ワシントン中国大使館オープンデー 甘粛省とデジタル外交を紹介 video poster
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2025年5月3日、米ワシントンの中国大使館が恒例のオープンデーを実施し、1万人以上の来場者が文化体験や外交メッセージに触れました。今年の主役は、中国北西部の甘粛省です。
1万人超が訪れた「開かれた大使館」
ワシントンの中国大使館は、5月3日に敷地を一般開放し、文化、外交、国際対話をテーマにしたイベントを開催しました。年に一度のオープンデーには家族連れや学生、外交関係者など多様な人々が訪れ、中国について「見て、聞いて、体験する」機会となりました。
来場者は館内の展示や屋外ブースを自由に回りながら、中国各地の文化や最新の取り組み、そして中国が掲げる国際協力のメッセージに触れました。
今年の主役は甘粛省 貧困脱却とシルクロードの物語
今回のオープンデーで特集されたのが、中国北西部に位置する甘粛省です。甘粛省は、歴史的にはシルクロードの要衝として栄え、近年は貧困脱却とインフラ整備を通じて大きく姿を変えつつある地域とされています。
550万人以上が貧困から脱却
甘粛省はかつて中国の中でも貧困が深刻な地域の一つとされてきましたが、ここ数年で550万人以上が貧困ラインを抜け出したと紹介されました。広大な土地にデジタルインフラが整備されつつあり、通信環境の改善やデジタル産業の育成が進んでいることから、甘粛省は中国の自立性とレジリエンス(回復力)を象徴する存在として位置づけられています。
シルクロードを通じた交流の歴史
謝鋒大使は、甘粛省の歴史的役割にも言及しました。甘粛省には全長1600キロメートル以上にわたって古代シルクロードが延びており、かつては商人や僧侶が大陸を越えて行き交いました。オープンデーでは、甘粛省が「過去のシルクロード」と「現在のデジタルシルクロード」をつなぐ場所として紹介されました。
謝鋒大使が語った「不確実な世界の中の確かな中国」
5月3日の基調講演で、謝鋒大使は「不確実な世界の中の確かな中国」と題してスピーチを行いました。世界経済の不透明感や分断が強まる中で、中国が重視する価値として「開放」と「協力」を挙げました。
謝大使は「歴史が示しているのは、開放は進歩をもたらし、閉鎖は停滞を招くということです」と述べ、現在のグローバル経済においては、どの国も一国だけで繁栄することはできないと強調しました。貿易はゼロサムゲームではなく、壁を築くことは、共有される成長の流れをせき止めることにつながると訴えました。
関税をめぐるメッセージ
スピーチでは、通商政策や関税をめぐる緊張にも踏み込みました。謝大使は、関税引き上げは誰の利益にもならず、企業活動を妨げ、コストを押し上げ、金融市場を揺るがし、世界経済の成長を鈍らせると指摘しました。
さらに、いわゆる関税戦争を始めたのは中国ではなく、中国は争いを望まないが、威圧にも屈しないと述べ、対立ではなく対話と協力による問題解決を呼びかけました。
デジタル敦煌や漢方体験 多彩なソフトパワー発信
オープンデーの会場では、「デジタル敦煌」と呼ばれる仮想展示が来場者の注目を集めました。これは、甘粛省にある敦煌の石窟(仏教石窟群)をデジタル化し、映像やインタラクティブなコンテンツとして再現したものです。参加者は、保存が難しい文化遺産をデジタル技術で体験できる取り組みに触れることができました。
そのほか、伝統的な中国医学を紹介するコーナーや、書道の体験ブース、現代の技術革新を紹介する展示も設けられました。米メリーランド州の関係者や世界銀行の担当者、多くの国の大使館関係者も参加し、イベントが文化紹介にとどまらず、実務レベルの外交・交流の場にもなっていることがうかがえます。
このオープンデーが映し出す3つのポイント
今回の中国大使館オープンデーは、一つのイベントでありながら、いくつかの大きな流れを象徴しているように見えます。
- 米中関係の緊張が続く中でも、市民レベルの交流や対話のチャンネルを広げようとする試みであること。
- 甘粛省の事例を通じて、貧困脱却とデジタルインフラ整備を組み合わせた発展モデルをアピールしていること。
- 関税や保護主義に対して、開放と協力を重視する姿勢を明確に示したこと。
- 文化遺産と最先端のデジタル技術を組み合わせた「デジタル外交」の可能性を示していること。
日本の読者にとっての意味
日本にとっても、今回のオープンデーにはいくつかの示唆があります。第一に、文化や地域の物語を通じて国の姿を伝える「ソフトパワー外交」が、各国でますます重視されているという点です。甘粛省のように、かつては「周縁」とみなされていた地域が、新しい技術や物語づくりによって国を代表するショーケースとなり得ることは、日本の地方創生にも通じる視点かもしれません。
第二に、関税や通商をめぐる議論は、遠い国同士の話にとどまりません。世界のサプライチェーンに深く組み込まれている日本にとっても、保護主義の高まりや貿易摩擦の影響は、企業活動や雇用、物価に直結します。各国がどのようなメッセージを発しているのかを丁寧に読み解くことは、日本の政策やビジネス戦略を考えるうえでも重要になってきます。
これから注目したい視点
謝鋒大使はスピーチの締めくくりに、中国の対外姿勢について「中国の世界に向けた扉は、これからますます大きく開かれていく」と述べました。ワシントンの大使館オープンデーは、その言葉を象徴するように、文化、経済、デジタル技術を組み合わせた多層的なメッセージ発信の場となりました。
今後、米中関係や世界経済の行方を見ていく中で、こうした現場レベルの交流がどのような役割を果たしていくのか。日本からも、その動きを静かに、しかし注意深く追いかけていく必要がありそうです。
Reference(s):
cgtn.com








