世界銀行が世界成長率を下方修正 貿易摩擦と政策不透明感が重し
世界銀行が世界成長率を下方修正 貿易摩擦と不透明感が重し
世界銀行は、半年に一度公表する「世界経済見通し(Global Economic Prospects)」の最新報告書で、世界の成長率見通しを幅広く下方修正しました。貿易摩擦の激化や政策の不透明感が続くなか、生活水準や貧困削減への影響が懸念されています。
世界成長率は2.3%に 約7割の国・地域で下方修正
報告書によると、世界銀行は2025年の世界全体の実質成長率見通しを、今年1月時点の2.7%から2.3%へ引き下げました。2026年についても、2.7%から2.4%へと下方修正しています。
この下方修正は特定の地域に限られたものではなく、あらゆる地域や所得水準の国を含む、全体の約7割の経済で成長率見通しが引き下げられたとされています。
- 世界全体:2025年は2.3%成長(1月時点の予測は2.7%)
- 2026年見通し:2.4%(同2.7%から下方修正)
- 多くの国・地域で一斉に成長率見通しを引き下げ
先進国の減速:米国・ユーロ圏・日本の数字
先進国全体の成長率は1.2%と予測され、従来の1.7%から引き下げられました。一方、新興国・途上国を合わせた成長率見通しも、0.3ポイント低い3.8%となっています。
主な国・地域の見通しは次の通りです。
- 米国:2025年の成長率は1.4%。前回予測から0.9ポイント下方修正され、2024年の2.8%の半分にとどまる見通し
- ユーロ圏:成長率は0.7%と予測され、前回から0.3ポイント下方修正
- 日本:成長率は0.7%と見込まれ、前回から0.5ポイント引き下げ
- 新興国・途上国:成長率は3.8%(0.3ポイントの下方修正)
- 中国本土:2025年、2026年の成長率見通しは据え置き
報告書は、半年ほど前にはインフレを抑えつつ景気後退を避ける「ソフトランディング」が視野に入っていたものの、世界経済は再び「乱気流」に入りつつあると指摘します。
新興国・途上国への打撃 「成長なき地帯」懸念
世界銀行グループのチーフエコノミスト兼開発経済担当シニアバイスプレジデントであるIndermit Gill氏は、アジアを除く多くの開発途上地域について「開発なき地帯になりつつある」と強い懸念を示しました。
報告書は、開発途上国や新興国の経済・投資の伸びが鈍る一方で、記録的な債務水準が積み上がっていると指摘します。その結果、次のようなリスクが高まっていると分析しています。
- 先進国との1人当たり所得格差を縮めるペースが十分でない
- 極度の貧困を減らす取り組みが停滞するおそれ
- 債務負担の増大が金融システムの安定を揺るがす可能性
貿易制限と政策の不確実性が最大のリスク
今回の世界成長率の下方修正の背景には、各国の貿易制限措置や、それに伴う政策運営の不透明感があるとされます。報告書は、貿易制限が強まり、政策の不確実性が長引けば、成長率は現在の予測をさらに下回り、金融面でのストレスが高まる可能性があると指摘しています。
一方で、2026〜2027年にかけては世界経済が緩やかに持ち直すシナリオも示されています。ただし、その場合でも世界の生産水準は、1月時点の予測をなお大きく下回る見通しです。
報告書は「迅速な軌道修正が行われなければ、生活水準への悪影響は深刻になり得る」と警鐘を鳴らしました。
私たちが押さえておきたい視点
今回の世界銀行の見通しは、日本やアジアだけでなく、世界全体の経済の地合いが変わりつつあることを示しています。個人や企業の立場からは、次のようなポイントを意識しておくとよいでしょう。
- 世界の成長ペースが鈍ると、輸出や海外需要に依存する産業の先行きが不安定になりやすい
- 途上国の成長鈍化や債務問題は、サプライチェーンや投資先のリスク要因となり得る
- 貿易政策や規制の変化は、金融市場や為替の変動を通じて日常生活にも影響しうる
世界銀行のメッセージは、世界経済の見通しそのもの以上に、今のままでは生活水準や開発の前進が止まってしまうという警告として読むこともできます。世界各国の政策対応と、企業・家計の慎重なリスク管理が一段と問われる局面に入っていると言えそうです。
Reference(s):
World Bank trims global growth outlook on trade barriers, uncertainty
cgtn.com








