米国が中国本土・香港からの低額輸入免税を終了 ECと消費者に広がる波紋
米国が中国本土・香港からの低額輸入免税を終了 ECと消費者に広がる波紋
米国が中国本土と香港特別行政区からの低額輸入品に適用してきた免税制度を今年5月2日に打ち切りました。越境ECの成長を支えてきたルールの転換は、サプライチェーン(供給網)の混乱や価格上昇、税関での滞留を招くと見られ、世界のビジネスと消費者に影響が広がっています。
何が変わったのか:800ドル以下の免税が終了
ドナルド・トランプ米大統領の政権は5月2日、中国本土と香港特別行政区から米国に輸入される800ドル以下の低額貨物に対する免税措置、いわゆるデ・ミニミス制度を終了しました。
この制度により、これまで1日最大約400万件の小口の荷物が関税なしで米国に入っていたとされます。制度の終了によって、こうした荷物は原則として通常の関税と通関手続きの対象となり、
- 商品の価格上昇
- 税関での処理遅延
- サプライチェーンの再構築
が避けられないとの見方が広がっています。
ビジネスへの衝撃:ECプラットフォームと海外セラー
今回の米国の関税政策の転換は、越境ECを軸に成長してきた企業、とくに中国本土や香港特別行政区と結び付いたビジネスに直接響いています。
報道によると、一部の大手ECプラットフォームはすでに次のような対応を迫られています。
- サプライチェーンの再編(発送ルートや在庫配置の見直し)
- 商品価格の引き上げ
- 関税コストを抑えるための米国内倉庫の建設加速
変化の影響は大手だけにとどまりません。新たなコスト負担を吸収できない海外の販売業者の中には、米国向けの出荷を一時停止したり、米市場から完全に撤退したりするケースも出ています。特に小規模事業者ほど打撃が大きく、参入・継続のハードルが一段と高まっているといえます。
消費者への影響:値上げと配送遅延
今回の政策変更は、最終的には消費者の財布にも跳ね返ります。もともとデ・ミニミス制度は、低価格の雑貨や衣料、小型家電などを手頃な価格で購入できる土台となっていました。それが関税の対象となることで、支払う金額は上振れしやすくなります。
報道によれば、あるECプラットフォームでは一部商品で価格が2倍以上に跳ね上がった例も確認され、SNS上には送料や通関をめぐる不満の声が多数投稿されています。配送の遅延や荷物の足止めを訴える書き込みが目立ち、日常的に利用してきた低価格商品が、
- 以前ほど安くない
- 以前ほど早く届かない
という現実が浮かび上がっています。
トランプ大統領自身も、関税による影響を認める発言をしています。4月1日の発言では、米国の子どもたちについて「これまで30体持っていた人形が2体になるかもしれないし、その2体もこれまでより少し高くなるかもしれない」と語り、商品が減り価格が上がる可能性に言及しました。
税関と物流への負荷:ボトルネックのリスク
デ・ミニミス制度の終了は、税関や物流現場にも大きな負荷をかけるとみられています。これまで簡略な手続きで米国に入っていた数百万件規模の小口荷物が、今後はより詳細な関税計算と書類審査の対象となるためです。
政策変更は、
- 税関業務の急激な増加
- 処理能力を超えるボトルネックの発生
- 通関待ちによる配送の長期化
を引き起こし、サプライチェーン全体のリードタイム(調達から納品までの時間)を押し上げる可能性があります。制度変更前から予想されていた「税関の混乱」は、今後も注視すべきポイントです。
米企業のケーススタディ:スニーカー1足に300ドル超の関税
具体的な負担増を示す事例として、米メディアはある米国の靴ブランドの動きを取り上げています。この企業は当初、カナダの倉庫から米国の消費者にスニーカーを発送していました。
しかし、中国本土で製造された1足175ドルのスニーカーをカナダから米国へ出荷すると、新たなルールの下では300ドルを超える関税が発生する可能性が判明しました。その結果、同社は在庫をカナダから米国内の倉庫へ移し、直接米国内から発送する体制に切り替えています。
このケースは、
- 第三国経由の出荷モデルが一気に採算割れするリスク
- 在庫配置や物流拠点の戦略が、関税ルール次第で変わらざるを得ない現実
を象徴的に示しています。
日本とアジアの読者が押さえたいポイント
今回の米国の動きは、中国本土や香港特別行政区との取引に直接関わる企業だけでなく、日本やアジアの越境EC事業者、そして日常的に海外通販を利用する人たちにとっても無関係ではありません。
押さえておきたい視点を整理すると、次のようになります。
- ビジネスモデルの再点検:低価格商品の米国向け販売は、関税負担を前提に採算を見直す必要があります。
- 在庫と拠点戦略:米企業の例に見られるように、どこに在庫を置き、どこから発送するかがコストを大きく左右します。
- 消費者としての意識:「なぜ値上がりしたのか」「なぜ届くのが遅くなったのか」を、貿易ルールの変化と結び付けて考える視点が重要になります。
一見すると専門的な「関税ルール」の話ですが、実際には、スマートフォン1台で完結する日々のオンラインショッピングと直結しています。ルールが変われば、私たちの選べる商品や支払う価格、届くまでの時間も変わります。
中国本土や香港特別行政区からの低額輸入免税を打ち切った米国の決定は、世界の越境ECが依存してきた前提条件を揺さぶるものです。今後の企業の対応や追加の政策動向を追いながら、自分の買い物やビジネスにどのような影響が及ぶのか、静かに考えてみるタイミングと言えるかもしれません。
Reference(s):
Price hikes, customs chaos expected as U.S. ends duty-free imports
cgtn.com








