「靴を作るなら中国が最先端」関税50%でも工場を動かさない理由 video poster
フットウェア企業ヴィガラス・テクノロジーズの最高経営責任者(CEO)、ブライアン・ジェイミソン氏が、中国での靴の製造について「世界で最も進んだ場所だ」と評価し、米国の高関税やトランプ氏の予測しづらい政策にもかかわらず、工場を中国から移転する考えはないと語りました。グローバルなサプライチェーンを考えるうえで、示唆に富む発言です。
インタビューで何が語られたのか
ジェイミソン氏は、中国の国際メディアであるCGTNのインタビューで、自社の生産戦略について率直な見方を示しました。ポイントは大きく三つあります。
- 靴を製造する場所として、中国は「最も進んだ場所」だと評価していること
- 米国の対中関税が50%を超えると、それ以上引き上げても実務的な意味はほとんどないと見ていること
- トランプ氏の政策は非常に予測不能だが、それでも工場を中国から米国や他国に移す計画は現時点でないこと
2025年現在も続く世界経済の不確実性の中で、この3点は、企業がどのようにリスクと効率を天秤にかけているのかを示す一つのケースと言えます。
「靴を作るなら中国が最も進んだ場所」
ジェイミソン氏は、中国を靴づくりの現場として「最も進んだ場所」と表現しました。具体的な理由には触れていませんが、靴産業において生産設備、素材メーカー、人材などが一か所に集まりやすい環境があることが、こうした評価の背景にあると考えられます。
製造業にとって重要なのは、単に人件費の水準だけではありません。必要な部材がすぐ手に入ること、工程ごとのノウハウを持つパートナー企業が近くにいること、品質管理や大量生産に慣れた人材がいることなど、複数の要素が重なって初めて「作りやすい場所」になります。
ジェイミソン氏の発言は、こうした総合的な条件を踏まえてもなお、中国で靴を製造する利点が大きいという企業側の判断を示していると言えます。
関税50%超で「それ以上の引き上げに実務的な意味はない」
インタビューの中でジェイミソン氏は、米国の対中関税についても踏み込んだ見解を示しました。米国が中国から輸入される製品に課す関税が50%を超える水準に達した場合、それ以上の上乗せには実務的な意味がほとんどなくなると述べています。
関税は本来、輸入品の価格を引き上げ、国内産業を守るための仕組みです。しかし、ある程度以上の水準まで上がると、次のような状況が起こりがちです。
- 価格が高騰しすぎて、そもそもその商品を輸入・販売するビジネスが成り立たなくなる
- 企業が別のサプライヤーや別ルートを探し始めるため、関税を上げても税収はそれほど増えない
- 消費者や downstream(下流)産業にコスト負担がのしかかり、競争力がかえって低下する
ジェイミソン氏の「50%を超えると、それ以上の引き上げには実務的な意味がない」という指摘は、こうした現実的な制約を踏まえたものと考えられます。極端な関税は、政策としての象徴性はあっても、企業の行動を大きく変えない段階に達してしまうという見方です。
トランプ氏の政策は「予測不能」 それでも工場は中国に
ジェイミソン氏は、トランプ氏の政策について「非常に予測不能だ」とも述べました。関税や規制がいつ、どのように変わるのかが読みにくいという意味で、企業にとっては大きな不確実性となります。
それでも同氏は、現時点で工場を中国から米国や他の国・地域に移転する計画はないと明言しています。この判断の背景には、次のような企業側の計算があると考えられます。
企業が見ている「コスト」と「リスク」
- 移転コストの大きさ:工場設備の移設、新たな人材の採用・育成、サプライヤー網の再構築など、拠点を動かすには多大な時間と費用がかかります。
- 生産の安定性:既に稼働している工場では、品質管理や生産プロセスが安定しています。新たな拠点で同じレベルを出すには時間が必要です。
- 政策リスクの分散:ある国の政策が予測しにくいとしても、別の国に移転すれば別のリスクが生まれます。どこに移しても完全な「安全地帯」はない、という現実もあります。
ジェイミソン氏の発言は、こうした要素を総合的に見たうえで、「今は中国の工場にとどまる方が合理的だ」という企業の判断を映し出していると言えるでしょう。
グローバル・サプライチェーンに投げかけられた問い
今回のインタビューは、一社の経営者のコメントにとどまらず、グローバル・サプライチェーン全体に関わる問いを私たちに投げかけています。
- どこまで政治・外交リスクを織り込んで生産拠点を選ぶべきなのか
- 関税などの政策が変わるたびに、企業はどこまで柔軟に動けるのか
- 短期的なコストと、長期的な競争力のどちらを優先すべきなのか
ジェイミソン氏が示したのは、「高関税や政策の不確実性があっても、すぐに生産拠点を動かすとは限らない」という現実的な判断です。中国での靴づくりを「最も進んだ」選択肢とした同氏の姿勢は、効率性とリスク管理のバランスをどう取るかという、今のグローバル経済の核心的なテーマとも重なります。
あなたなら、自社の工場やサプライチェーンをどこに置くでしょうか。今回の発言は、その問いをあらためて考えるきっかけになりそうです。
Reference(s):
Footwear CEO: China is the most advanced place to make shoes
cgtn.com








