中国の信用成長が加速 5月統計が示す財政刺激の効果
2025年5月の中国の信用成長が加速しました。人民銀行(中央銀行)のデータによると、政府債の発行をはじめとする積極的な財政政策が資金需要を押し上げ、マネーサプライや社会融資総量の伸びが鮮明になっています。本稿では、最新の統計が示す中国経済・金融の動きをコンパクトに整理します。
5月までの新規人民元建て融資は10.68兆元
中国本土では、2025年1〜5月に新たに貸し出された人民元建て融資が累計10.68兆元(約1.5兆ドル)に達しました。これは人民銀行が公表した最新データにもとづくものです。
同期間のうち、家計向けローンは5724億元増加した一方で、企業向けローンは9.8兆元増加しており、信用拡大の主役が企業セクターであることがうかがえます。企業による設備投資や運転資金需要を、金融システムが下支えしている構図です。
M2とM1が映す「お金の量」と「動き」
マネーサプライ(通貨供給量)の代表的な指標であるM2は、現金に加え、銀行などに預けられている預金を含む「広義のマネー」を指します。5月末時点の中国のM2残高は325.78兆元で、前年同月比7.9%増となりました。
これに対し、現金や当座預金など、より決済性の高いお金を示すM1は108.91兆元で、前年同月比2.3%の増加にとどまっています。M2の伸びがM1を上回っていることから、企業や家計の資金が、すぐに使うお金というよりは、預金や比較的長めの資金として積み上がっている側面も見て取れます。
社会融資総量と政府債発行の加速
中国の金融情勢を測るもう一つの重要な指標が「社会融資総量」です。これは銀行融資だけでなく、社債や株式、信託商品などを通じて実体経済に流れ込む資金を幅広くカバーする指標です。
5月末時点で、社会融資総量の残高は426.16兆元となり、前年同月比8.7%増となりました。アナリストらによると、5月の社会融資の伸びをけん引したのは政府債の発行です。
Merchants Union Consumer Financeのチーフリサーチャーである董希淼(ドン・シーミャオ)氏は、「今年は政府債の発行が前倒しされており、第1四半期だけで正味の資金調達額は3.8兆元を超えた」と指摘します。さらに「地方政府の特別債の発行ペースも加速しており、月間発行額は年内で最高水準に達している」と述べています。
政府債や地方政府の特別債は、インフラ整備や公共サービスなどへの投資資金として活用されます。こうした債券発行の加速が、社会全体の資金需要を押し上げ、社会融資総量の伸びにつながっている構図です。
「積極財政」が市場心理を支える
董氏は、5月にかけて実施された金融・財政面での刺激策について、「積極的な財政政策が実体経済に浸透しつつあり、市場の信認を高めている」と評価します。政府債の前倒し発行や各種の支援策が、企業の資金調達環境を改善し、信用拡大を後押ししているとの見方です。
信用成長の加速は、景気の下支えという点ではプラス材料ですが、同時に、資金がどの分野に向かい、どの程度まで拡大を容認するのかという政策判断も重要になります。今後も中国本土では、成長の確保とリスク管理のバランスを取りながら、財政・金融政策の運営が続くとみられます。
日本の読者が押さえておきたい3つのポイント
- 2025年1〜5月の新規人民元建て融資は10.68兆元となり、企業向けローンが大半を占めた。
- M2は前年同月比7.9%増、社会融資総量は8.7%増と、マネーサプライと資金供給の伸びが続いている。
- 政府債・地方政府特別債の前倒し発行など、積極的な財政政策が信用成長と市場心理の改善を後押ししている。
中国のマクロ経済運営は、世界経済や日本企業のビジネスにも少なからぬ影響を与えます。信用成長やマネーサプライといった指標の動きを追うことで、中国本土の政策スタンスや景気の方向感を、より立体的に捉えることができそうです。
Reference(s):
cgtn.com








