ジュネーブで中国・米国が経済・貿易共同声明 関税を一部停止し対話継続へ
中国と米国は、ジュネーブで開かれた経済・貿易会合を受けて共同声明を発表し、互いの追加関税を一部停止するとともに、今後の対話メカニズムを設けることで合意しました。本記事では、この「China-U.S. Economic and Trade Meeting in Geneva」共同声明の内容と意味を、日本語で分かりやすく整理します。
ジュネーブの中国・米国経済・貿易会合とは
共同声明は、中国と米国の二国間の経済・貿易関係が、両国だけでなく世界経済にとっても重要だと改めて位置づけています。そのうえで、この関係を「持続可能で、長期的で、互いに利益となる(mutually beneficial)」ものにしていく必要性を強調しています。
また、両国は、最近の議論を踏まえつつ、今後も協議を続けることで懸念の解消を図ることができるとし、「相互の開放」「継続的なコミュニケーション」「協力」「相互尊重」の精神で前に進むとしています。
2025年5月14日までに実施するとされた措置
声明によると、中国と米国は、2025年5月14日までに、互いの追加関税や対抗措置について具体的な行動をとると約束しています。ポイントは、両国がほぼ対称的な形で追加関税を一部停止し、さらに一部の非関税措置を緩和することです。
米国側の措置:対中追加関税を一部停止
米国は、中国(香港特別行政区とマカオ特別行政区を含む)からの輸入品に課している追加関税について、2025年4月2日付の大統領令14257で定められた内容を一部変更します。
- 大統領令14257に基づく中国製品への追加の従価税率(輸入額に対する%で課される税率)について、そのうち24ポイントを「初期期間として90日間」停止し、残りの10%の追加税率を維持する。
- 2025年4月8日付の大統領令14259および4月9日付の大統領令14266によって課されていた、修正済みの追加従価税率を撤廃する。
つまり米国側は、中国や香港特別行政区、マカオ特別行政区からの対象品目に対する関税上乗せ分を大きく削減しつつ、一部の追加分(10%)は残す形を取ることになります。
中国側の措置:対米追加関税と非関税措置を緩和
中国は、米国からの輸入品に課している追加関税と非関税措置について、次のような対応をとるとしています。
- 国務院関税税則委員会の2025年第4号公告に基づく対米追加従価税率のうち、24ポイントを当初90日間停止し、残りの10%の追加税率を維持する。
- 同じく国務院関税税則委員会の2025年第5号公告および第6号公告で定められた追加従価税率を撤廃する。
- 2025年4月2日以降に米国に対して講じてきた非関税の対抗措置について、これを停止または撤廃するために必要な行政措置を採る。
「非関税の対抗措置」とは、関税以外の手段による貿易上の制限を指します。共同声明ではその詳細は列挙されていませんが、企業にとっては、関税だけでなく非関税面の負担がどこまで軽くなるかも重要なポイントになります。
対話メカニズムの設置:誰が交渉を担うのか
共同声明は、追加関税などの措置を見直すだけでなく、今後の経済・貿易関係について協議を続けるためのメカニズムを設けることも明記しています。
代表者は、次の通りです。
- 中国側代表:国務院副総理 何立峰(He Lifeng)氏
- 米国側代表:財務長官 スコット・ベッセント(Scott Bessent)氏
- 米国側代表:米国通商代表 ジャミーソン・グリアー(Jamieson Greer)氏
協議は、中国と米国の双方で交互に開催するほか、双方の合意があれば第三国で実施することも可能とされています。また、必要に応じて、関連する経済・貿易問題について実務者レベルの協議(ワーキングレベルの協議)も行うとし、継続的で多層的な対話の枠組みづくりを目指していることがうかがえます。
今回の共同声明が示す3つのメッセージ
ジュネーブの共同声明は、詳細を見ると次のようなメッセージを含んでいると受け止めることができます。
- 相互的な緩和のシグナル:追加関税の「24ポイント停止」と一部の対抗措置撤廃を、中国と米国がほぼ対称的な形で行うことで、一方的ではない「相互的な緩和」の姿勢を示しています。
- 関税を完全には戻さない慎重さ:追加関税をゼロにするのではなく、10%の追加分を残すことで、協議の進展に応じて調整する余地をあえて残しているとも見られます。これは、対話を続けつつも、相互の懸念が解消されるまでは一定のテコを維持しておきたいという慎重さの表れと考えられます。
- 制度化された対話への一歩:高位の代表者を明確にし、場所を柔軟に設定しながら実務者レベルも含めた協議の仕組みを設けたことは、「一度きりの会合」ではなく、継続的に管理していく枠組みをつくろうとする動きと言えます。
企業や投資家にとっての意味
追加関税や対抗措置は、企業のコスト構造やサプライチェーン戦略に直結します。今回の共同声明は、企業や投資家にとって少なくとも次の3点で注目されます。
- コスト負担の一時的な軽減の可能性:対象となる中国発および米国発の輸入品については、24ポイント分の追加税率が当初90日間停止されることで、税負担が軽くなる可能性があります。
- 非関税面の不確実性の緩和期待:中国側が非関税の対抗措置を停止・撤廃するとしたことで、通関やその他の手続きに関する不確実性が和らぐかどうかが焦点になります。
- 依然として残る10%の追加関税:一方で、10%の追加関税は両国とも維持するため、企業にとって貿易条件が「完全に元に戻る」わけではありません。サプライチェーンや価格設定を見直す際には、今後の協議の動向も踏まえたリスク管理が求められます。
これから注視したいポイント
今回の共同声明は、2025年の米中経済・貿易関係を読み解くうえで重要な文書です。今後、特に次の点が注目されます。
- 90日間の停止措置の行方:追加関税の24ポイント停止が、90日間の初期期間を超えて延長されるのか、それとも元の水準に戻るのか。
- 非関税措置の実務的な改善:非関税の対抗措置を停止・撤廃するための行政措置が、企業の現場レベルでどの程度、体感できる変化につながるのか。
- 対話メカニズムのテーマの広がり:新たな協議メカニズムが、関税だけでなく、デジタル経済や環境・エネルギーなど、より広い経済・貿易課題の議論にもつながっていくのか。
中国と米国の経済・貿易関係は、世界のサプライチェーンや金融市場にも影響し得る重要なテーマです。ジュネーブでの共同声明は、その緊張を管理しつつ対話を続けていくための一つの試みと見ることができます。日本の企業や投資家にとっても、今後の協議の進展を継続的にフォローしていくことが求められます。
Reference(s):
Joint statement on China-U.S. economic and trade meeting in Geneva
cgtn.com








