中国テック大手がAI人材採用を加速 アリババ・ファーウェイ・クワイショウの戦略
中国のアリババやファーウェイ、ショート動画プラットフォーム「クワイショウ」などテック大手が、2025年に入りAI人材の採用と育成を一段と強化しています。デジタル変革を進める中国で、どのような取り組みが進んでいるのでしょうか。
2025年、中国テック企業がAI人材争奪戦
中国では、経済全体のデジタル化が加速するなか、インターネット企業がAIを軸に事業を高度化しようとしています。2025年初め以降、アリババ、ファーウェイ、クワイショウなどの大手企業は、新卒採用やインターンシップを大幅に拡充し、次世代のデジタル人材を育てる体制づくりを進めています。
とくに、大規模AIモデル(大規模なAI用モデル)や高性能コンピューティング(HPC)、周辺のエコシステム開発といった最先端分野での人材確保がカギとなっています。
アリババ:インターン3,000人超、AI関連が約半数
中国の電子商取引大手アリババは、今年2月に春の採用キャンペーンを開始しました。対象は、中国国内外の教育機関に在籍し、2025年11月から2026年10月の間に卒業を予定している学生です。
同社は、研究開発、アルゴリズム、技術、サイバーセキュリティ、プロダクト企画など幅広い職種で、3,000件を超えるインターンポジションを用意しています。そのうちおよそ半数がAI関連の業務に焦点を当てているとされています。
大量のインターン枠を設けることで、学生に実務を通じてAI関連スキルを身につけてもらいながら、自社に合う人材を見極めるねらいがあるとみることもできます。
ファーウェイ:1万人超採用へ、大規模AIモデルに重点
通信機器大手ファーウェイは今年4月、2025年に1万人を超える卒業生を採用する計画を発表しました。前年から2桁台の伸びとなる、積極的な採用計画です。
採用の重点分野は、大規模AIモデル、高性能コンピューティング、そして自社技術を活用したエコシステムの構築です。AIそのものだけでなく、それを支える計算基盤や開発者コミュニティまでを視野に入れた人材確保といえます。
さらにファーウェイは、テスト、先端研究開発、財務などの分野で5,000人以上のインターンを受け入れ、研修プログラムを通じて育成する方針です。新卒採用とインターン育成を組み合わせることで、AIやデジタル分野の人材基盤を厚くしようとしています。
クワイショウ:ライブ配信が生む4,320万の雇用機会
一方、ショート動画やライブ配信で知られるクワイショウ(国際向けブランド名は「Kwai」)は、「包摂的な雇用創出のエンジン」として存在感を強めています。
中国人民大学が2024年に発表した報告書によると、クワイショウは2024年末までに4,320万件の雇用機会を生み出し、174種類の新たなデジタル職種が誕生しました。ライブ配信やデジタルコンテンツの普及が、新しい仕事の形を次々と生み出していることが分かります。
同報告書はまた、ライブ配信による電子商取引(ライブコマース)の流通総額(GMV)が1億元(約1,390万ドル)増えるごとに、およそ1,200件の新たな雇用が創出されると試算しています。
地方からの就職も後押しするライブ配信求人
クワイショウは、ライブ配信を活用したオンライン合同就職説明会(ライブ配信型ジョブフェア)を導入し、求職者と企業のリアルタイムなマッチングを進めています。
中国東北部の吉林省にあるある県では、現地の労働部門が2,180人のライブ配信ホストを養成しました。彼らはその後、3万5,000人を超える求職者の就職を支援したとされています。スマートフォン一つで参加できるライブ配信が、地方在住者と企業をつなぐ新しい窓口になっている様子がうかがえます。
ライブ配信採用が変える「働き方のマッチング」
こうした新しい採用の形について、中国の新雇用形態研究センター(首都経済貿易大学と中国就業促進会が共同設立)の張成剛センター長は、ライブ配信を基盤とした採用は近年登場した新しい形式だと説明しています。
ライブ配信型の採用は、従来の対面型の採用に比べて、地域や時間の制約を乗り越えられる点が特徴です。求職者にとっては、より多様な選択肢と柔軟な働き方を検討しやすくなり、企業にとっては、製造業など人手不足が課題となる分野でマッチング効率を高め、全体の採用コストを抑える効果も期待されています。
今後3年で1,000万人にデジタルスキルを
クワイショウは、今後3年間で1,000万人にデジタルスキルを提供する計画も打ち出しています。重点を置くのは、ライブ配信ホスト、AIアプリケーションエンジニア、デジタルマーケターといった新興の職種です。
同社は、こうした分野で活躍するために必要なスキルの習得を支援し、より多くの人がデジタル経済に参加できるようにすることを目指しています。AIやデジタルツールを「一部の専門家のもの」にとどめず、幅広い働き手に開いていく発想といえます。
日本への示唆:AI人材育成と「新しい雇用のインフラ」
中国のテック大手が進めるAI人材戦略やライブ配信を活用した雇用創出の取り組みは、日本を含む他の国・地域にとっても無関係ではありません。そこには、いくつかの示唆が読み取れます。
- AI人材の確保は、単に採用人数を増やすだけでなく、インターンや研修を組み込んだ「育てながら採る」戦略が重要になりつつあること。
- ショート動画やライブ配信など、もともとはエンタメ向けだったデジタルプラットフォームが、雇用や職業訓練のインフラとしても機能し始めていること。
- 地域間格差の大きい国・地域では、オンラインを通じた求人マッチングが、地方の若者や転職希望者にとって重要な選択肢になり得ること。
AIとデジタルスキルをめぐる競争は、今や国境を越えたテーマです。中国テック企業の動きは、今後、日本社会がどのように人材育成と雇用のあり方をアップデートしていくのかを考えるきっかけにもなりそうです。
Reference(s):
Chinese tech firms innovate to boost AI talent training and hiring
cgtn.com








