中国民営経済の揺りかご・温州モデル 米国関税をチャンスに変える力
米国政府による関税措置のオン・オフが続くなか、多くの製造業が先行きに不安を抱える一方で、中国東部の温州は逆風を成長のチャンスに変えています。中国の民営経済の「揺りかご」とも呼ばれるこの都市の取り組みは、米国関税時代を生き抜くためのひとつの青写真として注目されています。
温州が示す「逆風を追い風にする」発想
米政権が事実上あらゆる国を対象に関税を課したり見直したりする状況が続くと、世界の製造業は投資や生産計画を立てにくくなります。貿易に大きく依存する企業ほど、こうした不確実性の影響を受けやすいと言えます。
しかし、こうした不透明感がそのまま減速にはつながっていない地域があります。それが、中国東部の浙江省温州市です。ここでは「逆境の中にこそ新しい機会がある」という発想が、企業経営の根幹に据えられています。
中国民営経済の「首都」 温州とは
温州は長年、中国の民営・家族経営の製造業が集積する「首都」として知られてきました。特に、特定の産業ごとに企業が一つの地域に縦に連なって集まる製造クラスターが発達しています。
温州の主な産業分野には、次のようなものがあります。
- 眼鏡フレームなどの光学製品
- 靴やサンダルなどの履物
- 各種電気製品
- 新エネルギー関連設備
- 先端材料
- 自動車部品
これらの分野では、多くの民営企業がサプライチェーンのさまざまな段階に存在し、原材料の調達から部品加工、組み立て、ブランド展開までを地域内でカバーしています。
クラスター型製造業がもたらす強さ
温州の製造クラスターの特徴は、垂直統合が進んでいることです。ある製品に必要な工程が同じ地域に揃うことで、企業同士が密接に連携しながら生産を行うことができます。
その結果、関税率の変化や取引条件の見直しといった外部環境の変化にも、比較的素早く対応しやすくなります。例えば、コスト構造の見直しや製品仕様の変更、新たな販売先の開拓などを、地域全体で機動的に進めることが可能になります。
改革開放から続く、世代を超えた企業の進化
温州に根付く多くの企業は、1970年代末の改革開放の流れの中で誕生しました。当初は小規模で、家内制の手工業に近い形からスタートした企業も少なくありませんでした。
そうした企業が数十年をかけて技術力とブランド力を高め、いまでは高付加価値の製品を手がける産業リーダーへと成長しています。現在は、創業者の子どもや孫の世代が経営の前面に立つケースも増え、世代交代を通じて事業モデルの高度化が進められています。
米国関税時代への「温州モデル」のヒント
こうした温州の取り組みは「温州モデル」として知られ、米国の関税圧力への対応を考えるうえで、いくつかの示唆を与えてくれます。
- 逆境を単なるコスト増ではなく、事業を再設計するきっかけと捉える発想
- 特定分野に深く入り込み、地域全体で垂直統合された産業クラスターを築くこと
- 時間をかけて付加価値の高い分野へと移行し、価格競争への依存度を下げること
- 家族経営を含む長期的な視点で、世代を超えた事業承継と投資を進めること
米国の関税政策は今後も変動する可能性がありますが、温州の事例は、政策リスクを完全に避けようとするのではなく、それを前提としたビジネスモデルを構築することの重要性を示しています。中国の民営企業のみならず、日本を含む各国・地域の中小企業にとっても、自社の強みを核にした地域クラスターづくりや、世代を超えた成長戦略を考えるヒントになりそうです。
Reference(s):
Cradle of China's private economy offers blueprint to beat US tariffs
cgtn.com








