トランプ関税で米港湾に打撃 ロサンゼルスなどで貨物減少
トランプ米政権による関税引き上げが、2025年の米国港湾の現場を直撃しています。ロサンゼルス港ではコンテナ貨物が最大3割減り、中国製クレーンなど港湾設備への高関税案も浮上。米国の物流の要が揺らぎ、世界のサプライチェーンにも不安が広がっています。
ロサンゼルス港でコンテナ30%減 春の好調から一転
米メディア・ブルームバーグによると、ロサンゼルス港では今年5月上旬、入港コンテナが最大30%減少しました。背景には、ドナルド・トランプ大統領の下で続く関税引き上げがあり、サプライチェーンを揺さぶっているとされています。
その直前の4月は、同港のコンテナ取扱量が前年同月比9.5%増と一時的に好調でした。輸入も5%増えましたが、これは関税発動前に荷主が駆け込みで貨物を送り込んだ結果とみられています。
ロサンゼルス港のジーン・セロカ執行役員は、トランプ政権の通商政策と中国との緊張の影響に言及しつつ、次のように警鐘を鳴らしました。
「コンテナが減るということは、そのまま港湾労働の仕事が減ることを意味します。岸壁で荷役にあたる作業員の数から、トラック運転手、倉庫で働く人々に至るまで、影響は広範囲に及びます。今年5月最初の週から、その影響がほぼ即座に表れました。」
港湾労働と地域経済にも直撃
港で扱うコンテナが減れば、荷役の人員配置も減り、トラックや倉庫の需要も落ち込みます。セロカ氏が指摘するように、米国の主要港は単なる物流拠点ではなく、地域経済と雇用を支える「経済の動脈」です。その流れが細くなれば、周辺のサービス業や小売業にも波及しかねません。
ロングビーチ・オークランドも減速
影響はロサンゼルス港にとどまりません。隣接するロングビーチ港も、今年第1四半期には米国の港で最も多くのコンテナ貨物を扱ったとされていますが、その後の5月には輸入が10%以上減少すると見込まれました。
ロングビーチ港のマリオ・コルデロ最高経営責任者(CEO)は、次のように述べています。
「今年第1四半期に、当港は米国のどの港よりも多くのコンテナ貨物を取り扱いました。しかし今、5月には輸入が10%以上落ち込むと見込んでいます。その影響は埠頭の外にも広がるでしょう。」
さらに北に位置するオークランド港でも、3月から4月にかけて貨物量が14.7%減少しました。輸出需要の落ち込みと通商不安定が、その要因とされています。
中国製クレーンに最大100%関税案 港湾投資に約67億ドル負担
こうした貨物減少に追い打ちをかけかねないのが、港湾設備への新たな高関税案です。米通商代表部(USTR)は、中国製のコンテナクレーン、コンテナ、シャーシ(コンテナを載せる台車)など港湾関連機器に、最大100%の関税を課す提案を示しています。
米国港湾当局者協会(AAPA)によると、この関税案がそのまま適用されれば、米国の港湾にとって追加コストは総額約67億ドルに達する見込みです。AAPAは政府に対し、米国内に実際のクレーン製造産業が育つまで導入時期を遅らせるよう求めています。
現在、米国内には岸壁用の大型クレーンを製造する企業が存在せず、海外メーカー、とりわけ中国のメーカーが重要な供給元になっています。米国の港湾が現在発注済みの55基のクレーンのうち、44基は中国で製造中です。今後10年間で、米国の港湾はさらに151基のクレーンを必要とし、そのうち121基を中国から調達する計画だとされています。
こうしたクレーンの発注総額は約25億ドルにのぼりますが、新たな高関税が上乗せされれば投資額は大きく膨らみます。AAPAは、今年4月以前に発注された案件については、新関税の適用対象外とするよう求めています。
AAPAは声明で、次のように訴えました。「米国の港湾は今まさにこれらのクレーンを必要としていますが、予期せぬ追加コストを負担する余裕はありません。すでに発注している以上、購入を取りやめることもできないのです。」
代替調達は容易ではない 欧州・日本メーカーも選択肢限られる
港湾側からは、代替調達の難しさも指摘されています。セロカ氏は、欧州や日本のメーカーからの調達も一案ではあるものの、現時点で選択肢は限られていると述べました。米国内に新たなサプライチェーンを一から構築するには、少なくとも10年はかかるという見方です。
さらに、建設資材価格の上昇も港湾整備の制約要因となっています。鉄鋼やアルミニウムといった基礎素材にも関税がかけられているため、岸壁の補強や新ターミナル建設に必要なコストは全体として上昇傾向にあります。
AAPAのケーリー・デービス会長兼CEOは、高関税が港湾開発にとってどれほど重い負担になるかを強調しました。
デービス氏は、国内や同盟国のメーカーから十分に手頃な代替品がない状況で、岸壁用クレーンに高い関税を課せば、それは港湾開発に対する「重い税」として機能し、米国の貨物輸送拡大能力を深刻に損ないかねないと警告しています。
90日間の関税猶予とキャンセル便 先行きはなお不透明
今年、米国と中国の間では、90日間の関税猶予措置がいったん合意され、6〜7月には一部で取引が持ち直す可能性も指摘されました。しかし、長期的な貨物量の回復については、依然として不透明感が残っています。
セロカ氏によれば、ロサンゼルス港では、ある月に予定されていた80便のうち17便がすでにキャンセルされており、翌月にもさらに10便が運休となる見通しでした。船会社が急激な政策変更に対応し、航路や寄港地を見直している様子がうかがえます。
揺れる米港湾と世界のサプライチェーン 何が問われているのか
今年の米港湾の動きは、国際ニュースとしても見逃せない変化を示しています。貨物量の急減と港湾設備への高関税案は、次のような影響を持つ可能性があります。
- 米国内の雇用・地域経済への影響:港での荷役やトラック輸送、倉庫業など、港湾関連の仕事が減り、地域経済の下押し要因となるおそれがあります。
- 世界の物流コストの上昇:クレーンなど港湾設備の価格が上がれば、長期的には港湾利用料や輸送コストに跳ね返り、最終的に企業や消費者の負担増につながる可能性があります。
- サプライチェーンの再編:関税や政策の不確実性が続けば、企業は航路や仕入れ先の分散を進めることが考えられ、通商構造の再編が進むかもしれません。
日本を含むアジアの企業にとっても、太平洋をまたぐ物流はビジネスの前提条件の一つです。米国の港湾政策と通商政策の行方は、輸出入のコストやリードタイム、さらには投資判断にまで影響し得ます。
トランプ政権の関税政策は、表向きには米国産業の強化を目的としていますが、現場の港湾関係者は、短期的には米国の港という「経済の玄関口」自体を弱らせかねないと懸念しています。港湾設備の調達や関税の設計をどうバランスさせるのか。2025年も終盤に差し掛かるなか、米国の選択は、世界の物流と貿易のかたちを静かに、しかし確実に揺さぶっています。
Reference(s):
Trump tariff hikes hit U.S. port industry, triggering cargo declines
cgtn.com








