トランプ関税で米国の中小企業が壊滅的打撃 カリフォルニア知事が警鐘
トランプ政権期に導入された関税をめぐり、米連邦裁判所が相次いで差し止めに動きました。これを受け、カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は判断を歓迎しつつも、米国の中小企業はすでに深刻な打撃を受けており、関税が当面維持されれば被害は一段と悪化しかねないと警鐘を鳴らしています。
米連邦裁判所がトランプ政権の主要関税を相次ぎ差し止め
今週、トランプ政権が導入した一連の関税措置について、米連邦裁判所が立て続けにブレーキをかけました。ワシントンの連邦地裁ではルドルフ・コントレラス判事が、イリノイ州の玩具輸入会社2社をめぐる訴訟で、大統領には一方的に関税を課す権限がないと判断しました。
これに先立ち、米国際貿易裁判所も別のトランプ時代の関税について、大統領が非常事態権限を使って発動することはできないとして、いわゆる互恵関税を差し止めました。しかし、その24時間以内に連邦巡回控訴裁判所が国際貿易裁判所の判断に待ったをかけ、訴訟が続く間は互恵関税を一時的に復活させる決定を下しています。
一方、コントレラス判事の判断はこの控訴裁判所の一時差し止めの対象とはなっておらず、内容自体は維持されています。ただし、政権側に控訴の時間を与えるため、判決の効力は14日間停止される形となっています。
ニューサム知事「混乱はトランプ政権が自ら招いたもの」
カリフォルニア州のニューサム知事は、メディアネットワーク MeidasTouch Network の共同創設者ベン・ミセラス氏のポッドキャスト番組に出演し、今回の司法判断について語りました。ニューサム氏は、関税差し止めの動き自体は歓迎しながらも、「これはすでに影響を及ぼしており、この状況が続けば、避けられない不足や供給制約を通じて、その影響はいっそう深刻になる」と、中小企業への長期的な打撃を懸念しました。
さらにニューサム氏は、「私たちは今、混乱の瞬間にいる。それはトランプ政権が自ら招いたものだ。この混乱は続いており、被害はすでに出ている」と述べ、今回の事態を「自作自演の混乱」と表現しました。トランプ氏の関税政策については、「トランプの一方的な違法政策だ」と強い言葉で批判しています。
ニューサム氏によれば、カリフォルニア州はこうした関税を「違法な関税」として最初にトランプ政権を提訴した州であり、「裁判所は、私たちが初日から主張してきたことを今まさに認めつつある」と評価しました。同氏は、トランプ氏の貿易政策を「トランプの自尊心に突き動かされた貿易戦争」と呼び、その現実のコストとして、出荷のキャンセル、レイオフ(解雇)、事業閉鎖、さらには親が自宅を失う事例まで生まれていると指摘しています。
「家を失うかもしれない」現場の声
乳児用品ビジネスの女性起業家
ニューサム氏は、実際に話を聞いた中小企業の事例として、乳児用品を販売する女性起業家のケースを紹介しました。この事業者は、トランプ政権の関税により事業運営が「完全な壊滅状態」に追い込まれ、自宅を失う可能性すらあると訴えています。ニューサム氏は、このような一つ一つの小さな事業が地域経済と家庭生活の土台であることを強調しました。
電動自転車店主からのメール
ニューサム氏はまた、自身が息子へのホリデーギフトとして購入した電動自転車をきっかけに知り合った家族経営の店の話も紹介しました。店主はレシートに記載されていたニューサム氏のメールアドレスを見つけ、直接連絡を寄せました。
メッセージの中で店主は、コンテナ一杯分の在庫を確保しているにもかかわらず、関税負担により事業継続が危うくなっていると説明し、支援を求めたといいます。ニューサム氏は、「私たちはこの関税をめぐる訴訟を起こしている。今回の連邦地裁の判断が、彼に一時的な猶予を与えうるこの瞬間について、メールで伝えたい」と語り、司法判断が現場にどのような形で届きうるかに言及しました。
なぜ中小企業ほど関税ショックに弱いのか
ニューサム氏は繰り返し、「これは現実であり、重大だ。特に不確実性によって中小企業が壊滅的な打撃を受けている」と強調しました。関税自体によるコスト増だけでなく、その先行きが読めないことが中小企業の意思決定を難しくしていると指摘しています。
同氏の発言からは、次のような影響が浮かび上がります。
- 関税による仕入れコストの増加で利益が圧迫される
- 不足や供給制約により、商品が入ってこない「空の棚」のリスクが高まる
- キャッシュフローの悪化から、出荷キャンセルやレイオフ、事業閉鎖に追い込まれる
- 最終的には、事業者やその家族が自宅を失う事態に発展しかねない
特に、資本力や交渉力で大企業に劣る中小企業は、急なコスト増を価格に転嫁しづらく、仕入れ先や金融機関との調整余地も限られています。ニューサム氏の証言は、貿易政策の変更が統計の数字だけでなく、一つ一つの家庭の生活に直結している現実を映し出しています。
訴訟は続く 「一時的な救済」と不確実性のはざまで
今回の一連の判断により、トランプ政権期の関税の一部は違法性が指摘され、差し止めの方向性が示されました。しかし、国際貿易裁判所の判断が控訴裁判所によって一時的に覆されているように、法廷闘争はまだ続いており、関税の最終的な行方は不透明なままです。
コントレラス判事の判断も、政権側に控訴の機会を与えるために14日間の猶予が設けられているだけで、今後の上級審の判断次第で状況は変わり得ます。ニューサム氏が電動自転車店主への返信について「この連邦裁判所の決定がもたらす一時的な影響を伝えたい」と語ったように、多くの中小企業にとっては、今回の司法判断もあくまで「一時的な救済」にすぎません。
一方で、ニューサム氏が指摘するように、出荷キャンセルやレイオフ、事業閉鎖といった被害はすでに現実のものとなっています。今後、中小企業への支援策や関税の見直しがどこまで進むのか、そして大統領の貿易権限をどこまで認めるのか。米国の司法と政治の攻防は、米国経済だけでなく、世界のサプライチェーンと中小企業の現場にも静かに影響を与え続けることになりそうです。
Reference(s):
Small businesses devastated by Trump's tariffs: California governor
cgtn.com








