トランプ関税に米国内で反発拡大 ハリス氏・イエレン氏・企業が警鐘
トランプ大統領が打ち出した大規模関税をめぐり、ハリス前副大統領やイエレン前財務長官、州政府、ビジネス団体が相次いで反発し、米国経済の先行きに不安が高まっています。本記事では、2025年に本格化した「トランプ関税」をめぐる動きを整理します。
米国で高まる「反トランプ関税」の声
トランプ大統領は今年4月2日、主要な貿易相手国に対し「相互主義」を掲げた大規模な関税を発表しました。一部の関税は90日間の猶予が設けられた一方で、中国本土からの多くの輸入品には145%の関税が課されたままになっています。
この関税政策は、米国内だけでなく海外からも強い批判を招いており、企業や市場には不透明感が広がっています。
ハリス氏「無謀で、現代最大の人為的経済危機」
カマラ・ハリス前副大統領は、2024年大統領選でトランプ氏に敗れて以来初となる主要演説を、サンフランシスコで行いました。演説でハリス氏は、トランプ政権の関税政策を「無謀だ」と強く批判し、「現代の大統領史における最大の人為的経済危機だ」とまで言い切りました。
ハリス氏は、トランプ政権とその同調者たちが「恐怖は伝染する」という考え方に頼っていると指摘し、一部の人々を不安にさせることで、社会全体の空気を冷え込ませようとしていると警鐘を鳴らしました。
さらに彼女は、関税によって「日々の生活必需品の価格が上がり、労働者と家族が傷ついている」と述べました。関税負担の増加は、米国内の大企業だけでなく中小企業にも重くのしかかり、「人員削減や採用停止、投資判断の先送りを余儀なくされている」と指摘しています。
ハリス氏は、こうした状況を踏まえ「私が予測していた通り、関税は明らかに景気後退を呼び込もうとしている」とし、米経済の先行きに強い懸念を示しました。
イエレン氏も「景気後退リスクが大きく上昇」と警告
前財務長官であり、連邦準備制度理事会(FRB)の議長も務めたジャレット・イエレン氏も、トランプ政権の関税戦略に警鐘を鳴らす一人です。イエレン氏はフィナンシャル・タイムズ紙のインタビューで、広範囲に及ぶ関税が米国経済を景気後退へと追い込むリスクを高めていると述べました。
彼女は、この関税戦略が「米国にとって、消費者にとって、輸入部品に依存する企業の競争力にとって、極めて深刻な悪影響をもたらす」と指摘しました。イエレン氏によれば、米国に輸入される財のうち約4割は国内生産のための部材や中間財であり、関税負担の増加は生産コストの上昇を通じて企業活動全体を圧迫します。
ただしイエレン氏は、「まだ景気後退を公式に予測する段階ではない」としつつも、「その可能性は確実に大きくなっている」と述べ、リスクが着実に高まっているとの見方を示しました。
クリーンエネルギー産業への打撃懸念
イエレン氏が特に懸念を示したのが、クリーンエネルギー分野への影響です。米国は、再生可能エネルギー技術や電池に欠かせない重要鉱物の多くを中国本土に依存しているとされますが、こうした分野の輸入品にも高い関税が課されることで、「本来成長が期待できる産業を自ら縛り付けてしまう」可能性があると指摘しました。
カリフォルニアなど州政府は提訴へ
関税政策への反発は、連邦レベルの議論にとどまりません。カリフォルニア州は今年4月、トランプ大統領が一方的に関税を導入する権限を持つのかを問う訴訟を提起し、今回の措置は違法であり、米国経済に「混乱」をもたらしていると主張しました。
その後、オレゴン、アリゾナ、コロラド、コネチカット、デラウェア、イリノイ、メイン、ミネソタ、ネバダ、ニューメキシコ、ニューヨーク、バーモントの各州も原告として加わり、関税政策に対する法的な異議申し立ては全米に広がっています。
アリゾナ州のクリス・メイズ司法長官は、トランプ氏の関税スキームを「狂気じみている」とまで批判し、「経済的に無謀であるだけでなく、違法だ」と強い言葉で非難しました。
もっとも、こうした訴訟は判決が出るまでに数カ月から数年を要する可能性があり、その間も企業や労働者は高い関税負担の中で事業を続けなければなりません。
米商工会議所「中小企業への関税除外プロセスを」
法廷闘争と並行して、ビジネス界からも具体的な是正策を求める声が上がっています。米国商工会議所は、トランプ政権に対し、景気後退を回避するために関税の「除外プロセス」を早急に導入するよう求めました。
商工会議所は、スコット・ベッセント財務長官、ハワード・ラトニック商務長官、ジェイミソン・グリア米通商代表宛ての書簡で、次のような措置を提案しました。
- すべての中小企業の輸入品について、関税を自動的に免除すること
- 国内で生産できない製品に対しては、関税を自動的に撤廃すること
- 関税が米国内の雇用に「重大なリスク」をもたらすと企業が示せる場合、迅速に除外を認める手続きの創設
スザンヌ・クラークCEOは書簡の中で、「たとえ合意に達するまでの期間が数週間から数カ月であったとしても、多くの中小企業はその間に回復不能な損害を受けかねない」とし、時間との闘いであることを強調しました。
アマゾンも揺れる 価格への関税分表示案は撤回
関税の影響を最前線で受けているのが、小売やプラットフォーム企業です。中小企業の販売の場ともなっている米小売大手アマゾンは、関税の急増を受け、商品の総額表示とは別に「関税分」を明示する案を検討していました。
しかし、ホワイトハウスがアマゾンを標的にした後、この計画は素早く撤回されました。トランプ大統領がアマゾンの創業者ジェフ・ベゾス氏に直接連絡を取り、その直後に方針転換が行われました。
製造業・小売業に広がる悪循環
米国の関税強化は、国内のみならず世界のサプライチェーンにも波紋を広げています。特に、小売や工業用資材など、製造やモノの流通に直結する分野では、次のような悪循環が懸念されています。
- 関税により輸入コストが上昇する
- 企業が価格に転嫁し、消費者物価が上がる
- 消費者の需要が冷え込み、売り上げと利益が圧迫される
- 企業が投資や雇用を抑制し、失業リスクが高まる
こうした流れが続けば、米国内の景気減速にとどまらず、世界経済全体の成長を押し下げる可能性があると指摘されています。
関税は誰を守り、誰に負担を強いるのか
トランプ政権の関税政策をめぐる議論は、単なる米国の内政問題にとどまらず、グローバル経済のあり方そのものを問い直すものになりつつあります。
- 関税は本当に国内産業と雇用を守る手段となるのか
- その負担は、最終的に消費者や中小企業にどの程度転嫁されるのか
- 貿易摩擦が長期化した場合、国際協調やサプライチェーンはどう変質していくのか
2025年12月現在、ハリス氏やイエレン氏、州政府やビジネス団体の動きは、トランプ政権の関税戦略に対する米国内の深い分断と不安を映し出しています。今後、関税政策がどのように修正されるのか、あるいは強化されるのかは、米国のみならず世界経済にとっても重要な焦点となりそうです。
Reference(s):
cgtn.com







