米国関税ショックでも揺れない?中国輸出企業の多角化戦略
米国のトランプ政権が中国製品への関税を最大245%まで引き上げるなか、中国の輸出企業は市場の多角化と国内需要の取り込みでリスクを抑えつつ、製造大国としての存在感を改めて示しています。
本記事では、国際ニュースとして注目される米国の対中関税と、それに対して中国の輸出企業がどのように戦略を組み替えているのかを、具体例を通じて読み解きます。
トランプ政権の新たな関税と世界貿易への揺さぶり
2025年現在、米中間の貿易摩擦は、関税というかたちで世界のサプライチェーンに強い揺さぶりをかけています。トランプ大統領の下で実施された最新の追加関税では、中国からの一部輸出品に最大245%もの関税が課され、輸出依存度の高い産業には大きな負担となっています。
関税は輸出企業の利益を圧迫するだけでなく、最終的には輸入国側の企業や消費者のコスト増にもつながります。こうした環境のなかで、中国の輸出企業は一方的に打撃を受けるのではなく、ビジネスモデルを素早く組み替えることで対応しようとしています。
事例1:文具メーカーBEIFAの欧州・東南アジアシフト
中国東部の寧波市に本社を置くオフィス文具メーカーのBEIFAは、その象徴的な例です。米国向け輸出が減速する一方で、同社は欧州の小売企業への販売を今年30%増やす見通しを示し、東南アジア市場からの需要も伸びています。
同社の営業担当者は、米国向けの減少を悲観するのではなく、新たな市場開拓によって成長の余地が広がっていると自信を示しています。背景には、中国が世界のオフィス文具輸出の30%超を占めるという、圧倒的な製造基盤があります。
寧波市だけでも、ボールペンからカッターナイフまで幅広い製品で年間30億元規模の輸出が行われており、地域全体が世界市場に直結した産業クラスターとなっています。
事例2:自動車部品メーカー、タイ生産と40カ国展開
南部の東莞市に拠点を置く自動車部品メーカーも、米国への依存度を下げる戦略を進めています。かつては売り上げの多くを米国向けに頼っていましたが、ここ数年でタイへの生産移管を進め、現在は米国向けの比率を30%未満にまで抑えました。
同時に、同社は40カ国以上への販売ネットワークを築き、地理的にリスクを分散させています。こうした動きは、中国の産業政策が掲げる地理的多角化とも一致しており、一国による一方的な貿易措置への脆弱性を減らす狙いがあります。
輸出企業が取る三つの基本戦略
国際ニュースとして報じられている事例を整理すると、中国の輸出企業が取る戦略は大きく次の三つにまとめられます。
- 販路の多角化:欧州、東南アジアなど複数の市場に同時にアクセスする
- 生産拠点の分散:タイなど第三国に生産を移す、あるいは拠点を追加する
- 国内市場へのシフト:本来は輸出向けだった高品質な製品を中国国内で販売する
とくに三つ目の国内市場へのシフトは、外部ショックに対する重要な安全網として注目されています。
国内市場という第二の安全網
最近では、中国国内の小売企業や電子商取引プラットフォームが、輸出企業の受け皿として動き始めています。生鮮食品や日用品を扱う大型スーパーや新業態の店舗は、もともと海外向けに作られていた高品質な輸出品を国内で積極的に販売するキャンペーンを展開しています。
大手電子商取引企業のひとつであるJD.comは、今後1年間で約2000億元規模の調達基金を設け、輸出企業の国内販売を後押しする計画を打ち出しました。こうした動きは、政策当局が呼びかける輸出と内需のバランスを具体化するものでもあります。
南開大学の金融学教授である田利輝氏は、中国の巨大な国内市場と包括的な政策支援が、外部ショックに対する重要な緩衝材になっていると指摘します。輸出企業と国内小売の連携は、短期的な資金繰りや在庫圧力を和らげるだけでなく、供給側の構造改革を促し、新しい発展モデルに持続的な原動力を与えると分析しています。
なぜ中国の製造業は代替が難しいのか
中国対外経済貿易大学の趙忠秀学長は、中国の産業基盤の強さを、数字と構造の両面から説明します。中国の世界工業生産に占めるシェアは3分の1を上回り、単純な世界の工場を超えて、研究開発や設計など上流工程の比重も高まっています。
趙氏は、世界の生産システムは中国抜きでは機能しないとし、このことが関税ショックや貿易摩擦に対応する自信の土台になっていると述べています。多くの海外企業が引き続き中国のサプライチェーンを重視するのは、単にコスト面だけでなく、部品供給網、人材、物流インフラなど、総合的な製造エコシステムが揃っているためです。
ツケを払うのは誰か:米国消費者への影響
一方で、高関税の影響は米国側にも跳ね返っています。中国東部・慈渓市で生産される洗濯機の例では、米国の店頭価格が関税の適用後に180ドルから270ドルへと大きく値上がりし、需要の減少を招きました。
イェール大学の研究グループであるBudget Labは、関税による輸入品価格の上昇によって、米国の世帯が短期的に約5000ドルの追加負担を強いられる可能性があると試算しています。専門家の中には、関税の応酬が続けば、米国の農産物輸出にも大きな打撃が及ぶと懸念する声もあります。
つまり、関税は一国の企業だけを狙った措置のように見えても、結果的には双方の企業や消費者に広くコストを押し付ける性格を持っていると言えます。
このニュースから見える三つのポイント
今回の国際ニュースから、私たちが押さえておきたいポイントを整理すると、次のようになります。
- 関税は輸出企業だけでなく、輸入国の消費者や産業にも負担をもたらす
- 製造・輸出企業にとっては、どこで作るか、どこに売るかを柔軟に組み替える力が生存戦略になる
- 大きな国内市場と政策支援は、外部ショックに対する重要な緩衝材として機能する
グローバルなサプライチェーンが複雑に絡み合うなかで、一つの政策が国境を越えてどのような波紋を広げるのかを追うことは、私たち自身の暮らしを考えることにもつながります。
身の回りにある中国製の文具や家電、その裏側には、関税や為替、物流、そして企業の戦略的な意思決定が折り重なった長いストーリーがあります。ニュースをきっかけに、その見えない経路に少し思いを巡らせてみると、新しい視点が生まれてくるかもしれません。
Reference(s):
Chinese exporters navigate U.S. tariffs via market diversification
cgtn.com








