メキシコ大統領、トランプ氏と関税協議も「合意なし」と説明
メキシコのクラウディア・シェインバウム大統領は8日、ドナルド・トランプ米大統領との先週の電話会談で、鉄鋼・アルミ・自動車製品への関税を巡り合意には至らなかったと明らかにしました。メキシコ政府は、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)と世界貿易機関(WTO)のルールを足がかりに、関税発動の回避を目指しています。
関税巡る電話会談、「議論は続いている」
シェインバウム大統領は、首都の国立宮殿で開かれた定例の午前会見で、先週行われたトランプ大統領との電話協議の内容に言及しました。
協議では、
- 鉄鋼
- アルミニウム
- 自動車関連製品
に対する米国の関税(輸入税)の是非が中心的なテーマになったと説明しています。
大統領は「鉄鋼、アルミ、自動車製品への関税の問題を議論したが、合意には至っていない」としたうえで、関税の発動を防ぐための論拠を米側に示し続けていると強調しました。
メキシコの主張:「鉄鋼とアルミは米国が黒字」
シェインバウム大統領によると、メキシコ側は鉄鋼とアルミニウムについて、「メキシコは赤字」、つまり米国からの輸入が輸出を上回っていると説明しています。言い換えれば、
- 米国はメキシコに対し、鉄鋼とアルミを多く輸出している
- メキシコから米国への輸出量は、それより少ない
という構図だと指摘している形です。
そのうえでメキシコ側は、赤字側にある自国に対して関税をかけることは、貿易の実態から見ても正当化しづらいと訴えているとみられます。関税が発動すれば、両国間の鉄鋼・アルミ取引だけでなく、自動車産業を含む幅広いサプライチェーンに波紋が広がる可能性があります。
USMCAとWTO、「二つのルート」で対応
シェインバウム大統領は、関税問題に対してメキシコには二つの対応ルートがあると説明しました。それが、
- 米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)
- 世界貿易機関(WTO)のルール
です。
USMCA:北米の自由貿易ルール
USMCAはいわゆる北米の自由貿易協定で、3か国間の関税や貿易紛争のルールを定めています。メキシコとしては、この協定に基づき、唐突な関税引き上げが協定の精神や条文に反しないかを問うことができます。
WTOの「最恵国待遇」原則
もう一つのルートが、WTOの「最恵国待遇」条項です。最恵国待遇とは、ある国に認めた有利な待遇を、原則として他の加盟国にも広く適用し、特定の相手だけ不利に扱わないよう求めるルールです。
シェインバウム大統領は、こうした国際ルールを踏まえて「関税の導入を止めるための論拠を提示している」と述べており、メキシコ政府は法的・外交的な両面から米側との交渉を続ける構えを示しています。
国境をまたぐ環境問題でも協議
通商問題と並行して、メキシコ政府は環境問題でも米国と協議を進めています。大統領によると、アリシア・バルセナ環境・天然資源相が米カリフォルニア州サンディエゴを訪問し、米国環境保護庁(EPA)の担当者と会談しています。
協議のテーマは、メキシコの国境都市ティファナから太平洋に流れ込む下水・汚水の問題です。この問題は、
- 海洋汚染や沿岸の生態系への影響
- 両国の沿岸地域の住民の健康や生活への打撃
などにつながる懸念があり、国境をまたぐ環境課題として長く議論されてきました。今回の会談は、この問題に対する両国の協力のあり方を改めて探る場となっています。
貿易と環境、二つの軸から読む今回の動き
今回の発言から浮かび上がるのは、メキシコが米国との関係を「貿易」と「環境」という二つの軸で同時にマネジメントしようとしている姿です。
一方では、鉄鋼・アルミ・自動車への関税という、実体経済に直結する通商問題で強く主張しつつ、他方では、国境を越える下水問題という生活に密着した環境課題で協調の余地を探っています。
関税が現実になれば、北米全体のサプライチェーンや企業の投資判断にも影響しかねません。他方で、環境問題での協力は、地域の安定と住民生活の改善に直結します。メキシコと米国の間で進むこうした複線的な交渉は、2025年の国際情勢を考えるうえで、通商と環境を切り離せないテーマとして捉える必要があることを示しています。
Reference(s):
cgtn.com








