中国「民営経済促進法」施行で民営企業はどう変わるのか
中国で「民営経済促進法(Private Economy Promotion Law)」が火曜日に施行され、民営企業の平等な扱いと公正な競争条件を法律として明文化する新たな枠組みが動き出しました。中国経済の中核となっている民営企業をどう支え、国際競争力を高めていくのかが、いま大きな注目を集めています。
中国の民営経済を支える新たな基本法
民営経済促進法は、長期間にわたる議論を経て制定された、いわば中国の民営経済を支える基本法です。条文の中では「平等」「公平」「平等な保護」といった言葉が26回も明示されており、民営企業を他の市場主体と同じように扱うという姿勢を前面に打ち出しています。
背景には、民営企業が中国の企業数の大半を占めている現実があります。中国の市場監督当局によると、2025年3月時点で民営企業は5700万社以上に達し、登録企業全体の92.3%を占めています。さらに個人事業主も1億2500万人を超えており、民営経済は雇用と成長を支える土台になっています。
「平等な競争条件」をどう実現するのか
新法の柱となっているのが、「すべての市場主体に対する平等な法的地位と発展の権利」を保障するという方針です。これまで民営企業は、エネルギー、金融、インフラなど一部の分野で参入ハードルの高さや、資金調達での不利な扱いを指摘されてきました。
民営経済促進法では、こうした課題に対応するため、次のような内容が盛り込まれています。
- 市場参入の段階での不公平な扱いを禁止
- 公共調達(政府や公的機関の発注)での差別的取り扱いを禁止
- 融資や債券発行など資金調達における不当な制限を排除
これにより、民営企業が国有企業などと同じルールの下で競争できる「土俵」を整えることが狙いとされています。
市場参入改革とネガティブリストの法制化
中国経済ニュースの観点で重要なのが、市場参入ルールの明確化です。民営経済促進法は、「ネガティブリスト」方式を法律で位置付けました。これは、あらかじめ禁止・制限されている分野をリスト化し、それ以外の分野には民営資本の参入を認める仕組みです。
すでに複数の省が、この新法に合わせて地方法規の見直しに動いています。イノベーション拠点として知られる浙江省では、エネルギーや交通などの分野で民営企業の参加を前提とした質の高いプロジェクトが打ち出され、民間投資の呼び込みを進めています。
飼料大手・新希望集団の劉永好会長は、この仕組みについて「民間資本がより自由に参加できるようになる」と歓迎し、「法律による後押しがあることで、とくに新興産業への投資拡大に安心感が生まれる」と述べています。
イノベーションの主役としての民営企業
民営企業は、中国の技術革新の主力でもあります。公式統計によると、民営企業は次のような役割を担っています。
- 特許などのイノベーションの70%を創出
- 「専門性の高い中小企業」などとされる「専精特新」の企業の80%を占める
- ハイテク企業の90%を担う
新法は、こうした民営企業の役割を踏まえ、先端製造業、人工知能(AI)、グリーンエネルギーなど、中国が「新しい質の高い生産力」と位置づける分野への民間投資を奨励しています。
サイバーセキュリティ企業・奇安信科技集団の董事長である斉向東氏は、知的財産権の保護と研究開発支援を法律で保障したことにより、「技術企業がためらうことなく世界市場で競争できる」と評価しています。
新しいビジネスモデルと「実験の余地」
民営経済促進法は、最先端のテクノロジーや新しいビジネスモデルにも目配りしています。北京の中央財経大学の劉春生准教授は、論説の中で、この法律が革新的なビジネスに対して「一定の実験の余地」を認めている点を指摘しました。
すぐに細かく規制するのではなく、まずは新しい取り組みを試すことを認め、その中でルールを整えていくというスタンスです。デジタル経済が急速に拡大する中で、規制とイノベーションのバランスをどう取るかという課題に、法制度として応えようとしていると言えます。
世界経済の不透明感と「法の力」
このタイミングでの法制化には、世界経済の不透明感という背景があります。山東財経大学の李欣副所長は、世界経済が複雑な環境にあり、米国による関税の影響も残る中で、「期待を安定させることが急務になっている」と指摘します。
政府の行動を法律で明確に縛ることは、世界貿易機関(WTO)のルールに沿うだけでなく、民営企業が国際競争に参加する際の「コンプライアンス(法令順守)の枠組み」を提供する狙いもあるとされています。法の透明性を高めることで、国内外の企業にとって予見可能性の高いビジネス環境を整えようというわけです。
民営経済が中国経済にもたらす重み
民営経済促進法は、単なる企業支援策にとどまらず、中国経済全体の構造とも深く関わっています。公式データによれば、民営企業は次のような役割を担っています。
- 国内総生産(GDP)の60%以上を創出
- 都市部の雇用の80%を支える
このように、民営企業は成長と雇用、社会の安定にとって欠かせない存在になっています。低圧電気機器メーカー・正泰集団の南存輝董事長は、この法律について「民営経済が抱えていた『身分的不安』を根本的に和らげ、国家が民営企業を重視し、揺るぎない支持を示したものだ」と評価し、期待の高まりを強調しています。
日本の読者が押さえておきたいポイント
日本を含む海外から中国経済を見ている読者にとって、民営経済促進法は次のような意味を持ち得ます。
- 中国ビジネス環境のルールが法律として明確化されたこと
- 民営企業への市場開放やイノベーション支援が中長期で続く可能性があること
- 民営企業が中国経済の主役として位置付けられたこと
もちろん、法律がどこまで現場で実行されるかは、今後の運用次第です。ただ、少なくとも制度面では、民営企業の役割を正面から認め、公平な競争条件を整えようとする方向性が明確になったと言えます。
中国の国際ニュースや経済動向に関心のある読者にとって、この法律の施行は、今後のビジネス環境やサプライチェーン、技術協力のあり方を考えるうえで、重要な一つの節目となりそうです。
Reference(s):
China's private economy enters new era as landmark law takes effect
cgtn.com








