トランプ関税でEUがユーロ圏2025年成長率を0.9%に下方修正
欧州連合(EU)は、ドナルド・トランプ米大統領による大規模な関税措置で世界の貿易摩擦が強まるなか、ユーロ圏の2025年経済成長率見通しを大きく引き下げました。関税と成長鈍化がどのようにつながっているのかを整理します。
2025年の成長率見通しは0.9%に
欧州委員会は、ユーロ圏(ユーロを共通通貨とする諸国)の2025年の実質経済成長率見通しを0.9%と発表しました。これは、従来予測していた1.3%からの大幅な下方修正です。
見通しを引き下げた理由として欧州委員会は、
- 世界の貿易見通しの悪化
- 貿易政策を巡る不確実性の高まり
を挙げています。とくに、トランプ米大統領による一連の関税強化が、企業の投資判断やサプライチェーン(供給網)の計画を難しくしていることが背景にあります。
あわせて、2026年のユーロ圏成長率見通しも1.4%へと引き下げられました。昨年11月時点では1.6%が見込まれており、先行きについても慎重な見方が強まっていることがうかがえます。
「雇用は堅調だが成長は控えめ」
EUの経済担当トップであるバルディス・ドンブロウスキス氏は、今回の見通しについて次のように説明しています。
「力強い労働市場と賃金の上昇に支えられ、2025年も成長は続くと見込んでいる。ただし、そのペースは穏やかなものにとどまる」。
雇用や賃金は引き続き改善しているものの、外部環境の悪化が全体の成長を押し下げている、という構図です。
トランプ関税、何が起きているのか
今回の成長率下方修正の背景には、トランプ米大統領による関税措置があります。米国はEUを含む各国からの輸入品に対し、次のような高関税を課しています。
- 鉄鋼・アルミニウム・自動車に25%の追加関税
- EUからのほとんどの輸入品に20%の追加関税(4月に発表)
この20%の追加関税については、協議の時間を確保するために7月まで凍結されました。一方で、トランプ大統領は世界各国からの輸入品に対し、EUを含む対象に一律10%のベースライン関税を維持しています。
EUは、ワシントンとの間で包括的な貿易協定をまとめられなければ、さらなる広範な関税の対象となる可能性があります。この不透明感が、企業の投資や設備更新を慎重にさせているとみられます。
ドイツはゼロ成長予測 ユーロ圏の弱さが露呈
今回の見通しの中でも象徴的なのが、ユーロ圏最大の経済規模を持つドイツが2025年ゼロ成長と予測されたことです。これは、昨年に示されていた0.7%成長からの大幅な下方修正となります。
製造業と輸出に強く依存するドイツ経済は、関税や世界貿易の減速の影響を受けやすい構造です。成長の牽引役だった国が足踏み状態に陥ることで、ユーロ圏全体のもろさが浮き彫りになっています。
ドンブロウスキス氏は「見通しを巡るリスクは依然として下方に偏っている。EUは競争力を高めるために、決断力ある行動を取らなければならない」と述べ、危機感をにじませました。
気候変動から競争力へ 欧州委の政策転換
欧州委員会はこれまで、気候変動対策やグリーン投資を成長戦略の柱に据えてきました。今回の見通し発表にあわせ、同委員会は政策の焦点を競争力強化へと移していることもにじませています。
背景には、中国や米国の企業との厳しい競争があります。規制やコスト負担が相対的に重いとされる欧州で、企業活動をしやすくする環境づくりを進める必要性が高まっているという判断です。
具体的には、
- 企業向けの規制や手続きの簡素化
- 投資や研究開発を支える制度づくり
- 重要産業への支援を通じた生産性向上
といった方向性が意識されています。成長率の数字だけではなく、こうした競争力の土台づくりが今後のユーロ圏経済を左右しそうです。
日本とアジアにとっての意味
ユーロ圏の成長鈍化と米国の関税強化は、日本やアジアにも波紋を広げる可能性があります。
- 世界貿易の減速は、日本企業の輸出や現地生産にも影響しうる
- ユーロ圏の需要減速は、自動車や機械など日本の主力産業にとって逆風となりかねない
- EUが競争力強化にかじを切ることで、アジア企業との競争環境も変化する可能性がある
2025年の残りと2026年に向けては、
- 米国とEUの貿易交渉の行方
- トランプ政権の関税政策がどこまで続くのか
- ドイツ経済が持ち直すのか、それとも停滞が長期化するのか
といった点が注目材料となります。ユーロ圏の成長率0.9%という数字の裏側には、世界経済の構造変化と、貿易を巡る不確実性の高まりが映し出されています。
Reference(s):
cgtn.com








