中国、高齢者の社会参加を後押し ボランティアと学びで「アクティブな老後」
中国で高齢化が進むなか、高齢者のボランティア活動や就業、学び直し、旅行などを後押しする新たなガイドラインが打ち出されました。高齢者を「負担」ではなく「社会の資産」ととらえ、アクティブで意味のある人生を支えることをめざしています。
中国で進む高齢者の社会参加支援
このガイドラインは、19の政府部門が最近共同で公表したもので、高齢者の社会参加を幅広く支援する方針を示しています。中国は世界最大の高齢者人口を抱えており、2024年末時点で60歳以上の人は3億1000万人を超え、全人口の5分の1以上を占めました。今後も人数・割合ともに増え続けると見込まれており、高齢化への対応は喫緊の課題です。国家レベルの高齢化対策に関わる専門家であるWang Yongchun氏は、このガイドラインについて「目の前の課題に対応するだけでなく、今後数十年の持続可能な社会発展の土台を築くうえでも重要だ」と評価しています。
ボランティアで社会に貢献するシニア
中国では、高齢者が社会活動に参加する代表的な手段のひとつがボランティアです。2003年には、高齢者が発展途上地域の支援などに携わることを促す「銀齢行動」プロジェクトが始まりました。これまでに全国の高齢ボランティアは延べ700万回以上活動に参加し、4000を超える支援プログラムに関わり、4億人にのぼる人々を支援してきたとされています。今回のガイドラインは、この取り組みを一段と進め、ボランティア活動の内容を多様化することや、サービス提供の方法を工夫すること、高齢ボランティア向けの保険商品やサービスを充実させることなどを打ち出しています。
働き続けたい人への就業支援と学び直し
ガイドラインはまた、高齢者向けの就業機会を「多様で個別性の高いもの」にする重要性を強調しています。働き続けたい人が自分の経験や希望に合った仕事を選べるようにするためです。その一環として、公的な研修センターや職業訓練機関が、高齢者に必要なスキル向上プログラムを提供することも求めています。China Population Associationの副会長であり、中国北部の天津市にある南開大学の教授でもあるYuan Xin氏は「高齢者は社会の負担ではなく資産だという点を強調する必要がある」と語ります。生涯にわたって社会に貢献したいと願う人が活躍できる環境を整えることは、本人の自己実現につながるだけでなく、中国の現代化を進めるというより広い目標の達成にもつながるとしています。こうした流れのなかで、中国では法定退職年齢を段階的に引き上げるなど、高齢者が後半生をどのように過ごすかについて選択肢と柔軟性を広げる政策も打ち出されています。
全国に広がるシニア大学と「新しい学び」
高齢者の「学び直し」も、中国で広がりを見せています。ガイドラインは、全国のシニア大学のネットワークを拡大し、旅行と介護を組み合わせた「旅行型介護サービス」の発展を支援し、高齢者向けのスポーツイベントを企画することなどを盛り込んでいます。北京市に住む65歳のChen Yingさんは「参加できる活動が増えたおかげで、家でスマートフォンを見続ける時間が減り、外に出て社会とつながる時間が増えた」と話します。中国北東部、遼寧省出身で71歳の元医師Yang Hongさんは、現在シニア大学で音楽や伝統中国医学を学ぶ常連の学生です。「シニア大学に通うのは知識を得るためだけではありません。より前向きなライフスタイルや考え方を身につけることでもあるのです」と語ります。Yangさんは、中国にある約7万6000校のシニア大学・学校に通う2000万人超の学生の一人であり、これが世界最大規模の高齢者学習コミュニティを形成しているとされています。
老後を「新しい章」としてとらえる発想
中国では、SNS上でも老後のとらえ方を問い直す発信が共感を集めています。「60歳になるのは老いることを意味しない。本当にやりたいことを追い求め、大切なものを楽しむ新しい人生の章に入るということだ」という内容の投稿が最近大きな反響を呼び、多くの人から支持を集めました。専門家によれば、経済成長や生活水準の向上、平均寿命の伸びを背景に、中国では高齢期をめぐる物語が変わりつつあります。これまでの「ケア中心」の発想に加え、充足感や意味のある社会貢献を重視する方向にシフトしているという見方です。Yuan Xin氏は「人口高齢化が加速する時代には、課題が大きいほど、そこから機会を見いださなければならない」と述べ、今回のガイドラインの公表が社会全体に前向きな高齢観を育むきっかけになるとしています。
読者への問いかけ
中国のこうした動きは、高齢期をどのようにデザインするかを考えるうえで、他国の人びとにとっても示唆を与えるものです。高齢者がボランティアや学び、仕事、旅行などさまざまな形で社会と関わり続けるために、どのような制度や場づくりが必要なのか。読者一人ひとりが、自分自身や家族の「アクティブな老後」の姿を思い描きながら考えてみるきっかけになりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








