2025年の中国経済成長率 世界の投資銀行が一斉に上方修正
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2025年の中国経済について、ゴールドマン・サックスやJ.P.モルガンなど世界の大手投資銀行が相次いで成長率予測を引き上げています。中国の景気下支え策と中国・米国の通商協議の進展が、成長の持続力への評価を高めているためです。
世界の投資銀行が一斉に上方修正
今年5月、中国のGDP成長率をめぐり、主要投資銀行が2025年の見通しをそろって上方修正しました。背景には、中国の景気を重視した政策運営と、ジュネーブで行われた中国・米国の通商協議が実務面で成果を上げたことがあります。
見通しを引き上げたのは、ゴールドマン・サックス、野村、J.P.モルガン、モルガン・スタンレーに加え、スタンダードチャータードやUBSなどです。多くの機関が、中国の成長率を4パーセント台半ばへと引き上げており、中国経済の底堅さを示すシグナルと受け止められます。
ゴールドマン・サックス 輸出見通しを大幅改善
ゴールドマン・サックスは5月13日のリポートで、中国の2025年GDP成長率予測を4パーセントから4.6パーセントへと0.6ポイント引き上げました。
チーフ中国エコノミストのシャン・フイ氏は、2025年の輸出額の伸び見通しをマイナス5パーセントからゼロへと引き上げたと説明。これに伴い、支出側から見たGDPの内訳では、純輸出の成長率への寄与度をマイナス0.5ポイントからプラス0.1ポイントへと上方修正しました。
野村 貿易摩擦の緩和と消費の強さ
野村も5月19日のリポートで、中国の2025年GDP成長率予測を引き上げました。同社は、中国と米国の通商摩擦の緩和が、とくに第2四半期の中国経済にとって大きな追い風になると見ています。90日間の関税停止期間が設けられたことで、輸出企業が前倒しで出荷を進める可能性があるためです。
加えて、中国では消費財の買い替えを促すトレードインプログラムが拡充され、第1四半期の小売売上高は堅調に推移しました。中国国家統計局によると、4月の社会消費品小売総額は前年同月比5.1パーセント増と発表されています。
チーフ中国エコノミストのルー・ティン氏は「第2四半期の成長率見通しを前年同期比3.7パーセントから4.8パーセントへ引き上げ、第3・第4四半期もそれぞれ3.6パーセントから4パーセントへ小幅に上方修正した」と述べました。通年では、2025年のGDP成長率予測を4パーセントから4.5パーセントへ引き上げています。
J.P.モルガン 積極的な財政政策を評価
J.P.モルガンは、中国の2025年GDP成長率予測を4.1パーセントから4.8パーセントへと上方修正しました。チーフ中国エコノミストのチュー・ハイビン氏は、一連の景気下支え策が、貿易面の逆風があるなかでも安定した成長を支えていると指摘します。
同氏によれば、中国では昨年9月末以降、ここ数年で最も大きく広範な政策調整が行われてきました。2025年には、GDP比でおよそ4パーセントの財政赤字目標を掲げ、経済を下支えするために政府債の発行も拡大するなど、より積極的な財政政策が打ち出されています。
モルガン・スタンレー 消費財買い替えとAIが成長の柱に
モルガン・スタンレーも、中国の2025年GDP成長率予測を0.3ポイント引き上げ、4.5パーセントとしました。同社のチーフ中国エコノミストであるシン・ズーチャン氏は、個人消費と公共部門の支出拡大が成長の主な牽引役になると見ています。
- 個人消費では、耐久財に限られていた買い替え支援の対象が、より幅広い消費財へ拡大されること
- 公共部門では、政府の債務スワッププログラムにより、公的消費が増加すると見込まれていること
さらにシン氏は、2025年のAI関連の技術ブレークスルーが、中国のサプライチェーンとイノベーション能力の強さを改めて市場に印象づけたと指摘します。インフラ、データ、人材、エネルギーが統合されたエコシステムを背景に、AIの普及が中期的に中国の潜在成長率を押し上げ、労働力に相当する付加価値を生み出すとみています。
スタンダードチャータードとUBS 政策効果と信頼感を強調
スタンダードチャータードやUBSなども、中国経済のレジリエンスに注目しています。スタンダードチャータードは5月21日のリポートで、政府の消費財買い替え支援策の対象となる商品について小売売上高が強い伸びを示したことや、政府債の前倒し発行に支えられたインフラ投資・製造業投資の拡大などを挙げました。こうした要因は、第2四半期の成長を引き続き支えると分析しています。
UBSの中国グローバル市場責任者であるトーマス・ファン氏は、一連の政策パッケージが成長の安定化に向けた強いメッセージとなり、実体経済と資本市場に確かな信認を与えていると評価しています。
国際金融トップの訪中が示すもの
最近では、シティグループ会長のジョン・デューガン氏やカーライル・グループの最高経営責任者ハーベイ・シュワルツ氏など、国際金融界の要人が相次いで中国を訪れています。彼らは中国経済の先行きに前向きな見方を示すとともに、中国との長期的な協力関係を深める意欲を表明しています。
日本の読者が押さえたい3つの視点
今回の一連の見通し引き上げから、日本の投資家やビジネスパーソンが読み取れるポイントは少なくありません。
- 多くの機関が4パーセント台半ばの成長を想定していることは、中国経済が安定した中程度の成長を維持すると見る見方が広がっていることを示します。
- 消費財の買い替え支援やインフラ・製造業投資、AI関連分野など、政策が重点を置く領域が明確になっており、企業や投資家にとって注目すべきセクターが見えてきます。
- 中国と米国の通商協議の進展が輸出見通しを押し上げている一方で、関税停止期間のようなタイムリミットも意識されており、国際情勢の変化をきめ細かく追う必要性が増しています。
2025年12月の今、中国経済がどこまでこうしたシナリオに沿って推移しているかを確認することは、来年以降の世界経済や市場環境を考えるうえでも重要になっています。
まとめ 中国経済をどう位置づけるか
ゴールドマン・サックスやJ.P.モルガン、モルガン・スタンレー、野村などの大手金融機関は、2025年の中国経済について一様に見通しを引き上げました。その背景には、積極的な財政政策や消費刺激策、通商協議の進展、そしてAIをはじめとする技術革新があり、中国経済の成長ポテンシャルに対する評価が高まっていることがうかがえます。
日本からニュースを追う私たちにとっても、中国経済は世界経済や金融市場を考えるうえで欠かせない存在です。数字の上方修正という表面的なニュースの先にある、政策の方向性や産業構造の変化に目を向けることが、次の一歩を考えるヒントになりそうです。
Reference(s):
Major investment banks raise 2025 China economic growth forecasts
cgtn.com








