中国の民営経済促進法とは?9章78条の主な支援策を整理
中国で2025年5月20日に施行された民営経済促進法は、民間セクターの成長を後押ししつつ、公平で透明なビジネス環境を整えることを目的とした包括的な法律です。本記事では、その主な措置とねらいを整理します。
民営経済促進法の位置づけ
この法律は、全国人民代表大会常務委員会の立法工作委員会によれば、足元の経済情勢への対応であると同時に、中国の社会主義市場経済を強化するための重要な一歩とされています。
法律は全9章78条で構成され、次のような基本方針を打ち出しています。
- 民営経済を社会主義市場経済の重要な構成部分として明確に位置づける
- 民営企業が中国式現代化で大きな役割を果たすことを強調する
- 市場に資源配分の決定的な役割を持たせつつ、政府の積極的な支援も組み合わせる
- 民営経済の持続的・健全かつ高品質な発展を、長期的な重要国策とする
背景には、世界第2の経済大国である中国が、外部環境の不確実性が高まる中でも、高品質な成長を維持したいという狙いがあります。
公平な競争環境の確保
この法律の中核となる章の一つが、公平競争の徹底です。民営企業を含むあらゆる経済主体が公平に競争できるよう、次のような仕組みを定めています。
- 民営企業が、ネガティブリストで明示的に制限された分野を除き、他の主体と同様にあらゆる産業分野に参入できるようにする
- 行政措置が競争を不当に制限しないか事前・定期的に点検する公平競争審査制度を義務づける
- 参入障壁を見直し・撤廃することで、不合理な規制や差別的な取り扱いを是正する
こうした規定によって、民営企業が国有企業などと同じ土俵で競争しやすくなり、市場全体の効率性と活力を高めることが期待されています。
投資・資金調達環境の最適化
民営企業が成長するには、資金調達のしやすさと予測可能な制度環境が欠かせません。法律は投資・金融の面で次のような改善を図ります。
- 各種手続きや規制対応にかかる制度的な取引コストを引き下げる
- 民営企業の資本市場へのアクセスを高め、資金調達手段を多様化する
- 民営企業による国家の重点プロジェクトへの参加を奨励する
- 金融サービスを改善し、民営企業向けの金融支援を充実させる
これにより、成長中の企業が資金不足で機会を逃すリスクを減らし、より多くの民間投資を呼び込む狙いがあります。
技術イノベーションの推進
法律は、技術革新を民営セクター成長のエンジンと位置づけています。特に能力のある民営企業が、国家レベルの科学技術研究開発プロジェクトを主導することを明確に支援しています。
そのために、次のような措置が盛り込まれています。
- 民営企業が国家の主要な科学研究インフラを利用しやすくする
- 知的財産権の保護を強化し、研究成果を守る仕組みを整える
- イノベーションに取り組む民営企業への支援策を拡充する
民営企業は既に中国の技術イノベーション成果の7割以上を生み出しているとされ、この法律はその動きをさらに後押しする位置づけです。
民営資本の健全な発展とガバナンス
民営経済促進法は、資本の拡大だけでなく、その質とガバナンスにも踏み込んでいます。民営企業に対して次のような方向性を示します。
- 透明性と説明責任のあるガバナンス体制を構築する
- 内部の財務制度を改善し、健全な会計管理を行う
- 腐敗防止(コンプライアンス)に取り組み、不正を防ぐ仕組みを整える
こうした規定は、民営企業が持続的に成長し、国内外の利害関係者からの信頼を高めることを狙っています。
行政手続きの簡素化と政府支援
政府の役割についても、法律は具体的な支援策を定めています。ポイントは、行政と企業の関係を管理する側とされる側から、対話と支援に近づけることです。
- 各レベルの政府機関と民営企業との間に、意見交換や問題解決のためのコミュニケーションメカニズムを設ける
- 規制や制度設計を行う際に、民営企業の実際のニーズを反映させる
- 恣意的な手数料・罰金・検査の撤廃など、効率的な行政運営を義務づける
- 人材へのインセンティブ制度を整え、企業活動に関わる各種手続きを円滑にする
- ビジネス上の契約や支払いの保護を強化する
これにより、企業側の予見可能性が高まり、長期的な投資や雇用計画を立てやすくなると見込まれます。
民営企業の権利保護を明文化
法律の第7部分では、民営企業の権利保護が体系的に規定されています。対象となるのは、個人の権利、財産権、経営の自由などです。
とくに次のような政府行為を明確に禁じています。
- 根拠のない各種徴収や不当な罰金
- 法的根拠を欠く寄付や拠出の強要
- 企業活動への不当な干渉
こうした法的保護により、民営企業が安心して事業を展開できる環境をつくり、より多くの民間投資を促すことが狙われています。
中国経済にとっての意味
民営企業は、中国の外貿や税収の半分以上を担い、都市部の雇用の8割超を創出しているとされています。技術イノベーションの面でも、成果の7割以上を民営企業が生み出しています。
一方で、中国経済は外部ショックの影響が強まる中で、力強い回復の維持が課題となっています。その中で、製造業、デジタル経済、グリーン技術など多くの分野で重量級となっている民営セクターをさらに活性化することは、持続的な景気回復を支える鍵と位置づけられています。
2025年5月に施行された民営経済促進法は、こうした民営企業の役割を制度面から後押しする枠組みとして、今後の中国経済の行方を考えるうえで注目すべき法律と言えます。
Reference(s):
What measures are stipulated in China's private sector promotion law?
cgtn.com








