米国小売に関税ショック ターゲットとウォルマートが警鐘
2025年12月時点で、米国の小売大手が相次いで関税コストの重さを訴えています。ターゲットとウォルマートの発言から、トランプ政権の通商政策が企業の業績と雇用にどう影響しているのかを整理します。
このニュースのポイント
- ターゲットが今年の売上見通しを下方修正し、その要因の一つとして関税負担を挙げたこと
- ウォルマートが、中国との貿易で関税が145%水準、他国からの輸入にもほぼ50%の関税がかかるような環境は、小売業にも米経済にも望ましくないと警鐘を鳴らしたこと
- ウォルマートは約1500人の人員削減も進めると報じられ、関税と雇用の関係にも注目が集まっていること
関税コストが米国小売を直撃
複数の米国大手小売企業が、最近公表した決算や説明会の場で、関税コストの上昇が逆風になっていると明らかにしました。報告によると、トランプ政権の貿易・通商政策に伴う関税が、売上や利益だけでなく、中長期の事業計画にも影響を与え始めているといいます。
輸入品にかかる関税が上がると、企業は次のいずれか、あるいは組み合わせで対応せざるを得ません。
- 自社の利益を削ってコストを吸収する
- 販売価格に上乗せし、消費者に負担を転嫁する
- 仕入先や生産拠点を見直す
この調整には時間とコストがかかるうえ、政策がどう変わるか先が読みづらいこともあり、経営陣にとっては大きな不確実性となっています。
ターゲット:売上予測を下方修正、関税を主要因の一つに
米小売大手ターゲットは、第1四半期の業績が想定を下回ったことを受け、通期の売上見通しを引き下げました。同社の最高財務責任者(CFO)、ジム・リー氏は、見通しの修正要因として関税の影響を強調しています。
リー氏は、最近の説明の中で、おおむね次のように述べています。
第1四半期で見られたテーマの多くは、第2四半期にも続くとみています。売上へのプレッシャーに加え、関税の影響や追加コストが向かい風になります。
つまり、ターゲットは、関税負担の増加を一時的なノイズではなく、少なくとも短期から中期にかけて続く構造的なリスクとして見ていることになります。売上成長が鈍るなかでコストだけが増えれば、利益率は圧迫されます。
ターゲットのような総合小売企業は、衣料品、日用品、家電、玩具など幅広いカテゴリーで海外からの仕入れに依存しています。そのため、関税が上がると影響範囲も広くなりがちです。
ウォルマート:145%関税シナリオに強い危機感
世界最大級の小売企業であるウォルマートも、同様の懸念を示しました。第1四半期の決算説明の中で、CFOのジョン・デービッド・レイニー氏は、関税が再び大きく引き上げられる可能性について警告しています。
レイニー氏は、仮に中国との貿易に145%の関税がかかり、他の国からの輸入品にもほぼ50%の関税が課されるような環境になれば、それは小売企業にとっても、米国経済全体にとっても望ましい結果ではない、と指摘しました。
ここで語られているのは、すでに現実になっている状況ではなく、あくまで想定される「高関税シナリオ」です。しかし、企業の最高財務責任者が具体的な数字まで挙げて懸念を表明したことは、現場で感じている圧力の強さを物語っています。
さらに、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、ウォルマートは約1500人の人員削減を進める計画も明らかにしました。人員削減の背景には、デジタル化や業務効率化といった構造的な要因もありますが、コスト全体を抑えたいという経営判断があるのは確かです。関税という外部要因が重なることで、雇用にも影響が及ぶリスクが高まっていることがうかがえます。
関税は誰が負担するのか:消費者、企業、そしてサプライヤー
今回のターゲットとウォルマートの動きは、関税政策の負担が最終的にどこに乗るのか、改めて問いかけるものです。
- 企業が価格に転嫁しきれない場合は、小売企業やサプライヤーの利益が削られる
- 価格に上乗せすれば、消費者の購入意欲が落ち、売上の伸びが鈍る可能性がある
- 一部の企業は、調達先を他国に切り替えることで対応を図るが、その過程で新たなコストやリスクが発生する
ターゲットとウォルマートのCFOは、それぞれの立場から「このまま関税が大きく引き上げられたままの環境が続けば、決して良い結果にはならない」と暗に示していると言えます。
日本とアジアへの波及:なぜ日本の読者に関係があるのか
一見すると、米国内の小売企業と関税の話は、日本の生活から遠いテーマに思えるかもしれません。しかし、グローバルなサプライチェーンが当たり前になった今、影響は日本やアジアにも波及します。
- 日本やアジアのメーカーは、ターゲットやウォルマート向けに多くの商品を輸出しており、発注量や価格交渉に波が及ぶ可能性がある
- 米国の消費が鈍れば、世界経済全体の成長ペースが落ち、日本企業の輸出や業績にも影響する
- 金融市場では、関税や通商政策をめぐるニュースが株価や為替の変動要因になり、日本の投資家や個人の資産形成にも関わってくる
今回の動きは、単に一企業の決算ニュースではなく、保護主義的な通商政策とグローバルなビジネス現場との摩擦が、具体的な数字や雇用の形で表れ始めている事例だと見ることができます。
これからの注目ポイント
今後、国際ニュースや経済ニュースを追ううえで、次のような点が焦点になりそうです。
- トランプ政権が、実際にどの程度まで高関税政策を続けるのか、それとも見直しに動くのか
- ターゲットやウォルマートが、値上げ、コスト削減、調達先の多様化など、どの戦略を組み合わせて関税負担に対応していくのか
- 米国の消費者が、もし価格上昇が続いた場合にどのように行動を変えるのか(購買の抑制、ブランドの切り替えなど)
- 関税の動きに対して、日本やアジアの企業がどのようなリスク分散策や投資判断を取るのか
関税や通商政策は、政治的な対立構図として語られがちですが、その影響は最終的に、企業の決算数字や働く人の雇用、そして私たちの生活コストに跳ね返ります。
目立つ見出しだけで善悪を決めつけるのではなく、今回のような企業の具体的な声に目を向けることで、ニュースの意味合いをより立体的にとらえることができます。米国小売の動きは、2025年の世界経済を考えるうえで、引き続き重要な観察ポイントになりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








