと語りました。「買い手がその値上げを受け入れてくれる時もあれば、そうでない時もある」と述べ、価格競争力を失うリスクを懸念しています。
農業経済学者らは、関税が長引けば、果樹園の閉鎖や農場の廃業が相次ぐ可能性があると見ており、州の農業コミュニティでは先行き不安が高まっています。
港湾と物流:ロングビーチ港にも打撃
関税の余波は、物流にも及んでいます。米国最大級のコンテナ港の一つであるロングビーチ港は、すでに貨物量の減少に直面しており、今年4月以降、17隻のコンテナ船が入港予定をキャンセルしたと報告しています。
同港は、関税政策がこのまま続いた場合、2025年下半期のコンテナ取扱量が20%減少する可能性があるとの見通しを示しています。ロングビーチ港はアジアとのコンテナ航路の重要な拠点でもあり、ここでの減速は、カリフォルニアのみならず、世界のサプライチェーン全体に波及しかねません。
EC事業者の悲鳴:コストは2〜3倍に?
打撃を受けているのは農業や港湾だけではありません。カリフォルニア北部を拠点とするEC事業者のダスティ・ケニーさんは、中国から輸入した商品に大きく依存しており、関税引き上げで仕入れコストが急騰していると明かしています。
ケニーさんの会社は倉庫に数万点規模の商品を抱えており、それらすべてに関税が上乗せされれば、顧客への販売価格を据え置くために企業側が巨額のコストを吸収せざるをえません。一方で、生産拠点を米国内に移すことは現実的ではなく、「コストは1〜2割増しではなく、製品ごとに2倍、3倍に跳ね上がる可能性がある。米国内の製造業者に連絡しても、電話やメールにすら応じてもらえないことがある」と訴えています。
ニューサム知事のメッセージ:関税は誰のためか
ニューサム知事は、トランプ政権の関税政策について「米国民の意思を代表するものではない」と批判し、長年の貿易相手国・地域に対し、報復措置をとる場合でもカリフォルニア製品には例外を認めるよう呼びかけています。
知事は、カリフォルニアが国際社会との「新たな戦略的貿易関係」を模索していくと強調しました。中国、メキシコ、カナダなどとの貿易は、同州の輸出市場と雇用を支える重要な柱であり、州としては連邦レベルの政治対立とは切り離して、できる限り安定した取引環境を維持したい思惑があります。
今後の焦点:訴訟は何を変えうるか
今回の提訴は、すぐに関税を止める「特効薬」にはなりませんが、いくつかの重要な論点を突きつけています。
- 連邦政府の権限と州の権利の境界:本来、関税は連邦政府の専管事項とされてきました。裁判所が、どこまで州の主張を認めるのかが注目されます。
- 他州や企業の動き:カリフォルニアに続いて、同様の影響を受ける州や業界団体が連携してくる可能性もあります。訴訟の行方しだいでは、トランプ政権の関税戦略そのものに修正圧力がかかるかもしれません。
- 国際サプライチェーンへの影響:カリフォルニアは、アジアを含む世界との物流・デジタルビジネスのハブです。ここでの関税をめぐる攻防は、今後の国際貿易ルールやビジネス戦略を考えるうえで、アジアや日本の企業・投資家にとっても無視できないテーマです。
2025年も、世界経済は地政学的リスクと貿易摩擦のはざまで揺れています。カリフォルニア州による今回の提訴は、「関税は誰の負担となり、誰の利益を守っているのか」という問いを、あらためて国際社会に投げかけていると言えそうです。
Reference(s):
Why is California launching a lawsuit against Trump tariff hikes?
cgtn.com








