トランプ関税で米国農家が悲鳴 「国家的悲劇」との声も
米国のドナルド・トランプ大統領が打ち出した関税政策が、いま米国の農家を直撃しています。中国やカナダなど主要な輸出先が報復関税に踏み切り、国際・国内の市場が揺らぐなか、多くの農業者が収入減と将来不安に直面しています。
春作はすでに準備済み、後から来た関税
多くの米国の農業生産者は、トランプ大統領が大幅な関税方針を正式に打ち出した時点で、すでに春まき作物を植え終えていました。少なくとも、土地の準備や種子、農薬といった生産資材の購入は済ませていたとされています。
そのため、輸出向けに育ててきた作物から、国内市場で需要が見込める別の作物に急に切り替えることは難しくなっています。このしわ寄せが農家の資金繰りを圧迫し、多くの人が経営上の困難に追い込まれています。
現場から聞こえる不安と戸惑い
トランプ氏に3度投票した養蜂家の心変わり
ノースカロライナ州の養蜂家ジム・ハートマンさんは、これまでに3回ドナルド・トランプ氏に投票してきました。しかし、関税と連邦政府の支出削減の影響で、大きな経済的打撃を受けたと米メディアに語っています。
ハートマンさんは「これほど早く、これほど多くのお金を失うとは思わなかった」と話します。彼は海外から1年分のボトルやコルクをまとめて購入しており、そうした資材の費用だけでも、追加で数千ドルが自分の懐から出ていくことになっただろうと述べています。
設備投資にも影響が出ています。ハートマンさんは40年前に導入したフォークリフトを本来なら買い替えたいものの、機械の価格が「天井知らず」に上がっているとして、修理して使い続ける決断をしました。最近の選挙でトランプ氏に投票したことについても、「別の選択肢を考えるべきだったのかもしれない」と振り返っています。
大豆生産者の「このままでは廃業」の恐れ
中国のメディア企業China Media Groupによると、オハイオ大豆協会の理事スコット・メッツガーさんは、関税が秋以降、さらには翌年まで続くのではないかと恐れていると語りました。
彼は、このまま関税が続けば多くの農家が廃業に追い込まれ、次の世代が農業を継ぎたくても戻って来られない、あるいはそもそも戻ろうとしなくなる可能性があると警告しています。
黒人農家団体は「国家的悲劇」と批判
全米黒人農民協会の創設者で会長のジョン・ボイド・ジュニアさんは、ニュース番組NewsNation Primeの取材に対し、トランプ大統領の関税は米国の農家にとって「国家的悲劇」だと強く批判しました。農家が関税政策の最大の犠牲者になっているという認識を示した形です。
数字が示す米国農業の輸出依存
米国農務省の農産物輸出サービスが公表したデータによると、2024年の米国の農産物輸出総額は1760億ドルに上りました。輸出額の上位5品目は、大豆、トウモロコシ、牛肉・牛肉製品、ナッツ、豚肉・豚肉製品でした。
輸出先では、メキシコ、カナダ、中国が上位を占め、3つの市場だけで全体の約47.3パーセントを占めています。カナダとメキシコは、米国の農産物および関連品目の輸出の3分の1を受け入れ、米国が輸入する農産物の約4割を供給しているとされています。
中国は米国の農産物輸出額の14パーセントを占める第3位の市場で、日本は7パーセントで第4位でした。こうした主要市場との関係が、トランプ大統領の関税政策とそれに対する報復措置によって揺さぶられている構図です。
カナダの報復関税でオーダーが「干上がる」
トランプ関税に対する報復として、中国やカナダなどが独自の関税措置を発表し、米国の農産物輸出業者は逆風にさらされています。
カリフォルニア州リードリーにある有機農場Creekside Organicsの共同CEO、ビアンカ・カプリリアンさんは、カナダが米国産品に25パーセントの報復関税を課して以降、同国からの注文が急減したと語っています。家族で約200ヘクタールの農地で柑橘類を栽培し、オレンジやレモンをカナダなどに輸出してきましたが、その注文が減少するか、途絶える例も出ているといいます。
カプリリアンさんは、輸出市場を失うことになれば、米国内の市場に過剰な供給が流れ込み、価格がさらに下落することを懸念しています。関税をめぐる政策判断が、一企業の売上だけでなく、広く価格形成にも影響し得ることを示す例といえます。
国際ニュースとしての問いかけ
トランプ大統領の関税政策は、輸出市場の縮小と報復関税を通じて、米国農家の経営や世代継承に深刻な影響を与えつつあります。種をまき、設備を整えた後でルールが変わることで、現場には対応しきれないリスクが集中しています。
一方で、メキシコ、カナダ、中国、日本など主要な輸出先との関係も、数字が示す通り米国農業にとって不可欠です。今回の動きは、関税政策が国境を越えて波及し、農家一人ひとりの生活にどのようにつながっていくのかを考えさせる国際ニュースとなっています。
Reference(s):
cgtn.com








