中国レアアース輸出管理で自動車生産に懸念 米大手が工場停止リスクを警鐘
中国によるレアアース関連製品の輸出管理をめぐり、世界の自動車メーカーが部品不足と工場停止のリスクを訴えています。今年の措置と米業界団体の緊急書簡は、グローバルなサプライチェーンの脆さをあらためて浮き彫りにしました。
世界の自動車業界に広がるレアアース不足への不安
自動車業界が懸念しているのは、中国からのレアアース磁石の供給が滞ることで、車の安全装置や電装品に欠かせない部品が作れなくなることです。ワイパーのモーターからアンチロックブレーキのセンサーまで、多くの部品にレアアース磁石が使われています。
各国の自動車メーカー幹部は、こうした磁石の供給が途絶えれば、数週間以内に自動車工場の稼働が止まりかねないと警鐘を鳴らしています。
米大手自動車団体がトランプ政権に緊急書簡
5月9日付の書簡で、ゼネラル・モーターズ、トヨタ、フォルクスワーゲン、現代自動車などを代表する業界団体「アライアンス・フォー・オートモーティブ・イノベーション」は、トランプ政権の当局者に対し、レアアースとレアアース磁石へのアクセスに深刻な懸念を伝えました。
書簡は、安定した供給が確保できなければ、自動車サプライヤーは次のような重要部品を生産できなくなると指摘しています。
- 自動変速機
- スロットルボディ(エンジンへの空気の流れを制御する装置)
- オルタネーター(発電機)
- 各種モーターやセンサー
- シートベルト、スピーカー、ライト、パワーステアリング用部品、カメラ など
さらに、部品が作れなくなれば、自動車工場自体の稼働にも直結すると警告しています。書簡には、部品不足が長引けば、生産台数を減らさざるを得ないだけでなく、「車両組立ラインの停止」にまで至る可能性があると記されました。
この書簡には、自動車部品メーカーを代表する団体「MEMA(ザ・ビークル・サプライヤーズ・アソシエーション)」も署名しており、完成車メーカーと部品メーカーがそろって危機感を示した形です。
背景にある中国のレアアース輸出管理措置
こうした懸念の背景には、今年4月上旬に中国が発表したレアアース関連の輸出管理措置があります。中国は、中・重レアアース7種類に関連する一部品目について、輸出管理を強化すると発表しました。
中国側は、この措置について、国家の安全と利益を守り、さらに軍事転用の防止など国際的な義務を果たすためだと説明しています。輸出管理とは、特定の品目を輸出する際に政府の許可などを義務付ける制度のことで、安全保障や国際ルールに基づき各国が運用している仕組みです。
先週の記者会見で、中国外交部の林剣報道官は、輸出管理の分野で関係国や地域との対話と協力を強化する用意があると述べました。また、中国はグローバルな生産とサプライチェーンの安定を維持することに引き続き取り組むと強調しました。
林報道官は、今回の輸出管理措置は国際的な慣行に沿うものであり、特定の国を狙い撃ちにしたものでも、差別的なものでもないと説明しています。
レアアース磁石はなぜそれほど重要なのか
レアアースとは、モーターや磁石、電子部品などに使われる特殊な金属の総称です。中でもレアアース磁石は、小型でありながら強力な磁力を持つため、自動車のさまざまな部位に組み込まれています。
具体的には、次のような用途が代表的です。
- 安全装置:アンチロックブレーキ用のセンサー、各種走行制御装置
- 快適装備:ワイパーモーター、パワーウインドウ、電動シートなどの駆動部
- 電動化関連:電動パワーステアリングや補機用モーター など
電気自動車や先進運転支援システムの普及が進むなか、車1台あたりが必要とするモーターやセンサーの数は増える傾向にあります。そのため、レアアース磁石の安定供給は、世界の自動車産業にとっていっそう重要性を増しています。
中国はレアアース関連産業で大きなシェアを持っており、新たな輸出管理が導入されたことで、各国の自動車メーカーや部品メーカーは、調達戦略や在庫の持ち方を見直す必要に迫られています。
中国の立場と国際社会の課題
今回の輸出管理措置について、中国は安全保障と国際義務の観点から正当性を主張しつつ、サプライチェーンの安定維持にも取り組む姿勢を示しています。一方、自動車業界は、規制の内容や運用が生産現場にどう影響するかを慎重に見極めようとしています。
安全保障上重要な物資の流れをどう管理するかという課題は、中国に限らず多くの国に共通するテーマです。その一方で、世界の産業は国境を越えたサプライチェーンによって支えられており、過度な不確実性は企業活動にとって大きな負担となります。
今回の動きは、次のような論点を国際社会に突きつけています。
- 安全保障と国際義務を踏まえた輸出管理と、産業の安定的な成長をどう両立させるか
- 企業はどの程度まで特定の国や地域への依存を減らし、多様な調達先を確保すべきか
- 対立ではなく対話と協調の枠組みを、どのように具体的なルールや運用に落とし込むか
日本の読者にとっての意味
今回の書簡は米国の自動車業界とトランプ政権の間で交わされたものですが、その影響は米国内にとどまりません。世界の自動車産業は緊密につながっており、一つの市場で部品不足や価格高騰が起きれば、日本のメーカーや部品サプライヤーにも波及する可能性があります。
日本企業にとっては、次のような点が今後の重要なテーマになりそうです。
- 重要素材の在庫や調達先をどう分散し、リスクに備えるか
- レアアース使用量を減らす設計や、リサイクル技術の強化をどこまで進めるか
- 中国を含む関係国や地域との対話を通じて、透明性の高いルール作りにどう関わるか
効率性を追い求めてコストを下げることと、サプライチェーンの安全性を高めることは、しばしばトレードオフの関係にあります。今回のレアアースをめぐる動きは、私たちが「どこまで効率を優先し、どこから安全性や持続可能性を重視するのか」を考え直すきっかけにもなります。
ニュースをフォローする際には、中国の輸出管理の狙いや説明、自動車業界の危機感、そして各国が模索する具体的な対応策という三つの軸から見てみると、単なる素材不足の話にとどまらない広がりが見えてきます。
Reference(s):
Carmakers warn rare-earth shortage from China could halt production
cgtn.com







