米国の小口免税終了と中国対外貿易企業 越境ECショックと内需シフト
米国の小口免税終了が突きつけた現実
2025年5月2日、米国は中国と香港特別行政区からの800ドル未満の小口荷物に対する免税措置を正式に終了しました。国際ニュースとしても注目されたこの政策変更は、越境EC(電子商取引)の物流コストを一気に押し上げ、多くの中小の対外貿易企業にとって存続が揺らぐほどの衝撃となりました。
何が変わったのか:800ドル未満の免税撤廃
これまで米国では、800ドル未満の小口荷物については関税がかからない制度があり、中国や香港特別行政区からの越境ECにとって重要な前提条件になっていました。5月2日以降、この優遇は打ち切られ、同水準の荷物にも関税が課されるようになっています。
その結果、米国の消費者向けに直接商品を発送してきた企業のコスト構造は一変しました。特に、価格競争力を武器にしてきた小口配送型のビジネスには、大きな負担となっています。
越境ECと中小企業への打撃
今回の措置によって物流コストが急騰し、薄い利幅で運営してきた中小の対外貿易企業は厳しい岐路に立たされています。1件ごとの荷物にかかる税負担や手続きが増えることで、従来のビジネスモデルのままでは採算が合わなくなるケースも出てきています。
こうした状況は、一部の企業にとっては「存在そのものへの脅威」となり、米国市場への依存度を下げつつ、新しい販路や収益源を模索せざるを得ない局面を生んでいます。
中国商務部が主導する「内外貿一体化」
関税ショックに直面する中で、中国の商務部は国内貿易と対外貿易を一体的にとらえる「内外貿一体化」の取り組みを進めています。ここでは、米国の「相互関税」措置に対して、構造的な対応を目指す動きが見られます。
インターネットプラットフォーム、小売大手、ライブ配信を活用するEC事業者、そして対外貿易企業が協力し、輸出中心だった企業が国内市場や別の販路にスムーズに移行できるよう支えることが狙いです。
輸出から国内販売へ:巨大な内需市場という「バッファ」
対応策の第一の柱は、輸出中心のビジネスから国内販売への転換です。中国の巨大な国内市場は、対外貿易企業にとってショックを吸収する重要なバッファ(緩衝材)として機能し得るからです。
アリババ、JD.com、メイトゥアンといったプラットフォームは、「優質出口商品」と呼ばれる輸出向けの高品質商品に対して出店の門戸を開き、オンラインとオフラインを組み合わせた販売の場を用意しています。これにより、これまで主に海外の消費者に向けて販売されていた商品が、比較的短い時間で国内の消費者にも届くようになっています。
デジタルデータで「売れる商品」を見極める
とはいえ、長年海外向けに商品を企画・生産してきた企業が、すぐに国内の消費トレンドを読み切るのは簡単ではありません。そこでECプラットフォームは、リアルタイムの販売データや分析レポートを提供することで、各企業が国内市場に適した商品カテゴリーを見つけやすくする支援を行っています。
こうしたデータに基づく支援は、「どの商品に力を入れるべきか」という判断ミスを減らし、在庫リスクやマーケティングの無駄を抑えることを目指したものです。デジタル技術を活用して、市場とのミスマッチをできるだけ小さくする狙いがあります。
ブランドづくりまで含めた包括支援
支援はデータ提供にとどまりません。必要とする対外貿易企業に対しては、オンライン店舗のデザイン、ブランドのストーリー作り、プラットフォーム内外を使った統合マーケティングなど、ブランド構築をトータルでサポートする取り組みも進んでいます。
これは単に「行き場を失った輸出品を国内でさばく」という発想ではなく、新たなブランドとして国内の消費者に選ばれる存在へと育てていく視点に立ったものだといえます。
2025年の米国関税ショックから何を学ぶか
今年5月の小口免税措置の終了は、2025年の国際ニュースの中でも、越境ECと対外貿易のあり方を問い直す出来事となりました。打撃を受けた企業が、巨大な国内市場やデジタルプラットフォームをどこまで活用できるかが、今後の競争力と生き残りを左右しそうです。
日本を含むアジアの企業にとっても、特定市場への依存が高いビジネスモデルのリスクや、データ活用とプラットフォーム連携による販路転換の可能性を考えるうえで、注視すべき動きだといえます。米国の政策変更にどう対応するかという一点を超えて、企業の柔軟性とデジタル対応力が試されているともいえるでしょう。
Reference(s):
Chinese foreign trade enterprises respond to US 'reciprocal tariff'
cgtn.com








