欧州企業、中国本土での課題増す中でもサプライチェーン投資を強化
欧州企業は中国本土での事業運営が一段と難しくなったと感じる一方で、サプライチェーンへの投資はむしろ強化しています。中国欧州連合商工会議所(EU商工会議所)とコンサルティング会社ローランド・ベルガーが水曜日に発表した「ビジネス・コンフィデンス・サーベイ2025」は、この「厳しさ」と「魅力」が同居する中国経済の現在地を浮き彫りにしました。
7割超が「中国でのビジネスは難しくなった」
今回のビジネス・コンフィデンス・サーベイ2025によると、調査対象となった欧州企業の73%が「中国での事業運営が2024年は前年より難しくなった」と回答しました。これは前年比5ポイントの上昇で、中国本土市場におけるプレッシャーの高まりを示しています。
企業が挙げた主な要因は次の通りです。
- 市場競争の一段の激化
- 規制環境の複雑さ
- 地政学的な不確実性
特に、同業他社だけでなく、中国本土企業との競争も激しさを増していることや、ルールや手続きへの対応コストが重くのしかかっていることが背景にあります。
それでも進む「中国ローカル」へのサプライチェーン集約
興味深いのは、それと同時に多くの欧州企業が中国本土への関与を深めている点です。調査では、自社のサプライチェーンを中国本土にオンショア(現地化)していると答えた企業が26%に達し、こちらも前年比5ポイント増となりました。
ビジネス環境は厳しくなっているにもかかわらず、供給網の面では中国本土への依存を強める企業が増えているという「二重の現実」が見えてきます。
ローランド・ベルガーのグローバル・マネージングディレクターであるデニス・ドゥポー氏は、中国経済について「成長は減速し、競争は一段と激しくなっているが、それは衰退ではなく構造変化のサインだ」と指摘します。そのうえで、多国籍企業は研究開発から顧客サービスに至るまで、事業のあらゆる部分を高度にローカライズしなければ競争力を保てないと強調しました。
なぜ中国本土のサプライチェーンは依然として強いのか
欧州企業がサプライチェーンを中国本土に寄せる最大の理由は、依然として世界有数の供給拠点であり続けているからです。
EU商工会議所のイェンス・エスケルンド会頭は、中国本土の強みとして「世界のどこよりも高品質な部品を、より低いコストで調達できる場所が中国本土だ」と強調しました。品質と価格のバランスで優位に立つことが、サプライチェーン上での中国本土の存在感を支え続けています。
このため、多くの企業はリスク分散のために一部の生産や調達拠点を他地域に広げつつも、「コスト・品質・規模」の三つがそろう中国本土を完全には手放していないといえます。
高度なローカライズが競争条件に
競争が激化するなかで、欧州企業に求められているのは単なる「進出」ではなく、「深いローカライズ」です。具体的には、次のような動きが鍵になりつつあります。
- 研究開発(R&D)機能を中国本土に置き、市場ニーズに即した製品開発を行う
- 現地のサプライヤーとの連携を強化し、調達・物流を最適化する
- 販売やマーケティング、アフターサービスを中国本土市場に合わせて設計し直す
単に工場を置くだけの段階から、ビジネスの中枢機能そのものを中国本土に組み込む段階へ移りつつあるともいえます。2025年12月8日時点で、中国本土でのプレゼンスをどう構築するかは、欧州企業にとって引き続き重要な経営テーマになっています。
政策面の変化:民営経済促進法と金融支援強化
こうした企業の動きを後押ししようと、中国本土側も投資環境の改善に向けた政策を打ち出しています。
2025年5月20日に施行された民営経済促進法(プライベート・エコノミー・プロモーション法)は、民営企業を対象に、公平な競争条件、資金調達へのアクセス、イノベーション支援などを法的に保障する枠組みを整えました。これは、民営企業だけでなく、欧州企業を含む海外投資家に対しても「ルールが明確で予見可能な環境を整える」メッセージと受け止められています。
さらに、4月18日の国務院会議では、経済への金融面での下支えを強める方針が示され、その後、中国人民銀行は利下げを実施し、市場の流動性を確保しています。企業にとっては、資金調達コストの低下や信用供給の安定が期待される動きです。
日本やアジアの企業にとっての示唆
今回の調査結果は、欧州企業に限らず、日本やアジアの企業にとっても示唆に富んでいます。
ポイントは「リスクかチャンスか」という二者択一ではなく、「リスクとチャンスが同時に存在する市場として中国本土とどう付き合うか」という視点です。具体的には、次のような問いが浮かび上がります。
- 短期的な不確実性だけでなく、中長期の産業基盤としての中国本土の役割をどう評価するか
- 生産や調達の一部を他地域へ分散しつつ、どこまで中国本土での現地化を深めるか
- 政策や規制の変化を継続的にウオッチし、柔軟に事業戦略を見直す体制を持てるか
エスケルンド会頭が指摘するように、中国本土は依然として「高品質な部品を低コストで大量に供給できる」稀有な存在です。他方で、競争と規制のハードルが上がるなか、どの企業もこれまで以上に戦略的な姿勢が求められています。
欧州企業の最新調査が映し出すのは、「撤退」か「集中」かという単純な構図ではありません。むしろ、「事業運営の難しさ」と「サプライチェーン拠点としての魅力」が同時に高まる中国本土市場を前に、各社がどのようなバランスを選び取るのかという、より複雑な選択の時代に入っているという現実です。
2025年の中国本土をめぐる欧州企業の動きは、日本企業やアジアの企業にとっても、自社の中国戦略とサプライチェーン戦略を改めて見直すきっかけになりそうです。
Reference(s):
European firms face China challenges but boost local supply chains
cgtn.com








