習近平の福建時代:民営経済と改革開放を支えた「晋江経験」と厦門特区
中国東部の福建省は、習近平国家主席が17年以上にわたり働き、「第二の故郷」と呼ぶ場所です。ここで育まれた民営経済支援と改革開放の経験は、その後の中国経済政策の土台になり、いまの民営企業支援や対外開放にもつながっています。
習近平氏が「第二の故郷」と呼ぶ福建省での17年
習近平氏は、中国東部の福建省で通算17年以上勤務し、自ら「第二の故郷」と表現しています。福建での経験について、かつて「ここでの仕事の中で得た考えや模索は、その後の仕事でも深化を続け、その一部は全国規模で実践されている」と振り返りました。
この言葉どおり、福建での現場重視のスタイルや民営経済へのまなざしは、その後の経済運営や改革開放の方向性にも影響を与え続けているとみられます。
民営経済を育てた「晋江経験」とは
福建省晋江市は、民営企業が成長を牽引してきた地域として知られます。習近平氏は1985年6月から2002年10月までの間に、この県級市を7回訪れました。当時の晋江は、福建の県級地域の中で先行して発展していましたが、急成長ゆえの課題にも直面していました。
現場主義とイノベーション志向
習近平氏は、民営企業を中心に綿密な現地調査を行い、企業に対して市場志向を強めることや、イノベーションに力を入れることを繰り返し促しました。企業訪問では、次のような点を細かく尋ねたとされています。
- 新しい技術を導入しているか
- 新製品を開発しているか
- 市場環境はどう変化しているか
- どのような課題に直面しているか
こうした対話を通じて、民営企業が自らの強みを見直し、長期的な競争力を高める方向へと舵を切ることを後押ししました。
家族経営から株式制へ:鳳竹の転換
2000年6月、習近平氏は晋江の鳳竹織造漂染有限公司を視察しました。同社が株式上場を準備していると聞いて喜び、晋江の経営者たちに家族経営から株式制への移行を促しました。
鳳竹は同年12月に株式会社化を完了し、2004年4月には上海証券取引所に上場。当時、晋江を拠点とする企業としては唯一の本土メインボード上場企業となりました。所有と経営を分離し、資本市場を活用するモデルは、その後の民営企業の発展に向けた一つの方向性を示したと言えます。
いまも続く晋江の民営パワー
現在、晋江市には32万を超える市場主体が育ち、52社の上場企業が本拠を置き、その時価総額はおよそ4000億元(約556億ドル)に迫っています。民営企業は、市のGDP、税収、雇用のいずれにおいても9割以上を占める存在となっています。
習近平経済思想研究センター研究一部の顧艮氏は、晋江の発展モデルは「晋江経験」として体系化され、その後全国へと広がったと分析します。過去20年で、このモデルは泉州から福建全体へ、さらに浙江省などでの革新を経て中国各地へと広がり、理論面でも実務面でもその有効性を示しているとされています。
厦門経済特区:改革開放の最前線での挑戦
習近平氏は1985年6月から1988年6月まで、厦門市で中国共産党委員会常務委員、厦門市副市長、常務副市長などの要職を務めました。厦門は中国で最初に設置された四つの経済特区の一つであり、改革開放のフロントランナーでした。
習近平氏は当時を振り返り、経済特区での勤務は、市レベルの指導ポストを初めて務めた経験であり、沿海部のより発達した地域で改革開放に本格的に携わり、都市建設と都市管理を直接担った初めての機会だったとしています。
「小さな政府、大きな社会」という発想
厦門で習近平氏は、行政の役割と社会の活力のバランスに関する新しい理念として「小さな政府、大きな社会」を提起しました。これは、中国で初めて打ち出された考え方だとされています。
行政機構をスリムにし、ルールづくりやサービスに重点を置きつつ、市場と社会の主体性を尊重するという方向性は、その後の行政改革や制度づくりにもつながる発想でした。
対外開放のゲートウェイとしての厦門
厦門を対外開放の「ゲートウェイ」と位置づけた習近平氏は、シンガポールへの調査団派遣を主導し、輸出加工区や自由港をテーマにした中国初の国際セミナーを開催しました。
こうした取り組みを経て、厦門経済特区は、輸出加工区から保税区、保税港区、さらに中国(福建)自由貿易試験区厦門エリアへと段階的に発展し、対外開放の形態と制度を高度化させてきました。
2024年の福建視察:改革開放の「次のステージ」へ
2024年10月、習近平国家主席(中国共産党中央委員会総書記)は福建省を視察し、中国(福建)自由貿易試験区厦門エリアを訪れました。この場で習近平氏は、改革開放について「その深さと広さの両面で、これまでになく高い水準が求められている」と述べました。
さらに、現地当局に対して、環境の変化に適応しながら制度面での開放を着実に進め、高水準の改革開放で新たな成果を上げるよう呼びかけました。福建での初期の経験を踏まえつつ、いまの時代にふさわしい形で開放のレベルを引き上げていく姿勢がうかがえます。
なぜ今、「福建の経験」に注目するのか
習近平氏の福建時代を振り返ることは、現在の中国の民営経済政策や対外開放の方向性を読み解く手がかりにもなります。そこから見えてくるポイントを整理すると、次のようになります。
- 企業現場の声を細かく聞き取り、政策に反映する「現場主義」
- 民営企業を地域経済の主力と位置づけ、制度改革で成長を後押しする姿勢
- 特区や自由貿易試験区を活用し、段階的に開放と制度改革を深めるアプローチ
中国経済の動きを日本語で追いたい読者にとって、「晋江経験」や厦門経済特区での取り組みは、民営セクター支援やハイレベルな開放政策の背景を理解する上で重要な材料となります。福建で培われた経験が、いまも中国全体の経済運営の中で生かされているかどうかは、今後も注目すべきポイントと言えるでしょう。
Reference(s):
Xi's Fujian years and China's support for private sector, opening up
cgtn.com








