米国経済が2025年1〜3月期にマイナス成長 トランプ関税でリセッション懸念
米国経済が2025年1〜3月期(第1四半期)に年率マイナス0.3%と縮小しました。トランプ政権による新たな関税政策の影響で不確実性が高まり、景気後退(リセッション)への懸念が強まっています。
2025年1〜3月期、年率マイナス0.3%の衝撃
米商務省の米経済分析局(BEA)が公表した速報値によると、実質国内総生産(GDP)は2025年第1四半期に年率換算で0.3%減少しました。これは、2024年10〜12月期の2.4%成長からの明確な減速です。
報告書によれば、実質GDP減少の主因は次の2点でした。
- 輸入の増加(GDP計算上はマイナス要因)
- 政府支出の減少
一方で、企業の投資、個人消費、輸出は増加し、下押し圧力の一部を相殺しました。
純輸出が記録的なマイナス寄与
とくに目立つのが純輸出(輸出から輸入を引いたもの)の悪化です。純輸出は成長率を4.83ポイント押し下げ、統計がさかのぼれる過去半世紀以上で最大のマイナス要因となりました。
企業が将来のさらなる関税引き上げを懸念し、前倒しで輸入を増やした結果、輸入が急増したとみられます。輸入は国内で生み出された付加価値ではないため、GDP計算上はマイナスの寄与となります。
個人消費は減速、政府支出も縮小
米経済の約3分の2を占める個人消費は、第1四半期に年率1.8%増と、2024年10〜12月期の4.0%増から大きく減速しました。それでも成長率に1.21ポイントのプラス寄与となり、景気の下支え役であることは変わりません。
一方、連邦政府支出は5.1%減少し、成長率を0.33ポイント押し下げました。歳出削減や効率化を掲げる政策が、短期的にはマイナスの影響を与えた格好です。
景気後退はまだか それとも悪循環の入り口か
米金融大手ウォルズ・ファーゴのエコノミストは分析で、今回の0.3%減はリセッション入りそのものではないとしつつも、リスクは高まっていると指摘しました。彼らは、今回の成長率悪化は、過去半世紀以上で最大の純輸出のマイナス寄与をもたらした貿易政策の急変を反映していると分析しています。
ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジの米国政治センターで上級研究員を務めるジェームズ・ボーイズ氏は、11月の大統領選の結果にかかわらず、もともと米経済はリセッションに向かうと予想されていたと話します。そのうえで、今回の0.3%のマイナス成長はホワイトハウスにとって好ましくない数字であり、トランプ政権がパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長に対して利下げ圧力を強める材料になるだろうと見ています。
中国現代国際関係研究院のマクロ経済・戦略研究所の副所長を務める魏亮氏は、トランプ政権の現在の国内外政策について、関税の乱用や歳出削減、いわゆる政府効率化策を特徴とする攻撃的かつ無謀なものだと批判。その結果として生じている景気減速は、容易には反転しないと指摘しました。
魏氏は、ワシントンがこうした関税や緊縮策などの政策を改めない限り、経済は悪化を続け、パニックと景気後退が互いに増幅し合う悪循環に陥るおそれがあると警鐘を鳴らしています。
トランプ政権復帰後の「混乱の100日」
トランプ大統領がホワイトハウスに戻ってからの最初の100日間をめぐっても、厳しい評価が相次いでいます。元米財務長官でハーバード大学教授のローレンス・サマーズ氏は、Xへの投稿で、この100日間は過去100年で最も成果に乏しい経済運営だったと痛烈に批判しました。
サマーズ氏は、株式市場やドル相場の下落、失業率とインフレ率の予測上昇、リセッション確率の上昇、消費者マインドの悪化、企業による業績見通しの下方修正や撤回などを挙げ、米経済にとって「惨憺たる100日」だったと述べています。
ミシガン大学のエコノミストであるジャスティン・ウォルファーズ氏も、トランプ大統領の復帰前には約10%程度と見ていたリセッションの確率が、現在は55%程度まで高まっていると指摘しました。その主因として、ホワイトハウスから生じる政策の混乱を挙げています。
企業と投資家を覆う不確実性
米企業の決算発表でも、不確実性の高さがにじみ出ています。米主要株価指数の構成銘柄であるS&P500企業の約半数が最新の四半期決算を公表していますが、市場の焦点は足元の実績というより、関税や消費者行動の変化にどう対応するかに移っています。
米メディアによると、トランプ政権の関税政策は、導入と撤回、延期が繰り返されており、企業にとっても投資家にとっても先行きが読みづらい状況が続いています。輸出入に関わる企業は、価格設定やサプライチェーンの見直しを迫られ、計画的な投資が難しくなっています。
トランプ大統領は、米国の主要な貿易相手国からの輸入品に幅広く関税を課してきました。対象となった国や地域の多くは報復関税で応じており、世界の貿易システムにも揺らぎが生じています。一方で、一部の関税は延期または見直されており、政策の方向性が読みづらいことも市場の不安要因となっています。
日本やアジアの投資家にとってのチェックポイント
日本を含むアジアの投資家や企業にとって、米国経済の先行きは自国経済や金融市場にも直結します。注視したいポイントは次の通りです。
- 今後の関税発動・撤回のスケジュールと対象品目
- FRBの金融政策と金利動向
- 米国の個人消費と企業マインド(信頼感)の動き
- 企業の設備投資や在庫調整の方向性
こうした要因が組み合わさることで、為替相場や株式市場、債券市場に波及し、日本企業の業績や家計の資産形成にも影響を与える可能性があります。
二四半期連続マイナスならテクニカル・リセッションに
魏亮氏は、トランプ政権が現在の政策路線を転換しない限り、第2四半期も米経済は不調が続き、二四半期連続のマイナス成長となる可能性が高いと見ています。そうなれば、統計上はテクニカル・リセッションと呼ばれる状態に入ることになります。
テクニカル・リセッションとは、実質GDPの成長率が二四半期連続でマイナスになる状態を指す用語です。必ずしも深刻な不況を意味するわけではありませんが、企業や家計のマインドに影響しやすく、実体経済をさらに冷やすきっかけにもなり得ます。
魏氏は、こうした状況が続けば、消費と投資が一段と抑制され、市場参加者の悲観的な見通しが強まることで、景気が単なるテクニカル・リセッションから本格的な景気後退、さらには金融システムに波及する危機へと発展するリスクもあると警告しています。
データと政策の行方を丁寧に追う時期
2025年初めの米国経済は、関税政策と金融政策、そして企業と家計の心理が複雑に絡み合う難しい局面に入っています。今回のマイナス成長は、単なる数字のブレではなく、貿易政策の急変と不確実性の高まりが、実体経済に影を落とし始めていることを示しています。
日本の読者にとって重要なのは、米国発の景気減速や政策の揺らぎが、輸出や投資、金融市場を通じてどのように波及し得るのかを冷静に見極めることです。見出しだけで楽観や悲観に振れ過ぎるのではなく、GDPや雇用、物価、企業決算などのデータと、トランプ政権の政策運営の両方を丁寧に追う姿勢が求められます。
米国経済の行方は、日本やアジアの経済・マーケットにも長く影響し得るテーマです。2025年の数字と政策の一つ一つが、今後数年の世界経済の風向きを左右するかもしれません。
Reference(s):
U.S. economy shrinks in Q1 amid Trump tariffs, recession concerns grow
cgtn.com








