米国の外国製映画100%関税に豪労働党政権が反発 EUとのFTA再交渉も視野
米国が外国製映画に100%の関税を課すと発表したことを受け、オーストラリアで再選された労働党政権が「不当な関税だ」と強く反発し、対米交渉とEUとの自由貿易協定(FTA)再交渉を通じて貿易の多角化を図ろうとしています。
- 米国が外国製映画に100%関税を発表
- 再選した豪労働党政権は「不当」として対抗姿勢
- 行き詰まったEUとのFTA交渉を再開し、貿易多角化も狙う動き
米国の映画関税に豪労働党政権が「不当」と反発
オーストラリアの再選された労働党政権は、米国が外国製映画に対して100%の関税を課す方針を打ち出したことについて、「正当化できない不当な関税だ」との立場を明確にしています。これは、エンタメ産業だけでなく、広く貿易や外交にも影響しうる動きとして注目されています。
「政府全体で強いケースを示す」リッシュワース氏
社会サービス担当相を務めてきたアマンダ・リッシュワース氏は、テレビ局のインタビューで、労働党政権の「チーム全体」、アンソニー・アルバニージ首相を含む閣僚が、米国側に対して非常に強い反対の論拠を提示していくと述べました。リッシュワース氏は前の第47議会でもアルバニージ内閣の一員でしたが、新たな第48議会における役職はまだ正式に発表されていません。
リッシュワース氏は、今回の関税を「不当な関税」だと明言し、オーストラリアとして映画産業を守る姿勢を強調しています。外国製映画に100%の関税がかかれば、オーストラリアの制作会社や配給会社にとって、米市場へのアクセスは一気に難しくなりかねません。
トランプ大統領との電話協議で関税を議題に
アルバニージ首相は、総選挙での大勝後、ドナルド・トランプ米大統領と電話で協議したことを明らかにしており、その中で今回の映画関税問題も話題になったと述べています。政権発足直後から、二国間の貿易・投資のあり方を巡る駆け引きが始まっていることがうかがえます。
映画関税だけではない 豪州の貿易戦略全体の課題
ウォン外相「米国に豪州の立場を明確に伝える」
ペニー・ウォン外相は、民放テレビ局ナインのインタビューで、再選された豪政府は米国側に映画関税への明確な反対の立場を伝える方針だと説明しました。ウォン氏は引き続き外相を務める見通しで、対米外交の前線に立ちます。
ウォン氏は「米国の政権には、オーストラリアの考え方をしっかり伝えていく」と述べ、単なる抗議にとどまらず、対話を通じた解決を目指す姿勢を示しました。
EUとのFTA再交渉で「貿易の多角化」を模索
ウォン外相は別のインタビューで、欧州連合(EU)との自由貿易協定交渉を再開することが、豪州の「貿易多角化」にとって重要な一歩になると語りました。公共放送ABCラジオの番組で、「貿易立国として、貿易障壁を広げるのは自らにダメージを与える行為だ」と指摘し、関税などの障壁に依存しない戦略の必要性を強調しました。
オーストラリアとEUのFTA交渉は、2023年に、豪州産の農産物に対するEU市場へのアクセスを巡って合意できず、いったん決裂しています。今回の総選挙に向け、労働党は今年4月の段階で「勝利すればEUとの交渉再開を目指す」と表明しており、その公約を実行に移そうとしています。
オーストラリアの新聞各紙は、アルバニージ首相がEUとの交渉の一環として、EUからの高級車輸入にかかる豪州の贅沢税を撤廃する代わりに、豪州の農産物輸出に対するより広い市場アクセスを求める考えを持っていると報じています。映画を巡る米国との摩擦と同時に、EUとの交渉でも条件闘争が続く構図です。
映画関税と農産物市場 何がつながっているのか
一見すると、映画関税と農産物市場へのアクセスは別々の話に見えます。しかし、今回の動きを貫いているのは「どこまで貿易を開き、どこまで守るのか」という、各国共通の課題です。
オーストラリアにとって、映画やテレビといったコンテンツ産業は文化と経済の両面で重要です。米国が外国製映画に100%の関税を課せば、オーストラリアの作品が米国市場で競争するのは格段に難しくなります。一方で、豪州は農産物や資源など他の分野でも輸出に依存しており、特定の市場に偏らない「貿易の多角化」を模索してきました。
今回、豪政府が米国に対して映画関税撤回を求める一方で、EUとのFTA交渉再開を打ち出しているのは、ある市場で不利な条件が生まれても、別の市場へのアクセスを強化することで全体としてのリスクを抑えたい、という発想と見ることもできます。
保護主義か、自国産業の防衛か
外国製映画への100%関税は、米国側から見れば自国の映画産業を守るための手段と説明される可能性がありますが、貿易の観点からは保護主義的な動きと受け止める向きもあります。豪政府が「不当」と反発しているのは、映画に限らず、こうした措置が連鎖的に他の分野にも広がることへの警戒感も背景にあると考えられます。
関税や貿易障壁は、一時的には国内産業を守るように見えても、報復措置や市場アクセスの縮小を招けば、結果的に自国の消費者や企業にも跳ね返ります。ウォン外相が「経済的な自傷行為になりかねない」と語ったのは、まさにこの点を意識しての発言と言えます。
これから何に注目すべきか
今回の動きは、オーストラリアと米国、EUという三つの重要なパートナーとの関係が、映画、農産物、工業製品といった複数の分野で同時並行的に変化しうる局面であることを示しています。日本を含む他の国々にとっても、映画やコンテンツ産業、農産物輸出などに波及効果をもたらす可能性があります。
読者として押さえておきたいのは、次のようなポイントです。
- 米国の外国製映画100%関税は、エンタメ産業だけでなく通商政策全体の象徴的な動きになりうる。
- 豪労働党政権は関税に強く反対しつつ、EUとのFTA交渉再開を通じて貿易の多角化を図ろうとしている。
- 関税や貿易障壁をめぐる議論は、「自国産業保護」と「開かれた市場」のどこで折り合いをつけるかという、各国共通のジレンマを映し出している。
映画館で目にする作品のラインナップや、スーパーに並ぶ食品の産地表示の裏側には、こうした静かな交渉と駆け引きがあります。2025年12月現在、オーストラリアと米国、EUの間で進む交渉の行方は、今後の国際貿易の方向性を占ううえでも注目しておきたいテーマです。
Reference(s):
Australia vows to fight against U.S. film tariffs after Labor wins
cgtn.com








