OPEC+が7月から41万バレル増産へ 原油価格と米シェールへの影響
主要産油国でつくるOPEC+が、2025年7月から日量41万1,000バレルの原油増産を行う計画を決めました。原油価格が4年ぶりの安値圏にあるなか、市場シェアを優先する戦略が世界のエネルギー市場に波紋を広げています。
決定のポイント:7月から41万バレル増産
OPEC+の8か国(サウジアラビア、ロシア、イラク、アラブ首長国連邦(UAE)など)が会合で合意し、2025年7月に日量41万1,000バレルの増産を実施する計画です。これは、今年4月から続く増産ステップの3か月連続の引き上げにあたり、4月以降の増産幅は合計で日量137万バレル、当初のボランタリー減産220万バレルの約62%が市場に戻る見通しとなりました。
OPEC+は、OPEC加盟国にロシアなどの産油国が加わった枠組みで、世界の原油生産のおよそ半分を占めます。今回の増産には、市場シェアの回復に加え、加盟国に減産合意の順守を促すねらいもあるとみられています。
背景:自主減産の段階的解除と市場シェア争い
今回の決定は、OPEC+が2025年4月から始めた自主減産(日量220万バレル)の段階的な解除の一環です。グループは、世界経済の見通しが堅調で、在庫も低水準にあるなど「健全な市場のファンダメンタルズ(基礎条件)」を理由に増産を正当化しています。
一方で、市場関係者の目には、OPEC+が何よりも市場シェアの奪還を優先しているように映ります。オニックス・キャピタル・グループのアナリスト、ハリー・チリングリアン氏は「市場シェアが最優先であることを、今日の決定は示している。価格で望む収入が得られないのであれば、ボリュームで稼ごうとしている」と指摘しています。
原油価格への影響:4年ぶり安値での増産
ただ、増産が決まった時点で、国際的な原油価格はすでに下押しされていました。2025年4月には、原油価格が1バレル当たり60ドルを下回り、4年ぶりの安値をつけています。アナリストたちは、ここからさらにOPEC+の供給が増えれば、価格への下押し圧力が一段と強まりかねないと警告していました。
OPEC+による増産は、すでに原油市場全体の供給を押し上げており、価格の重しとなっています。この圧力は、OPEC+の加盟国自身を含むすべての産油国を苦しめますが、とりわけ影響が大きいのが米国のシェール産油企業だと専門家は見ています。
米シェール産業にとっての厳しい現実
米シェール企業は、ここ3年間でコストが上昇してきました。一方で、世界的な原油価格の低迷により収入は減少しています。背景の一つには、米国の関税政策がもたらした経済への打撃があり、それが需要の弱さや価格下落につながっていると分析されています。
米国中南部の産油地域でも、厳しさが数字に表れています。米ダラス連邦準備銀行がテキサス、ニューメキシコ、ルイジアナの100社以上の石油・ガス企業を対象に行った2025年第1四半期の調査によると、シェール企業が採算ラインを確保するには、平均して1バレル65ドルの価格が必要だとされています。
- OPEC+の増産で価格が下がるほど、米シェール企業の採算は悪化する
- コスト上昇と収入減少が重なり、投資や雇用の抑制につながる可能性がある
- 一方で、原油輸入国にとっては燃料コストの低下という恩恵もある
日本・アジアの消費者にとって何を意味するか
日本を含むアジアの多くの国・地域は、エネルギーの大部分を輸入に頼っています。短期的には、OPEC+の増産とそれに伴う価格下落は、ガソリン代や電気料金の抑制要因となり得ます。
一方で、産油国の財政悪化やエネルギー企業の投資抑制が長引けば、中長期的な供給不安や価格の乱高下を招くおそれもあります。市場シェアをめぐる攻防は、単に産油国同士の駆け引きにとどまらず、世界のエネルギー転換や気候変動対策のペースにも影響を与えかねません。
OPEC+が選んだ「価格よりボリューム」優先の戦略は、誰にとって得なのか、そしていつまで続くのか。原油価格の動きだけでなく、その背後にある産油国の思惑や、米シェール産業の苦境、関税などの政策要因をセットで見ることで、ニュースの風景が違って見えてきます。
Reference(s):
OPEC+ to hike oil production in July, prioritizing market share
cgtn.com








