トランプ大統領、FRBパウエル議長の「解任」可能性に言及 独立性は揺らぐのか video poster
アメリカの中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)の独立性をめぐり、2025年に緊張が高まりました。ドナルド・トランプ米大統領がジェローム・パウエルFRB議長について「求めれば辞める」と発言し、金利政策への政治的圧力が世界の市場関係者の注目を集めています。
この記事のポイント
- トランプ米大統領がパウエルFRB議長の「解任」に言及し、利下げを強く要求
- 大統領にはFRB議長を直接解任する権限はなく、実現すれば近代では異例の事態
- 関税政策がインフレと雇用の板挟みを生み、FRBの難しい判断が続いている
トランプ大統領「頼めばパウエルは去る」―強まるFRBへの圧力
木曜日、トランプ大統領はホワイトハウスで記者団に対し、FRB議長のパウエル氏について「彼は、私が言えば辞める」「もし私が彼を辞めさせたいと思えば、すぐにそうなる」と述べ、不満をあらわにしました。パウエル氏が関税によるインフレ懸念に言及したことへの強い反発でした。
大統領はSNSのTruth Socialへの投稿でも、パウエル氏に対し利下げを繰り返し要求し、「解任は一刻も早く行われるべきだ」と主張しました。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、トランプ氏は数カ月前から側近らとパウエル氏の解任について私的な場で議論しており、フロリダ州マールアラーゴで元FRB理事のケビン・ウォーシュ氏らともこの話題を取り上げていたとされています。
トランプ氏は第1期政権時代に自らパウエル氏をFRB議長に指名しましたが、その後たびたび公の場で批判を繰り返し、「パウエル氏こそ政治的に振る舞っている」と非難してきました。
法律上、FRB議長は解任できるのか
FRBは、物価と雇用という2つの目標を追求する独立機関として位置づけられており、政治から距離を置いて政策判断を行うことが建前です。そのため、米大統領にはFRBの理事や議長を直接解任する権限はありません。
それでもトランプ氏は、パウエル氏を職から外す法的手続きを模索していると報じられています。大統領が解任に動くには、「職務怠慢」などの明確な理由(cause)を示し、時間のかかる手続きを経る必要があるとされます。
現代の米国政治において、現職のFRB議長を大統領が事実上解任した前例はなく、実際に動き出せば極めて異例の展開になります。
関税とインフレ、FRBの難しい選択
今回の対立の背景には、トランプ政権の関税政策があります。パウエル氏は水曜日の講演で、ほぼすべての主要な貿易相手に広がった大統領の追加関税がインフレを押し上げるおそれがあり、FRBが「インフレ抑制」と「雇用の維持」という二つの目標の間で難しい選択を迫られる可能性があると警告しました。
トランプ氏の関税方針は導入と撤回が繰り返され、世界の投資家や各国政府を不安にさせてきました。長期的な貿易戦略が見えにくい中で、企業は投資計画を立てにくくなり、国際貿易にも不透明感が広がっています。
一方、FRBは今年初めから政策金利を4.25〜4.50%のレンジに据え置き、利下げのタイミングについては「様子見」の姿勢を取ってきました。市場では、次の5月の会合でも金利が据え置かれる確率をおおむね3分の2と見込んでいたとされます。
トランプ氏はこうした慎重姿勢を「遅すぎる」と批判し、欧州中央銀行(ECB)が同じタイミングで預金金利を0.25ポイント引き下げたことを引き合いに出して、FRBも追随すべきだったと主張しました。
パウエル議長「任期を全うする」
パウエル氏は4月4日、米バージニア州でのイベントで「任期が終わる来年まで、職務を全うするつもりだ」と語り、途中で辞任する考えはないと明言しました。同時に、現在の高めの金利水準から拙速に利下げする考えもないと示唆しました。
FRBの使命は、物価の安定と最大限の雇用という2つの目標を同時に追求することです。政策金利の引き下げは企業や個人の借り入れをしやすくし、景気を下支えする効果がある一方で、物価上昇圧力を強めるリスクがあります。逆に金利を引き上げたり、高い水準を維持したりすることはインフレを抑えやすくしますが、景気や雇用には逆風となり得ます。
今年3月の米消費者物価は前年比2.4%上昇と、FRBが目標とする2%に近づきました。ガソリン価格が前年比6.3%下落したことも、物価上昇の鈍化を下支えしたとされています。
金利と政治、その先にあるもの
トランプ氏は8月のキャンペーン中、「ホワイトハウスも金融政策に発言権を持つべきだ」と述べ、FRBに対する政治的な関与を強める姿勢を示してきました。今回の発言は、その延長線上にあると見ることもできます。
しかし、FRBへの露骨な圧力が続けば、市場参加者が「長期的な物価安定よりも短期的な政治都合が優先されるのではないか」と疑い始めるおそれがあります。そうなれば、インフレ期待や金利、為替レートが不安定化し、かえって景気の不確実性を高めかねません。
FRB議長の進退をめぐる今回の攻防は、アメリカ国内だけでなく、日本を含む世界の投資家や企業にとっても無視できないテーマです。FRBの金利政策はドル相場や世界の資金の流れを左右し、日本の株価や円相場にも影響を与えます。
トランプ氏が本当にパウエル氏の解任手続きに踏み切るのか、またFRBが関税やインフレの動きをどう織り込みながら政策を運営していくのか。2025年のアメリカ経済と国際金融の行方を占う上で、今後も注視が必要な局面が続きそうです。
Reference(s):
Trump insists he could force out independent Fed Chair Powell
cgtn.com








