EU、対米関税で「すべての選択肢」 不公平な合意には応じない姿勢
欧州連合(EU)が、トランプ米大統領による追加関税をめぐり、「不公平な合意を受け入れる必要はない」と強調し、「あらゆる選択肢がテーブルの上にある」と通商担当トップが表明しました。米欧の関税摩擦は、世界の貿易秩序にどんな影響を与えようとしているのでしょうか。
EU、対米関税で「不公平な合意には応じない」
欧州委員会の通商担当を務めるマロシュ・シェフチョビッチ欧州委員は、欧州議会での報告で、EUは不公平な関税合意を受け入れる圧力にはさらされていないと述べました。
シェフチョビッチ氏によると、EUは27の加盟国からなる経済圏として、米国以外の国々からも貿易関係を強化したいという打診を受けているといいます。米国との協議が難航した場合でも、他のパートナーとの連携を強めることで、選択肢を広げられるというメッセージです。
そのうえで同氏は、トランプ米大統領が導入した関税措置に対し、EUは必要に応じて再均衡措置――自らも対抗的な関税などを検討する構えを見せました。協議が決裂した場合に備え、猶予期間のあいだに追加の対応策を準備するとしています。
米国の高関税、その中身は
今回焦点となっているのは、米国がEUからの輸入品に課す高い関税です。シェフチョビッチ氏の説明によれば、次のような構造になっています。
- 鉄鋼、アルミニウム、自動車には25%の輸入関税
- それ以外のほとんどの品目に対しては「互恵関税」とされる10%の追加関税
さらに、トランプ米大統領が設けた90日間の猶予期間が7月8日に終了した後には、この10%の関税が20%に引き上げられる可能性があるとされています。
EU側は、この猶予期間を利用して米国との交渉を続ける一方で、万が一合意に至らなかった場合の備えとして、再均衡措置を練ってきた格好です。
EU輸出の7割が対象、最大97%まで拡大の可能性
シェフチョビッチ氏は、米国の関税措置がすでにEUから米国への輸出額の約7割をカバーしていると指摘しました。しかも、医薬品や半導体などを対象とする追加調査の結果しだいでは、その対象が最大で97%にまで拡大する可能性があるといいます。
ほぼすべてのEU製品が高い関税の対象になりかねないというこのシナリオは、EUの企業だけでなく、サプライチェーン(供給網)を通じて世界中の企業に広く影響するおそれがあります。
「すべての選択肢」が意味するもの
欧州委員は「あらゆる選択肢がテーブルの上にある」と強い表現を使いました。この言葉が示唆するのは、EUが次のような幅広い手段を排除していないということです。
- 米国製品に対する対抗関税の検討
- 国際ルールに基づく法的な手続きの活用
- 米国以外の国・地域との貿易関係の強化
シェフチョビッチ氏は、米国側にも「公正でバランスの取れた合意に向けて動く用意があるのかを示す必要がある」と求めています。競争条件の「公平な土俵」(レベル・プレイング・フィールド)を確保することが、EUにとっての最優先課題だと強調している形です。
貿易転換への警戒とタスクフォース
トランプ米大統領による高関税は、EUと米国の二者間だけの問題にはとどまりません。米国が一部の国からの輸入を抑えることで、行き場を失った製品がEU市場に流れ込み、輸入が急増する「貿易転換」のリスクも生まれます。
シェフチョビッチ氏は、こうした貿易転換による輸入急増に警戒を示し、その動きを監視するためのタスクフォース(作業部会)をEUが立ち上げたと説明しました。このタスクフォースは、5月中旬にも最初の結果をまとめる予定だとされています。
EUとしては、自らの産業を守りつつも、国際的な貿易ルールに基づいた開かれた市場を維持できるかどうかが問われていると言えます。
私たちがこのニュースから考えたいこと
米欧の関税摩擦は、ニュースとしては「遠い世界の話」に見えるかもしれません。しかし、鉄鋼や自動車、半導体、医薬品といった分野は、日本やアジアの企業にとっても重要な輸出産業です。
米国がEUからの輸入品に高関税を課し、EUが対抗措置をとれば、そのコストや不透明感はサプライチェーン全体に波及します。最終的には、消費者の価格や企業の投資判断にも影響が出る可能性があります。
今回のEUのメッセージは、「大国同士の駆け引き」であっても、一方的な圧力には応じず、公平なルールに基づく交渉を重視する姿勢を示したものだと受け取ることができます。国際ニュースとしての動向を追うだけでなく、「どのような貿易ルールが望ましいのか」を自分なりに考えてみるきっかけにもなりそうです。
Reference(s):
EU mulls anti-tariff measures: 'All options remain on the table'
cgtn.com








