トヨタが上海に約20億ドルEV工場 中国NEV市場で存在感強化へ
日本の自動車大手トヨタ自動車が、上海市と戦略協力協定を結び、同市金山地区に電気自動車(EV)工場を新設することになりました。総投資額は146億元(約20億ドル)に上り、高級車ブランド レクサスのEVと車載電池の研究開発・生産・販売に特化した拠点となる予定です。
世界最大級の自動車市場である中国で、トヨタがEVへの本格投資に踏み出した今回の動きは、日本企業にとっても、世界の新エネルギー車(NEV)競争の現在地を映し出すニュースと言えます。
トヨタの上海EV工場、その概要
トヨタは上海市政府と締結した戦略協力協定の中で、同社として初の上海における完全子会社型のEV工場を設立するとしています。プロジェクトは金山地区のNEV事業として位置づけられ、レクサスブランドのEVとEV用電池に焦点を当てます。
- 投資額:146億元(約20億ドル)
- 所在地:上海市金山地区
- 事業内容:レクサスEVと車載電池の研究開発・生産・販売
- 新規雇用:立ち上げ段階で約1000人を見込む
トヨタは具体的な生産能力を今回明らかにしていませんが、今年2月には初期の年間生産能力を約10万台とする計画を示していました。今回の新工場は、中国のEV市場向けに研究開発と生産体制を強化する重要な一歩と位置づけられています。
現地パートナーである上海欣金山産業投資発展の彭錫軍総経理によると、第1期用地として1692ムー(約112.8ヘクタール)を取得済みです。計画では2025年6月に着工し、2027年に生産を開始する見通しが示されています。
カーボンニュートラルのモデル拠点をめざす
トヨタ中国本部の最高経営責任者であり、トヨタ自動車(中国)投資の董事長を務める上田達郎氏は、このプロジェクトについて、革新的な技術を導入し、中国および世界に影響力を持つカーボンニュートラルのモデルプロジェクトを構築すると強調しました。
上田氏はさらに、より多くの現地サプライヤーと協力し、中国のNEV産業チェーンの競争力を世界に示すとともに、中国発の技術を国際市場で広く活用していきたいとの考えを示しています。
協定では、完成車の生産にとどまらず、産業チェーンの上流から下流までの幅広い分野で連携を進める方針も盛り込まれています。知能運転や水素エネルギー、車載電池のリサイクル・再利用、物流やサプライチェーンなど、今後の自動車産業の鍵となる領域での協力が想定されています。
上海が狙う世界級NEVクラスター
今回のトヨタの投資は、テスラの上海ギガファクトリーに続く、上海における世界的に影響力のあるNEVプロジェクトと位置づけられています。上海市にとっては、ハイレベルな開放を拡大し、世界クラスのNEV産業クラスターの形成を加速させるという戦略を具体化する一歩です。
彭氏は、新工場が金山地区の自動車産業チェーンを補完し、産業の高度化につながると述べています。その波及効果は上海市だけでなく、長江デルタ地域全体の自動車部品サプライヤーにも広がると見込まれています。
拡大を続ける中国NEV市場と多国籍企業
背景には、中国のNEV産業の急速な成長があります。技術革新の加速と、グリーン成長や持続可能な転換を重視する政府方針という二つのエンジンが相乗効果を生み、市場の需要と産業の拡大を一気に押し上げてきました。
中国汽車工業協会によると、今年第1四半期のNEV販売台数は前年同期比47.1パーセント増の308万台となり、同期間の自動車販売全体の41.2パーセントを占めました。世界の大手自動車メーカーにとって、中国のNEV市場は無視できない規模に達していることがわかります。
中国国際貿易経済合作研究院の白明研究員は、トヨタの投資拡大は、多国籍企業が中国市場でのプレゼンスを一段と深めている流れの一例だと指摘します。公式統計によれば、2025年1〜3月期に新たに設立された海外投資企業は1万2603社で、前年同期比4.3パーセント増となりました。白氏は、こうした数字は中国市場が依然として海外企業にとって高い魅力を保っていることを示しているとみています。
実際、2025年に入ってからも、自動車関連の大型プロジェクトが相次いでいます。米テスラは2月、エネルギー貯蔵用電池メガパックを生産する上海の新メガファクトリーで操業を開始しました。これは同社にとって上海で2拠点目となる施設であり、米国外では初のメガパック専用工場です。3月には、独BMWが中国のIT大手ファーウェイと提携し、中国市場向けの車載デジタルエコシステムを共同開発すると発表。さらにフォルクスワーゲングループは、中国の第一汽車と戦略協力協定を締結し、2026年から中国市場向けに11車種(うち10車種がNEV)を投入する計画を打ち出しています。
日本の読者が押さえておきたいポイント
こうした動きは、日本の自動車産業やビジネスに関わる読者にとって、いくつかの示唆を与えてくれます。ポイントを整理すると次の通りです。
- トヨタは約20億ドルを投じ、レクサスEVと電池に特化した新拠点を上海に設けることで、EV分野での現地開発・生産能力を高めようとしている。
- 上海はテスラやトヨタなどを軸に、世界級のNEV産業クラスター形成をめざしており、長江デルタ一帯のサプライチェーンにも影響が及ぶ可能性がある。
- 中国のNEVは新車販売の4割超を占める規模に成長しており、多国籍企業はこの市場を前提とした製品戦略やデジタルサービスの開発を進めている。
- 2027年の量産開始を目標とするトヨタの新工場の進捗や、現地サプライヤーとの協業の中身は、日本企業の今後の海外戦略を考えるうえでも注目材料になりそうだ。
電動化やカーボンニュートラルへの移行が世界的な潮流となるなかで、中国市場をどう位置づけ、どのようなかたちで現地との協働を深めていくのか。トヨタの上海EV工場計画は、その問いに対する一つの答え方として、これからもフォローしていく必要がありそうです。
Reference(s):
cgtn.com








