米中関税緩和でビジネス加速 残る不透明感を読み解く video poster
中国と米国の貿易をめぐる「雪解けムード」が、企業のビジネスを一気に動かしました。一方で、90日間に区切られた関税緩和の先行きには、大きな不透明感も残っています。
2025年12月時点で、この90日間の関税調整期間はすでに終了していますが、今年5〜6月には何が起きていたのでしょうか。ジュネーブとロンドンでの協議を軸に、米中貿易の最新動向を振り返ります。
90日間の「関税調整期間」とは
中国と米国は、2025年5月10〜11日にスイス・ジュネーブで行った貿易協議の後、互いに課してきた3桁台の高関税の一部を引き下げるため、90日間の関税調整期間を設けました。
当時、発表からおよそ1か月が経過し、90日間のうち残り60日をどう活用するかが焦点になっていました。関税をどこまで引き下げるのか、そして90日後に再び引き上げられるのかどうかは、はっきりしていませんでした。
ロンドン会合が示した「協力」への転換
ジュネーブ会合から約1か月後の6月9〜10日には、ロンドンで中国と米国の経済・貿易協議メカニズムの初会合が開かれました。このロンドン会合は、対立から協力へと舵を切る象徴的な場になったと評価されています。
専門家「対立より協力が利益に」
米国のクリストファー・ニューポート大学で政治学を教えるスン・タイイ准教授は、中国のメディアの取材に対し、ロンドン会合によって「協力と互恵的な結果を追求する方が、長期的な対立よりも両国の利益になる」という認識を両国が共有したと指摘しました。
ロンドンでの協議は、関税をめぐる具体的な交渉だけでなく、「米中はどこまで協調できるのか」というメッセージを世界に示す場にもなりました。関税調整期間の発動と合わせて、緊張緩和への期待が一気に高まった局面だったと言えます。
関税緩和で動き出したビジネス現場
90日間の関税調整期間が始まると同時に、中国と米国の小売業者や輸出企業は、この「時間限定のチャンス」を逃すまいと動き始めました。高関税で止まっていた商談や物流が、一気に再開し始めたのです。
義烏のクリスマス商品に米国から注文殺到
中国東部・浙江省義烏市でクリスマス関連商品を扱う姜江平さんは、中国のテレビ局のインタビューに対し、「米国の取引先が我先にと注文を入れてきている」と語りました。
これまで高関税で割高になっていた中国製の装飾品や季節商品が、関税調整によって仕入れやすくなったことが背景にあります。特にクリスマス商戦は時期が限られるため、バイヤーにとっては90日間の猶予がそのまま売り上げのチャンスにつながります。
福建の家具輸出、滞留していた20コンテナが動く
中国南東部・福建省で家具を輸出する林婉怡さんも、関税調整の効果を直接感じた一人です。林さんによると、これまで関税の影響で足止めされていた20本のコンテナが、関税調整期間の開始後は「スムーズに輸出できるようになった」といいます。
高関税によってコストが跳ね上がると、輸入側は契約を見直したり、引き取りを先送りしたりしがちです。関税緩和によって価格の見通しが立ったことで、止まっていた物流が一気に動き出した形です。
それでも消えない「90日後」への不安
こうした前向きな動きがある一方で、関税調整期間があくまで「期間限定」であることは、企業にとって大きな不安要因でもありました。
当時の時点でも、90日が終わった後に何が起きるのかは不透明なままだったと伝えられています。再び高関税に戻るのか、それとも協議が進んで新たな枠組みができるのか。企業は先を読み切れない中で、短期的な商機と長期的なリスクの両方を見ながら判断を迫られていました。
- 関税は一部引き下げられたが、期限付きの措置だった
- ロンドン会合で「協力を重視する」というメッセージが発信された
- 義烏や福建などの現場では、滞っていたビジネスが一気に動き出した
- しかし、90日後の関税水準や交渉の行方は見通せないままだった
日本の読者にとっての意味
中国と米国の関税政策は、日本やアジアの企業にも少なからず影響を与えます。サプライチェーンや仕入れ価格、消費者向け商品の販売戦略など、多くの部分が米中貿易の動きに連動しているからです。
今回のような「期間限定」の関税緩和は、
- 短期的には在庫調整や駆け込み需要を生む
- 中長期的には「再び関税が上がるかもしれない」という不確実性を高める
という二つの側面を持ちます。
「雪解け」をどう見極めるか
今年5〜6月に見られた米中貿易の雪解けムードは、企業にとって歓迎すべき動きである一方で、「本当に関係改善が続くのか」を慎重に見極める必要があることも浮き彫りにしました。
関税という数字の変化だけでなく、ジュネーブやロンドンでの協議が示した「協力を重視する姿勢」が、今後どこまで実際の政策に反映されていくのか。2025年の動きを振り返ることは、これからの米中関係と世界経済を考えるうえでも、重要な手がかりになりそうです。
Reference(s):
China-U.S. trade thaw sparks business rush amid lingering uncertainty
cgtn.com








