トランプ政権の関税とラテンアメリカ:グローバルサウス連携は強まるか
最近、トランプ政権がラテンアメリカ諸国に対して一律10%以上の報復関税を打ち出し、ポストコロナでまだ回復途上にある地域経済に大きな衝撃を与えています。2025年も終わりに近づくなか、こうした動きは「グローバルサウス」は連携を強められるのか、それとも依然として受け身にとどまるのかという問いを改めて突きつけています。
トランプ政権の新関税:誰にどれだけかかるのか
今回導入された報復関税は、米国が相手国の関税水準に合わせる形で関税率を引き上げる措置とされています。スタート時点の水準だけを見ても、ラテンアメリカ各国への負担は小さくありません。
- ブラジル、アルゼンチン、チリ、コロンビア、ペルー:一律10%の関税
- ベネズエラ、ニカラグア、ガイアナ:15〜38%の関税
- メキシコ:USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)により今回の追加関税は免除。ただし、鉄鋼、アルミニウム、自動車製品には従来の関税が残る
対象国の多くは米国との貿易依存度が高く、輸出だけでなく輸入コストの上昇という形でも打撃を受ける可能性があります。
なぜ10%でも深刻なのか:構造的な脆弱性
ラテンアメリカ経済は、農産物や鉱物資源など、付加価値の低い一次産品の輸出に大きく依存してきました。この構造のもとでは、たとえ10%という一見小さな関税であっても、企業の利益や輸出競争力を一気に削り取ってしまいます。
しかも、多くの国で生活必需品や中間財を米国から輸入しているため、関税のブーメラン効果として、
- 輸入価格の上昇による消費者の負担増
- 一部の国でインフレ(物価上昇)の再燃
- 金融市場の不安定化や通貨安圧力
といった副作用も懸念されます。
そもそもラテンアメリカのポストパンデミックの景気回復は脆弱でした。2024年の域内の実質GDP成長率は、わずか2.3%にとどまると予測されていました。主要な貿易相手国かつ最大の投資国である米国が関税を引き上げれば、回復の足をさらに引っ張ることになります。
ECLACの警鐘:2025年成長率見通しも下方修正
2025年4月下旬には、国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)が2025年の成長率見通しを0.4ポイント引き下げ、わずか2%とする新しい予測を示しました。
ECLACは、ラテンアメリカが
- 世界経済の不透明感が高まる中で例外的に複雑な環境に置かれていること
- 米国の関税が輸出を直接押し下げるだけでなく、金融市場のボラティリティ(価格変動の激しさ)を高めること
などを挙げ、地域としての対応力の向上を急ぐ必要性を警告しています。
グローバルサウスは受け身から抜け出せるか
今回の関税ショックを前に、多くの人が抱く疑問はシンプルです。「グローバルサウスの国々、とりわけラテンアメリカは、またもや外からのショックに振り回されるだけなのか」という点です。
欧米中心の国際経済システムへの依存度が高いままでは、関税や金融政策といった外部の一手で景気が左右され続けます。逆に見ると、今回の事態は、長年の依存構造から一歩抜け出すきっかけにもなり得ます。
例えば、
- 一次産品偏重から、製造業やサービス産業など付加価値の高い産業への転換を進める
- ラテンアメリカ域内や、アジア・アフリカなど他の新興・途上国との貿易・投資を多角化する
- 南南協力と呼ばれる、グローバルサウス同士の技術協力やインフラ投資を強化する
といった取り組みは、いずれも受け身から脱却する方向性といえます。関税そのものは対立の表れですが、それをきっかけにグローバルサウス間の連携を強化できるかどうかが、今後数年の重要なポイントになりそうです。
日本からこのニュースをどう見るか
日本の読者にとって、ラテンアメリカやグローバルサウスの話題は、やや遠い世界の出来事に映るかもしれません。しかし、世界経済はサプライチェーン(供給網)を通じて密接につながっています。
ラテンアメリカの成長鈍化や金融不安は、
- 資源価格の変動を通じた日本企業のコスト構造への影響
- 新興国市場の需要減少による輸出機会の縮小
- 国際機関での議論を通じた、貿易ルールや金融規範の変化
といった形で、日本にも間接的に跳ね返ってくる可能性があります。
2025年末の今、ラテンアメリカがどのように対応を模索するのか、そしてグローバルサウス全体の連携が本当に強まるのかを、私たちも自分ごととしてフォローしていく必要がありそうです。
Reference(s):
cgtn.com








