世界銀行総裁「関税引き下げは皆に利益」 新興国貿易と地域統合に期待
世界銀行グループのアジャイ・バンガ総裁は、2025年春季会合で「関税の引き下げは誰にとってもプラスだ」と強調し、新興国同士の貿易拡大と地域統合の重要性を訴えました。
世界銀行総裁「関税引き下げは皆に利益」
バンガ総裁は、今年開催された世界銀行グループ(WBG)と国際通貨基金(IMF)の2025年春季会合中のイベントで発言しました。過去10年間を振り返り、「世界で締結されている二国間および地域レベルの貿易協定の数は、多くの人が注目している以上に多い」と述べ、目立たないところで貿易のルールが大きく変化していると指摘しました。
CPTPPとRCEPが変えたアジア太平洋の貿易
総裁が例に挙げたのが、アジア太平洋地域の二つの大型貿易協定、包括的及び先進的環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)と地域的な包括的経済連携(RCEP)です。いずれも過去10年の間に複数の国・地域が参加して結ばれた協定であり、「これらの枠組みが、参加国の貿易のあり方を変えている」と評価しました。
新興国同士の貿易が拡大、「未開拓の潜在力」も
バンガ総裁は、先週開かれた記者会見でも、より深い地域統合には「未開拓の潜在力」があると強調していました。新興国や開発途上国同士の貿易は急速に伸びており、これらの国からの輸出の約半分が、今では他の新興市場向けになっていると指摘しました。
総裁は、域内連携を強めることで次のような効果が期待できると説明します。
- 国境手続きの効率化
- 貿易コストの削減
- 摩擦の少ない通関や規制運用
- 原産地規則(どこで生産されたかを定めるルール)の明確化
こうした改善が進めば、貿易量の増加だけでなく、景気変動に左右されにくい、より安定的で多様な成長が可能になるとしています。
高い関税が招く「報復関税」と競争力低下のリスク
一方で、多くの開発途上国が依然として先進国より高い関税水準を維持していることにも警鐘を鳴らしました。特に重要な輸入品で数ポイント高い関税を課しているケースが多く、「これが『報復関税』を招き、国際競争力を失う現実的なリスクがある」と述べました。
そのうえで、特定の「お気に入りの相手国」だけでなく、幅広い相手との関税引き下げを含む貿易自由化を進めることが、こうしたリスクの相殺と市場アクセス拡大につながると主張しました。歴史を見ても、より開かれた経済は成長スピードが速く、景気のショックにも強い傾向があると指摘しています。
不確実性の高まりと、対話の必要性
現在の世界経済について、総裁は「不確実性と変動の大きさが、各国の政府や企業を慎重にさせている」と話し、保護主義に傾くのではなく、貿易問題について交渉と対話を続けるよう各国に呼びかけました。
日本とアジアへの示唆
サプライチェーンを通じて世界と深く結びつく日本やアジア太平洋の国・地域にとって、今回のメッセージは、「どこまで市場を開き、どのような形で地域協定を活用するか」という問いを改めて突きつけるものです。
関税や国境手続きは、一見すると専門的で遠い話に聞こえますが、最終的には物価、雇用、企業の投資判断など、私たちの日常にも影響します。バンガ総裁の発言は、地域統合や貿易自由化のあり方をめぐる議論が、2025年以降も重要なテーマであり続けることを示しているといえます。
Reference(s):
cgtn.com








